麦本三歩の好きなもの 住野よる
大阪で買った初めての本。ほっこりした気持ちになりたくて、この本を選びました。おっちょこちょいな主人公、麦本三歩(むぎもと さんぽ)の日々の物語です。
主人公である三歩の1つ1つの体の動きや、心の動き、頭の中でのつぶやきが、細かく書かれています。どう感じて、どう考えて、どう判断し、言葉を発したのか、体が動いたのか。読んでいると、三歩の体に入ったような錯覚に陥ります。
また、少し前の自分を思い出しました。三歩の日々と昔の自分が重なって。会社員として働き、一人暮らしを謳歌していた頃の自分に戻る体験をしているようでした。
先輩との距離の取り方の難しさや、仕事に行く朝の憂うつさ、金曜日の高揚感。ご飯を作る時のとんでもない手抜きや、いい加減な着替えの仕方。社会人の窮屈さと、一人暮らしの自由さの両方が描かれていました。三歩は自分のようであり、自分のような人は、世の中の人たち、みんなでもあるような気がしてきます。
この本、本屋さんで売上1位だったんです。もちろん、素敵な作品ですが、大きな展開が待っているわけでも、夢中にさせられてしまって、あっという間に読んでしまう!というわけでも、ありませんでした。
本を読み終えてみて。この作品が愛されるのって、「みんなの生活が"こんなもの(いい意味で)”だからだよなあ。」と思いました。みんな同じような生活の中で、幸せをみつけて楽しく生きてるんだろうなあ、と実感できるような小説でした。この感覚って、なんとなく安心しますよね。
人の生活は、のぞき見ることは出来ないだけに、「こんな厳しい現実に向かっているのは自分1人だけで、みんなもっと輝く日々を送っているのでは?」と不安になることがあります。子どもの頃に描いていたよりも地味で、だけど、子どものままでいては、感じられないような、確かで温かな幸福がある、「生活」に向き合って生きているのは、自分1人じゃないんだと思えて、明るい気持ちになります。youtubeのルーティン動画が人気なのも、そういう理由かな、と勝手に思っています。
本を開くと、三歩がこっそり、彼女の日常を自分だけに見せてくれます。読んでいる時間が楽しかったです。文庫本になっています。また、私が読んだものは第一弾ですが、第二弾もつい最近(2021/2/25)発売されたようです。本屋さんで見つけた際にはぜひ、三歩の毎日を手に取ってみてはいかがでしょうか。
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