丹後ちりめんとは? ② 日本で一番年間湿度が高い?京都府北部、丹後地方。 絹織物と普段の生活。
ずっと丹後に住んでいるとあまりにも普通すぎて気がつかないことも、
東京と丹後を行き来していると気がついたりします。
例えば冬の丹後、
夜、布団が冷たすぎて中に入るのがつらい。
寝る前にパジャマが冷たくて着れない。
洗濯物が何日も乾かない。
野菜はラップしないで置いておいても、新鮮なまま。
おせんべいを置いておいたらあっという間にしけってしまう。
化粧水をつけなくても肌がいつもしっとりしている。
湿気があるんです、とっても。
寒いというより、どちらかというと冷たいという感覚。
丹後は舞鶴市と豊岡市のちょうど中間、日本海に面したエリアです。
京丹後市と与謝野町あたりは特に湿度が高いらしく、
ここがちょうど丹後ちりめんの作り場になります。
ある時、この湿気の正体を調べようと気象庁の数値化したデータを見て
日本一湿度が高い地域だってことを発見しました!
過去5年間の年間平均湿度です。
京都府舞鶴市、こんな感じ、でも私の体感ですが、舞鶴は雪も少なく、丹後ほど湿度は高く感じません
兵庫県豊岡市、有名な城崎温泉の場所です。このあたりは北近畿と言って、実は丹後とは同じエリア、生活圏が同じ。雪もたくさん積もります。
福井市、北陸地方だと湿度は少し下がるようです。
京都市 ここはもう太平洋側の気候。
そして、沖縄県西表島を調べてみると湿度は毎年80%以上! こちらは香港のように暑くて湿度が高い、でも丹後地方とあまり変わらない数値です。
湿度といえば、梅雨の時期や夏の、ちょうど今年のような蒸し蒸しとした天気を思い浮かべるのですが、
丹後で最も湿度が高いのは、晩秋から雪の降る冬の時期。
丹後では、晩秋の落ち葉の季節に枯葉が風で舞うことはありません。
マンガやドラマで、落ち葉がヒュルルンと舞うシーン。丹後にいた頃は、なぜ落ち葉が風に舞うのかがどうしても理解できなかったけれど、丹後を離れると実際落ち葉が風に舞っていたので驚きました。
11月中旬から、丹後地域独特の「うらにし」と呼ばれる、毎日雨か曇りの、どうしようもなくグレーな日々が続くのです。
落ち葉は地面に落ちて雨に濡れて乾くこともなく、もちろん風に舞うことはありません。
そして12月に入ると雪の季節が始まり、1月から雪が積もります。その雪が溶けずに冬の湿度をキープするのです。
実はこの湿度の高い気候、
繊細な絹織物を織る大切な条件の一つ。
まず、極細の絹糸は乾燥すると切れやすい。
布を織る時の糸も切れやすい。
シルクの布も糸も、乾きすぎるとガサガサになる。
でも丹後では天然の湿度で絹糸の柔軟さがいつも守られている。
丹後ちりめんの特徴に、糸の撚りが強いということがあります。
これはもう半端なく強い撚りをかけていて、これは世界でも丹後のみ。
これが丹後独特の水で撚る撚糸機。
木製の機械は水でびしょ濡れ、濡らしながら糸を撚るんです。
この糸を強く強く撚り上げることで、しぼ、凹凸のある絹の布を300年前、江戸時代の職人の絹屋佐平治さんが発見したんですね。
京都の西陣で覚えた技術を丹後に持って帰ってきたということですが、
丹後ちりめんは湿度の高い丹後でないとできないですから
やっぱりオリジナルの技術、ちりめんの布を丹後で生み出した、ということでしょう。
出来上がった糸はもちろん乾かすけれどそれでも水気を含んでしっとり。
糸から反物が織り上がるまで、乾燥してはいけないのです。
そんなわけで、丹後ちりめんは糸から織りまで湿気がたっぷりある状態で出来上がります。
東京と丹後、2拠点生活でフィルタンゴ を始めた私は
丹後の絹織物は世界中で丹後でしか織れないというのに気がつき、
2年前にMakuakeにトライしました。
日本の伝統のものづくり、絹織物や漆、木工品、竹細工、陶芸、などは、
自然や自然から生まれる原料や作り方、それに携わる人々など、
全ての要素の絶妙なバランスによって
何百年もの時間をかけて出来上がるんだなあと。
丹後の気候も重要だけど、丹後の人の個性もまたある意味特徴的。
寒い土地特有なのか、口数少なめで、辛抱強く細かい仕事をされる方が多い。
丹後の人でないと、丹後ちりめんはなかなか織れないだろうなあって
あまり口にはしないけれどよく思ってたりします。
このお話はまた今度。
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