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句集・歌集

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手元にある句集と歌集の感想文
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#句集

岡田一実『醒睡』

岡田一実『醒睡』

 この句集は関現俳青年部の読書会で、彌榮浩樹さんが「コンセプトアルバム」とおっしゃっていて、なるほど、と思いました。句集という一冊の本から、いろんな楽しみ方ができるんだな、と発見があったのを覚えています。
 今回は読書会での話は一旦置いておいて、わたしなりの楽しみ方でこの句集を読んでいきたいと思います。

景の好きな句 景と言っても実景とは限りません。文字列から浮かび上がってくる光景はわたしの想像

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宇多喜代子『雨の日』

宇多喜代子『雨の日』

 図書館の新刊コーナーで見つけて借りました。2024年7月12日に発売されているので、間違いなく新刊です。句集は買えばキリがないので、こうして借りて読めるのはありがたいです。
 前回の『森へ』から五年経っているそうです。あとがきには「不覚にもその間に体調を崩してしまい」とありました。体調を崩されている中でも、俳句を作り続けるってすごいですよね。わたしにはなかなかできないことです(すぐになにもかも放

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佐々木紺『平面と立体』

佐々木紺『平面と立体』

 紺さんの第一句集『平面と立体』は、第13回北斗賞受賞作された際に刊行されました。一ファンとして待ちに待った第一句集と言っても過言ではありません。大好きな漫画の新刊を待っていた頃のような気持ちで、発売日の発表を待っていたのを覚えています。
 紺さんの句には、どこかひんやりとした温度感があります。たとえば、水に触れたとき、教室の机に頬を寄せたとき、ドアノブに触れたときなどの感触を思い出すのです。自分

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有瀬こうこ『磁石』

有瀬こうこ『磁石』

 このミニ句集は、第13回百年俳句賞最優秀賞を受賞した作品をまとめたものです。こうこさんから直接購入しました。こういうことができるのも、近場に住んでいる句友ならでは、という気がします。ありがとうございます。
 さて、この句集の評は、俳句誌『豆の木』No.28 にて田中目八さんのとてもすてきな評を読むことができますので、機会がありましたらぜひご覧いただければと思います(唐突に他人様の評を勧めるスタイ

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楠本奇蹄『おしやべり』

楠本奇蹄『おしやべり』

 奇蹄さんの『おしやべり』は、第11回百年俳句賞最優秀賞を受賞した作品をまとめたミニ句集です。オンラインショップ(正規ルート!)では完売しているようです。間に合ってよかった~~~!

 奇蹄さんの句については、随分前から一貫して同じことを言ってるわたし。それは「わかる/わからない」によって左右されないということ。それから、意味が正確に把握できないときに感じる「わからない」にも不思議な心地よさがある

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西川火尖『凧、ハウリング、百葉箱、』

西川火尖『凧、ハウリング、百葉箱、』

 三人展「凧、ハウリング、百葉箱、」の開催時期に運悪く風邪をひいて(しかも拗らせて救急搬送されて)しまいまして。行けずじまいでとても残念に思っていたところ、火尖さんのご厚意で句集『凧、ハウリング、百葉箱、』と『綿菓子日記』を入手いたしました。感謝の意と共に感想を綴っておきたいと思います。火尖さん、ありがとうございます。

表題句について 表題句というのは、表紙を捲って最初にある三句のことです。わた

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塩見恵介「隣の駅が見える駅」

塩見恵介「隣の駅が見える駅」

 塩見先生の句の感想は、以前べつのブログに書いたことがあるので、先にそっちを載せておきます。出会いやらなにやらもこちらに。
 現俳協でも関西現代俳句協会の理事になられたのが記憶に新しいですね。今後ともお世話になります(ぺこり)

 表紙の黄色が眩しく、文字の青がくっきりと浮かび上がるデザイン。ポップな印象を受けつつ、明朝体がきちんとしているのが好きですね。
 章立ては「四月のはじめ~八月のおわり」

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「サーチライト」西川火尖

「サーチライト」西川火尖

 鉄は熱いうちに打て。というわけで、いつも通りの感じで綴っていきたいと思います。
 火尖さんとはTwitterでのやりとりだけですが、とてもやさしい方だなぁと感じています。SNSはあくまでも「一片」でしかありませんが、それはそもそもお互い様。どんな人かはお互い探り探りで、それはそうとして伝わるお人柄というものがあります。総合誌やどこそこでお名前を拝見する方々と、やりとりさせていただくことことにまだ

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「サーチライト」西川火尖(虚妄Ver.)

「サーチライト」西川火尖(虚妄Ver.)

はじめにお読みください 妄想は火のないところに煙を立たせるものだと思われていると思いますし、実際、なにもないところから火柱を生み出す力があります。今回、火尖さんの句集を読むにあたって、火尖さん自身がBL俳句誌「庫内灯」に参加されていたこともあり思い切って「BL読み」をさせていただこうと思いました。もちろん、なんの邪心もない真心オンリーの感想もありますので、それはまた改めて書きます(いずれにせよキモ

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「海鳴り」藤田亜未

「海鳴り」藤田亜未

 亜未さんとは「伊丹俳句ラボ」で出会い、以来「亜未先生」と呼んで俳句を(広い意味で)教わっていた。伊丹俳句ラボで出会った講師の先生は今でも「先生」と呼びたくなるけれど、なんとなく「さん」に移行しつつある。多分、自分の中で「教わる期間」ではなくなったってことなんだと思う。ずっと「学ぶ期間」ではあるけど。まあこの話は置いておこう。
 そういうわけだから(まったく説明になってない)、この句集は伊丹俳句ラ

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「パーティは明日にして」木田智美

「パーティは明日にして」木田智美

 俳句を知って、句会に参加して、おそらくはじめに受けた衝撃が木田さんの句だったと思います。自分が憧れて、憧れて、それでも手に入れられないものが目の前に現れた、そんな感覚でした。
 句会で何度かお会いしたりお話しすることがあって、なにかのときに「同い年くらいかと思ってました」と言われて、なんかめっちゃうれしかったなぁって今思い出しました。いやあ、相変わらずどうでもいい話が長いっすね。さっさと行きまし

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「汗の果実」松本てふこ

「汗の果実」松本てふこ

 この場を借りて、というかこの場でしか言えないのでこの際言うけれども、随分前にBL俳句誌「庫内灯」を購入したとき、若気の至り(?)でてふこさんのTwitterをフォローしたところ、てふこさんにフォローバックされるという事件が起きました。それから(おそらく)数回、片手に収まる程度のやりとりをしたことはあったものの、陰から見ているだけの日々。いや、フォロワーってそういうもんやしうんうん、という自問自答

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「まがり書房の句集」小笠原克巳

「まがり書房の句集」小笠原克巳

 職場の近くに「犬と街灯」という本屋がある。Twitterで偶然見かけたその店に、勇気を出して足を踏み入れ、最初に買った本がこの句集だった。B6サイズ、56ページ、中綴じ。表紙には「開業時から書き続けた俳句の日録」とある。
 1ページあたり3句~5句。読みやすいフォントサイズ。うん、いい感じ。中綴じの本って、どこか手作りな感じがして好き。開きやすいから、のどの近くの文字も読みやすい。小笠原さんは、

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