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アミノ酸数珠繋ぎ

遺伝子の発現によってタンパク質ができるという話を前回しましたが、そもそもタンパク質とは何か説明していませんでした。酵素が触媒として働くことができるのも、タンパク質が立体構造をとっているからです。ここでは、タンパク質について説明します。

アミノ酸のつながり

タンパク質はアミノ酸がつながってできたものです。そのアミノ酸の構造は、炭素を中心にアミノ基、カルボキシル基、水素、側鎖が結合したものになっています。突然、アミノ基やカルボキシル基と言われても戸惑うと思いますが、ここでは図を見て、「こんなのがあるんだ」と思ってくれたら十分です。簡単にいうと、分子に特定の働きを持たせる原子の集まりです。例えば、カルボキシル基は炭素1つ、酸素2つ、水素1つからできています。これが結合すると酸性の性質を持ち、酢酸がその代表です。また、アミノ基には窒素が含まれています。これは、体を作る物質の中では特殊です。生物の体を作る有機物は、水素と酸素と炭素からできており、窒素を含むのはタンパク質くらいです。そのため、私たちは窒素を得るためにはタンパク質を摂取するしか方法がありません。炭水化物しか摂取できない過ぎた菜食主義が命に関わるのはこのためです。
そして、側鎖には様々な種類の原子の組み合わせが、アミノ酸の種類・特徴になっています。私たちヒトが生きていく上で必要な必須アミノ酸というのは20種類あります。このアミノ酸が塩基3つの組み合わせで指定されるのですが、これについてはまた後で。

アミノ酸の分子構造を簡単に示してみました。

x次構造

アミノ酸が数珠つなぎになってタンパク質ができているわけですが、単純に1列に並んでいるわけではありません。アミノ酸間で特徴的かつ規則的な並び方をすることで特有の働きをもつ構造ができています。この規則的な並び方には4段階あり、大学入試共通テストでも出題されていました。

一次構造
先述しましたが、アミノ酸は共通してカルボキシル基とアミノ基があります。アミノ酸どうしが近づくと、アミノ基の水素とカルボキシル基のOHが外れて、代わりに外れたところどうしが結合します。これによって、アミノ酸が1列につながります。この1列につながった状態のことを一次構造といいます。また、このアミノ基とカルボキシル基のつながりのことをペプチド結合といいます。

ペプチド結合についてです。殴り書きに近いですが。

二次構造
アミノ酸がつながって線になったタンパク質が、らせん状になったりジグザグの平面構図をとったりします。これはつながったアミノ酸どうしが水素結合で近づくことで起こることです。αヘリックスβシート構造と呼ばれています。

まっすぐのアミノ酸のつながりが、こんな感じで変化します。

三次構造
一次構造もしくは二次構造をとったタンパク質が折れ曲がって立体構造をとったものを言います。折れ曲がるしくみは、システインというアミノ酸によるものです。システインの側鎖には硫黄が含まれており、この硫黄どうしがジスルフィド結合というかなり強い化学的なつながりをつくります。酵素の働きの源でもある立体構造はこのようにしてできあがります。

こんな感じで折れ曲がって立体構造を作ります。

四次構造
簡単にいうと、三次構造をとったタンパク質が集まってできた複合体です。三次構造をとった時点で立体構造をもつタンパク質になっているのですが、この三次構造をもったタンパク質をサブユニットと呼んでいます。

暗号解読表

4種類の塩基の並びがアミノ酸の数珠つなぎにかわる理由は、mRNAの3つの塩基のならびによって特定のtRNAが指定され、そのtRNAにアミノ酸が結合しているからです。すなわち、mRNAの3つの塩基のならびが意味をもつ(アミノ酸を指定する)わけですが、このmRNAの塩基の組み合わせをコドンとよんでいます。(tRNAには、mRNAとは相補的な3つの塩基がならんでいるため、アンチコドンとよんでいます。)ちなみに、どのような組み合わせでアミノ酸が指定されるのかは、コドン表とよばれる一覧表と言います。

高校生にとってみれば、「覚える必要があるのか?」というのが、とても大事なことです。さすがに”全て”覚える必要はありませんが、何か知っておくべきコドンあります。それが終始コドンと開始コドンです。4種類の塩基が3つ並ぶ場合の、組み合わせは64通りあります。それに対して、指定されるアミノ酸は20種類です。あと、もう一つ「何もない」があります。これは、アミノ酸をこれ以上つなげないで、翻訳を終了してほしいという意味を持つコドンで、「終止コドン」と呼ばれます。(UGA, UAA, UAGの3種類があります。)また、ここから翻訳を開始するというコドンが、開始コドン(AUG:メチオニン指定)です。

突然変異は起こらない?

コドンの組み合わせに関しては、有名な問題(論述)がいくつかあります。それは、なぜコドンは3つ1組なのかというものです。これは簡単な話で、もしコドンが塩基1つ1組であれば指定できるアミノ酸は4種類、塩基2つ1組であれば16種類で、20種類あるアミノ酸を全て指定できません。それに対して、塩基3つ1組であれば、64通りと20種類のアミノ酸を全て指定できることになるというものです。
もう1つは、コドンに重複があるということでしょうか。CUA, CUU, CUC, CUGは全てロイシンを指定します。64通りの組み合わせを使って、終止コドンも入れて21種のアミノ酸を指定するわけですから、重複が出て当然です。一方、塩基が変わることで、指定されるアミノ変わることもあります。CUUはロイシンですが、GUUになるとバリン, CCUではプロリンとなります。しかし、先述したように3番目の塩基に変わってもロイシンが指定されます。1番目と2番目の塩基が変わると指定されるアミノ酸は変わるのですが、3番目の塩基が変わっても指定されるアミノ酸は変わりません
これは、どのような影響があるのかというと、生物の進化や遺伝病の原因となる突然変異は、めったに起きないということです。遺伝とはDNAの塩基配列がコピーされて次世代に受け継がれることです、ヒトの場合はそれが30億塩基もあるのですから、多少のコピーミスがおきます。しかし、そのミスがコドンの1か2番目の塩基でないと指定されるアミノ酸は変わりません。しかも、アミノ酸が変わっても二次構造や三次構造の原因となる化学結合のもととなるアミノ酸がいれかわらないと、タンパク質の性質はかわりません。すなわち、塩基配列の変化による生物の性質の変化は滅多にありません。

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