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Bounty Dog【アグダード戦争】

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遠く、でもいずれ来るだろうこの世界の未来を先に走る、とある別の世界。人間達が覇権を握るその世界は、人間以外の全ての存在が滅びようとしていた。事態を重くみた人間は、『絶滅危惧種』達…
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2022年10月の記事一覧

Bounty Dog 【アグダード戦争】240

240

 ヒュウラによって突然、大量の眠り粉が撒かれた”民間お掃除部隊”のアジトは、内部にいた人間達の殆どが強制的に眠らされていた。
 唯、煙の罠にいち早く気付いて掛からずに済んだ人間が1人だけいた。その人間は目の前でうつ伏せになってムニャムニャ呟きながら幸せそうに寝ている隊長……『殺せ』と”あの人”に命令されている標的の顔を凝視する。
 標的を仕留める大型ナイフも、”あの人”と連絡を取る為に使

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Bounty Dog 【アグダード戦争】238-239

238

 最大の難関を”全員生還”という目的の形で突破した。ヒュウラとリングとミディール達コルドウは、燃え上がる火の広場を、激しい熱風を浴びながら繁々と観察する。
 人間では絶対に突破出来ない場所だった。コルドウだけでも無理だったかも知れない。青紫色をした猛毒の煙も彼方此方から噴き上がっていた。毒が風に乗って此方側にやってこないように、亜人達はそそくさとその場から離れていく。今ヒュウラ達が居る場

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Bounty Dog 【アグダード戦争】236-237

236

 ーー人間は、この途轍もなく大きな『箱』を『城』と呼ぶらしい。軍曹は、他の布達と暮らしている棲家を『寝ぐら』と何時も呼ぶ。一方で朱色目やミト達は同じモノを、『アジト』と呼んでいる。
 この『箱』を、イシュダヌというあの汚い緑色の布を被った人間は何と呼んでいるのだろう?俺は、何と呼べば良いのか思い付かない。だから軍曹と同じ呼び方にする。『ブサイク城』。ーー
 軍曹曰く“ブサイク”こと、アグ

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Bounty Dog 【アグダード戦争】234-235

234

 ーー軍曹は、俺の”友”だ。デルタと別れた俺を救ってくれた。何度も。
 此処は物凄く危険な所だと、人間じゃない俺もずっと思ってる。軍曹も、朱色目も此処で無理に暮らす必要は無いと思う。だけど軍曹達はこの土地が好きだから、物凄く危険なのに居続けているのだとも思う。少し前に、ミディールを遂に捕まえてやろうと思って土から掘り出した時に、ミディールに喚かれながら言われた。
「あぎゃああ、親びーん!

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Bounty Dog 【アグダード戦争】230-231

230

 軍曹と同じように突然突撃訪問したシルフィは、呆気に取られているアグダード人の青年に向かって、何時もと変わらないクールな態度で話し掛ける。
「悪いわね、突然。30ファヴィ君」
「??」
 『3000エード』という一方的に名付けられている物凄く安い値段の渾名を言われて首を傾げた相手は、先ず反応として、ドアが全開になっていて部屋が丸見えになっていると指摘してきた。シルフィはキイキイ言う壊れ掛

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Bounty Dog 【アグダード戦争】228-229

228

 ーー地下牢にいる、ピエロのような戯けた赤目の黒布男は、間違い無くクロ……イシュダヌの刺客だと思っている。だが、敵である”民間お掃除部隊”に、ワザワザ情報を流してくる意味が分からない。裏切っているのだろうか?もう1人の刺客……暗殺の実行犯と、2人で潜り込んでいるのではないか?
 “彼”を保護する為に、実行犯を何としてもイシュダヌごと証拠を掴んで正体を暴き、排除しなければ。ーーシルフィは険

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Bounty Dog 【アグダード戦争】226-227

226

 ミトにアポ無し突撃訪問中の軍曹は、彼女が己の上司のシルフィと共同で使っている客間の部屋を、澄んだ水色の目で見渡した。吊り上がった目で、壁に立て掛けられているドラム型弾倉付きサブマシンガンと白銀のショットガン以外は何の変哲も無い女の部屋を隈無く観察してから、目の前で立っている少女に、前置きの雑談ひとつせずにいきなり本題の質問をした。
「ミトは知ってるんだよな?あいつの名前」

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Bounty Dog 【アグダード戦争】223-225

223

 軍曹達とシルフィ達がイシュダヌと、イシュダヌが潜伏している事がほぼ確実である麻薬奴隷商会本部『イシュダヌ城』への奇襲の仕方について作戦会議と情報収集を始めたので、ヒュウラはリングを連れて、”民間お掃除部隊”のアジトをコッソリと出た。
 唯、”今”は行動を起こさない。先ずは”相手”の無事を確認する。お気に入りの平べったい岩で仁王立ちしたヒュウラは、ポケットから”あの道具”を再び取り出した

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Bounty Dog 【アグダード戦争】221-222

221

 皆、動き出した。この日は全員静かに動き出す。そして夜になって、何時ものように皆が寝た。

 軍曹は1人で、隊長室で寝ていた。ファヴィヴァバの”掃除”から帰還して直ぐに隊長室に運ばれていたベッドを、そのまま就寝用の道具として使い続けていた。
 軍曹は鼾1つかかずに静かに寝ている。寝ている時は上品な人間で、輩では無かった。幼い頃に親に躾けられて身に付けた、上級貴族の非常に綺麗な寝相だった。

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Bounty Dog 【アグダード戦争】219-220

219

 正体不明の独裁者・麻薬奴隷商会の長イシュダヌは、商品の奴隷から出た『不良品』を処分するのに邪魔なコルドウを駆逐して不良品処分用の地雷を埋めたいという極めてエゴな理由で、アグダード地帯の土を猛毒にして、この土地で生きている全ての存在を滅ぼそうとしている。
 シルフィは保護組織の支給品通信機をスーツのポケットから2つ取り出すと、ミトに1つ投げ渡してきた。アグダードに来る前に使っていた、新人

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Bounty Dog 【アグダード戦争】217-218

217

「はい。ええ、そうです。手は既に施しました。我が勢力にとって邪魔にしかならないものは早々に『不良品』として退場して貰う。それは勿論、当然です。基本方針ですから。
 はい……はい。……え?……ラー(いいえ)。何でもありません。はい……はい。……そうですか。とても行動がお早い。………………流石はあなたです。
 私も近い内に試験を終わらせられそうです。
 私の帰りを楽しみにして、あなたも準備を

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Bounty Dog 【アグダード戦争】215-216

215

「申し訳ありません。昨日は実行出来ませんでした。ヒュ……隙が全く無くて。……はい……はい。
 はい……はい。ラー(いいえ)、とんでもない。ワザと長く泳がせているんです。その方が、あのガビー(アホ)は死ぬ時により強く絶望するでしょ?
 あなた好みの合格方法にしたいのです。……シュクラン(ありがとうございます)。私の考えを御理解頂いて、大変感謝します。
 あなたも、御自身の計画を引き続きお進

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