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『樹』


大きく広げた枝は、小鳥や小動物を休ませ、実が実れば養い、様々な生命を癒します。茂った葉は空気をきれいにします。やがて地に落ちた葉は、大地を肥やし、自らの糧としたり、新たな生命の誕生に貢献したりします。

一本の樹の成長と一人の人間の成長は似ています。人間は周囲の情報を吸収し、経験を栄養としながら成長していきます。成長するほどに情報収集能力も高まり、経験の幅も広がります。自分が成長する過程で身に付けてきた様々な経験を、他人の人生に役立てることも出来ます。そして個人の人生における経験は、集積され、人類の経験となり、次の世代を担っていくものになるのです。

 我々は自分の人生のことだけではなく、次の世代、先の世代のことも考えることが必要です。自分の成長は間違いなく自分の周辺とその周辺に影響を与えます。自分の生き様は周囲の人々に必ず何かの形で残ります。『今』に集中して生きることはもちろん大切なことですが、目の前のことに必死になり過ぎると大きな時間の流れが見えなくなってしまいます。未来を作っているのは今の自分だという自覚が、未来の自分と世界を作るのです。

『あなたがこの世を去った後に、子供や家族、大切な人たちに、どんな人だったと記憶されたいですか?』

それは、あなたがその人達に託したメッセージでもあるのです。

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