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分裂と時間

細胞内にあるDNAはヒストンというタンパク質に巻きついており、それが折り重なるようにして核の中に収納されています。そのため、DNAは核内では棒状で存在しており、染色体と呼ばれています。細胞は分裂するときに、染色体を新たにできる細胞へ正確に分配する必要があります。まずは、その分配のお話を。

分裂は4段階

染色体を丁寧に分けるために、分裂は4段階に分かれています。

前期染色体が形成され、核膜が消失する。
中期:染色体が赤道面に並ぶ
後期:紡錘体から伸びた紡錘糸により、染色体が細胞の両端に引っ張られていく
終期核膜が形成され、細胞が2つに分かれる。

この細胞分裂については、これ以上話すことはありません。このようにDNAや細胞が二等分されていくと言ったかんじです。また、ここまでは中学の資料集にもあります。高校では中学と異なり、最初に動物細胞と植物細胞について学習します。当然、細胞分裂においてもこの2種類の細胞の違いを知っておく必要があります。

細胞分裂の様子はだいたいこんな感じでしょうか?

2種類の分裂

動物細胞と植物細胞で分裂の仕方の違いについてですが、その前に細胞分裂に2種類あることを説明しておきます。先述した前期〜終期の細胞分裂は、DNAが二等分されて核が2つになることから”核分裂”とよばれています。そして、DNAがきちんと二等分さえて2つの核ができたら、次は細胞が2つに分かれます。これはミトコンドリアや小胞体やサイトゾルなどの細胞質が二等分される分裂であることから”細胞質分裂”とよばれています。

動物と植物の違い

動物細胞と植物細胞で分裂(細胞質分裂)のしかたが異なります。原因は細胞小器官が動物細胞と植物細胞で異なるためなので、違いがわからない場合は過去の解説を見てください。

まず、動物と植物の細胞でもっとも大きな違いは細胞壁の有無ではないでしょうか?(葉緑体もです。)細胞壁はセルロースという糖の1種でできており、植物繊維の主成分になっています。とてもかたいため、私たちを含めほとんどの動物がセルロースを分解できません。ちなみに、動物細胞は一番外側の膜が柔らかい細胞膜でできています。そのため、核の分裂が終わったあとの細胞質分裂において、一番外側の膜のかたさが異なることで、細胞の分かれ方に違いがでてきます。動物細胞はやわらかい細胞膜でできているため、2つの核の中間点あたりがだんだんと縮まってくびれて分かれます。一方、植物細胞は2つの核の中間点あたりに細胞板とよばれる細胞壁の仕切りができます。これが、1つ目の分裂の違いです。
もう1つは、動物細胞にのみある(一部植物の細胞にもあります)中心体です。中心体は細胞分裂の中期あたりに動物細胞の両端(極といいます。北極や南極と同じ考え方です。)に移動して星状体となり、後期ででてくる紡錘糸をのばす起点になります。

動物細胞は”くびれ”、植物細胞は”細胞板”ができます。

分裂の時間

細胞分裂について高校で新たに学ぶことの2つ目に、各時期の時間があります。植物や動物は複数の細胞で体を作っている多細胞生物と呼ばれる生物です。多細胞生物をつくる細胞は、すべて同時に分裂するわけではありません。分裂期の細胞もあれば、DNAを複製しているS期の細胞もあります。例え話をすると、無作為に細胞を100個取り出すと、そのうち5個が分裂中の細胞ということがおこります。これはどのような意味かというと、細胞周期という時間の中で分裂期のしめる時間が5%くらいということです。つまり、「特定の時期の細胞の数の割合」=「細胞周期におけるその時期の割合」です。先ほどの例をそのまま使用すると、その細胞の細胞周期が20時間だったとすると、分裂期の細胞の割合が5%だったので、分裂期の時間は6分となります。

分裂中の細胞の観察は、ネギの根の先端を使うことが多いです。植物の根っこは盛んに分裂して、根をどんどん伸ばしていきます。そのため、分裂中の細胞を多く観察することができます。分裂中の細胞は核膜がなくなっているため、分裂中の細胞が何個あるかは簡単にわかります。しかし、G1期、S期, G2期は核膜があるせいで、その細胞がDNAを複製しているかや、分裂準備をしているかはわかりません。そんな時に利用するのが、同位体です。1000個くらいの細胞を、重水素(水素の同位体)でできたヌクレオチドを含んだシャーレに一時的(10分くらい)に入れます。この時、S期の細胞だけDNAを複製するために細胞外にある物質を核膜の内側に取り込んでいるので、特殊な機械に載せるとS期の細胞だけが光ります
ちなみに、細胞周期の中で最も長いのはどの時期かというと、G1期です。また、一番短い時期は分裂期です。細胞によって差はありますが、分裂期はどの細胞も短いです。しかし、核膜がなくなって観察しやすいことから、高校の実験で分裂中の細胞を観察する実験はよく行われるのですが、時間が短いので、数も少ないです。うまくいかないときは、クラスで2,3人が3つほど分裂中の細胞を見つけたら良い方ということがあります。確率でいえば、2,3%くらいでしょうか?これだったら、分裂中の細胞を見つけるよりも、ゲームのガチャを回した方が生産性があるかもしれません。

最近Youtubeで調査の様子を配信し始めました。興味がありましたら、チャンネル登録していただけると嬉しいです。まだ、2つしかありませんが、これから増やしていきます。


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