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Bounty Dog【Science.Not,Magic】

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遠く、でもいずれ来るだろうこの世界の未来を先に走る、とある別の世界。人間達が覇権を握るその世界は、人間以外の全ての存在が滅びようとしていた。事態を重くみた人間は、『絶滅危惧種』達…
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記事一覧

Bounty Dog【Science.Not,Magic】68-

68

 エスナは足がずっと気になっていた。右の足首に特殊な機械の輪が付いている。アンテナも付いていた。脅威であるあの狼が付けている首輪と、形がお揃いである。
 機械の輪の表面を指で叩いてミミズ文字を書いて指で弾くが、機械の輪を構成している『原子』は”お願い”をしても、全く反応してくれなかった。理由はサッパリ分からない。目を5色に変えて『原子』の特定は出来ているのに、何回”お願い”しても発信機の原

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Bounty Dog【Science.Not,Magic】66-67

66

 彼は其の容姿に似合わない名前だった。しかも苗字が創作御伽噺で登場する人物のように現実味が無い。偽名だと思ったが、ミトは特に気にしなかった。
 スティーヴ・マグナハートと名乗った小麦肌、黒髪ショートボブ、そして宝石のように綺麗な緑色の目をした青年は、ミトよりも数センチ高い程度の身長しか無い。成長前のヒュウラと同じ背丈である。小柄な青年に先導されて歩くミトは、相手の名前よりも両手に黒い革手袋

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Bounty Dog【Science.Not,Magic】63-64

63

 ーー東南地帯ではハリマウォ、中央大陸では虎人(フーレン)と呼ばれているらしい此の虎の亜人は、ガレージセールをしていた心臓病持ちのお婆さんが言っていたような、凶暴性は微塵も感じなかった。母親に襲われ掛けて咄嗟に母親を撃ち殺して拾った此の子は、私が母親を殺した”餌”であるにも関わらず、私に初めから懐いていた。
 産まれた時から良く食べ飲みし、良く動いて良く笑う、愛くるしい子だった。私が幼い子

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Bounty Dog【Science.Not,Magic】61-62

 他と遥かに違うと何もしていなくても、此の世では其れだけで生き物達から大罪扱いにされやすい。

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 カイ・ディスペルは着衣・重量荷物持ち・子供で軽いが荷物としては重い亜人1体持ちのスーパーハイパーウルトラスペシャル・アルティメット・ハンディキャップ抱え状態でトライアスロンの第1競技を完走仕掛けていた。平泳ぎからクロールに泳ぎ方を変えてからの彼は、惑う事なき超人だった。スピードがジェットゴムボ

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Bounty Dog【Science.Not,Magic】59-60

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 彼の夢には砂嵐が吹き荒れていなかった。燦々とした黄金色の朝日が、昨日のスコールが乾き切っていない水濡れの木々の隙間から、湿った地面に向かって光の雨を降り注がせている。
 彼は12年前、其のジャングルで産まれた。虎の亜人にも掟がある。虎の掟は東の島の固有種である”妖精”よりも理不尽で、産まれた時に母親より先に起き上がらないと、其の場で親に喰い殺される。
 彼は産まれた時から凶暴性が薄かった

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Bounty Dog【Science.Not,Magic】58

58

 其の魔法使いは、他の存在から魔法使いだと認識されておらず、己自身も己が魔法を使ったと知らなかった。鼠が使いこなす『原子』を利用した魔法を一度見ただけで覚え、最大限に強化させて難なく再現した強靭的な才能を持つ存在は、彼の肉体と頭の中から消え去っている。
 ヒュウラは目覚めていた。見張り台からコンテナの上を走り渡り、今は船の居住部の最上階に居る。物陰に隠れて通路の様子を繁々と観察していた。虹

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Bounty Dog【Science.Not,Magic】56-57

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 警報が鳴り響き、モールス信号とライトが飛び交い、船員達が破壊されたコンテナ達にも勘付き、静寂に包まれていた貨物船にも混乱という火が付く。爆発・炎上した船の居住区にある部屋の中で、ターゲットが死んだと皆が思った。
 ヒュウラだけが何とも思っていない。見張り台近くで眠りこけている狼の亜人以外の関係者は、ターゲットが唐突に死んでしまったと信じて疑わなかった。

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Bounty Dog【Science.Not,Magic】55

55

 他と委託業務契約を結ぶという行為をする際は、発注側は勿論、委託側も企業である場合は警戒心がとても強い。金銭や委託内容は勿論、発注してくる側が信頼出来る存在だと判断して、厳格な契約を結び、担当者が適切に業務を行い、発注側が期待する以上の成果をもって完遂させるのが通常である。
 悪徳業者に利用されやすい運送会社は特に慎重で、大型かつ多量の荷物を船で運ぶ海運を事業にしている会社となれば、怪しい

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Bounty Dog【Science.Not,Magic】53-54

53

 業務委託契約書。
 (委託業務内容)
 1:指定貨物の搬送。
 2:指定貨物の厳重管理。
 3:指定生物の自由行動許可および保護。
 ※但し、3に関しては受注側に損害が生じた際は契約事項から抹消する事を条件とする。
 (委託料)100万エード。
 (委託期間)新暦23××年8月××日 深夜から翌日早朝まで。
 (委託場所)某クラムチャウダー祭り開催国から中央大陸東部半島国迄の海上経路。

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Bounty Dog【Science.Not,Magic】51-52

51

『キって、俺、聞いた事あるんだよなあ』
 セグルメントが呟いた。続けてルシパフィが呟く。
『植物の総称の1つでしょ?』
『木じゃねえよ』
 紅志はレシーバー越しに漫才を聞かされていた。無視する。同じくずっと無視しているシルフィから受ける指示だけに耳を傾ける。
 相棒の男は新しい相棒を得たようだが、赤い忍は興味が無い。亜人課の指揮官から許可を得て、虎の子供から人間の子供に保護対象(ターゲット

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Bounty Dog【Science.Not,Magic】49-50

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 ーー私は日記を書いて、自分の人生を他人に発表したり他人の為に一生の軌跡を残しておく習慣は無い。これからも死ぬまで日記を1ページも書かなかったが、私は自分の生涯で、此の日に遭った出来事は死んだ後も決して忘れなかった。
 あの満月の日の事と一緒に、あの日のあの出来事と其の後に起こった数々の出来事は、私が此れから死ぬまで進む道を決めるモノになった。”彼”の名前を知る事も私は死ぬまで無かったけれ

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Bounty Dog【Science.Not,Magic】46-47

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 ヒュウラは無意識にパパイヤを頭の上に乗せていた。両端を茶色い革手袋を付けた手で未熟の果物を掴んでいる。真横から細長い人工の光が当てられていた。スパイに狙われている。
 何故己が狙われているのか、ヒュウラは分からなかった。相手の正体も分からない。紅志が居なくなって直ぐに3発撃たれた。全ての弾丸が喉を狙ってきて首輪が全弾弾いて守ってくれたが、喉に衝撃を3回受けて首が非常に痛かった。
 パパイ

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