でべそのつぶやき <萬年筆くらぶ・フェルマー出版社>

スペインへ向かう飛行機の中でフェルマー出版社は立ち上げられた。 自分たちで本を作り、自…

でべそのつぶやき <萬年筆くらぶ・フェルマー出版社>

スペインへ向かう飛行機の中でフェルマー出版社は立ち上げられた。 自分たちで本を作り、自分たちで販売する。利益はなくてもいい。自分たちが納得できる書籍、それを作りたい。夢と希望と理想を求める本作りの旅が始まった。

最近の記事

#095 4本の「ふでDEまんねん」

 古山さんの絵画教室に参加申し込みをして、なんだかとても嬉しくて、久し振り(十数年振り?)に万年筆を買った。  セーラー万年筆の「ふでDEまんねん」。  それを4本。  思えば、『4本のHEMINGWAY』を古山さんが製作したのが1997年。あの一冊から我々の万年筆の旅が始まった。その旅は終わるどころか、いつまでも続きそうな気配である。  何かを始めるときは4本でなくてはならない。そのような訳はないが、少々高揚した気分で、「ふでDEまんねん」を購入するとき4本にした。軸の色

    • #094 一輪のポーチュラカから

       小さなガラス瓶に一輪のポーチュラカを挿した。花が一輪、蕾が2つあり、5〜6枚の葉がついていた、長さ十数センチの細い茎のポーチュラカだった。  ポーチュラカは夕方になると花はしぼんでしまう。しかし、次の日には再び花びらは開いてくれる。茎を切ってガラス瓶に挿したポーチュラカの花は、1日だけだろうと思ったが、次の日も開いてくれた。それを3日ばかり繰り返すと、さすがに花は弱ってきて、次の日はしぼんだままで花びらは開いてくれなかった。このまま枯れてしまうのかなと思ったら、次の日には隣

      • #093 東京インターナショナルペンショー 2024

         11月2日(土)3日(日)4日(月)の3日間、東京インターナショナルペンショー2024が開催されます。日本国内外から文具関連の店が集まり、魅力的な文具が販売されます。店の方々との会話も楽しくて、私は毎年参加しています。  このペンショーではセミナー(トークショー)という企画があり、私は以前、当時『趣味の文具箱』編集長だった清水さんと対談したことがあります。  今年は私一人で、「万年筆を持って旅に出よう」という内容で話すことになりました。観光をしながらも文具・ノートを探す旅、

        • #092 一大決心!

           この歳になって一大決心。  絵画教室に通うことにした。画家の古山浩一さんの万年筆画の教室だ。  今まで絵画教室に通ったことはない。本を読んで独学で描いてきた。自分がやっていることが正しいことなのかどうか、分からないままに描いてきた。年に一度参加するスケッチツアーでの合評会が、専門家から指導を受ける唯一の機会だった。  絵画に関して理解できないことが多くある。気が付かないでいることも多くあるに違いない。専門分野というものが、どれだけ深く、理解するのにどれだけの努力が必要なのか

          #091 60年代の記念切手

           萬年筆くらぶの会報誌『fuente』の発送の際、記念切手を貼っている。30余年、大量の記念切手を見てきて思うことは、1960年代には素敵なものが多かったということ。   写真の切手も60年代のものだと思う。あまりにも素晴らしいので、なぜ素晴らしいと感じるのかを分析しようと思い、拡大コピーしてきてノートに貼った。このノートはB6サイズで、絵画の勉強用のものだ。新聞や雑誌のなかで、これいいなあ〜と思ったものを貼っている。  ノートに貼った切手の拡大コピーをじっくりと見て、なぜ感

          #090 fuente 92号

           印刷屋からfuente 92号が納品された。fuenteの山を目の前にして毎回思うことがある。それは、ああ、今回も約束を果たせたなということ。  fuenteを発行するという約束。  しかし、そのような約束を私は誰ともしたことはない。なのに何故、約束を果たしたと思ってしまうのか。  萬年筆くらぶには入会費も会費もない。それぞれの会員が、金額をそれぞれに決めて、でべそに送るというシステムをとっている。  会費制にしていたら、fuenteを発行することが義務となってしまう。f

          #089 e+mのボールペン

           万年筆愛用家のなかにはボールペンが苦手だという人もいるが、私はケースバイケースでボールペンも使っている。  e+mとの出合いはクラッチペンだった。5.6ミリ径の芯を装填して使うクラッチペンに夢中になった時期があり、何本も買った。どれも魅力的なもので、特にゼブラノと呼ばれている、木目が鮮明な縞模様になっているものを好んで使っている。  クラッチペンを使っていたら、e+mのボールペンも視野に入るようになり、e+mのボールペンが1本1本と増えていった。木製の軸が程良く太くて、手に

          #088 OHTO COLOR PENCIL

           恐らく、このペンシルを使っている人間は極めて少ないだろう。  赤色軸に白色の丸いノックパーツ。軸にOHTO COLOR PENCIL OP-C200 NO.1 RED=APASSIONATO と刻印がある。デフォルトで2ミリ径の赤芯が入っていた。  私は新聞記事のサイドラインにこれを使うことが多い。濃過ぎず、薄過ぎず、太過ぎず、細過ぎずとちょうどいい。  赤色と白色の2色で構成されているレトロな姿と、何と言っても球状のノックパーツが可愛い。  いま5本のOHTO COLOR

          #087 ボールペン BIC

           昔、ボールペンといえば、インク溜まりができる、書いてからしばらく経っても、紙面を擦るとインクがダマになっているところから彗星の尻尾のようにインクが広がり紙面が汚れるなどということがあった。万年筆愛用家の中にはボールペンが苦手だという人が多い。  ボールペンと聞けば何種類か頭の中に浮かぶが、その中の1本にBICがある。発売されたのが1950年というから、もう74年選手ということになる。オレンジ色の胴軸に、インクと同色のビニールっぽいキャップ。多分に漏れず、このBICもインク溜

          #086 スカンノへの旅 (最終回) スケッチブックの中の時間

           スケッチツアーからの帰国後、ツアー中に描いた絵の手直しをするとか、着彩するとか、そのようなことを今まであまりやったことがない。それどころか、再びペンを持ちスケッチブックを開くこともなくなる。日常的に絵を描くという生活を日本ではしておらず、帰国と同時に絵を描くということが特別なこととなってしまう。  スカンノでも多くの写真を撮ってきた。それらを見ながらペン画を描くかといえば、描かない。私は屋外で風を頬に感じながらスケッチをするのが好きなようで、写真を見ながら絵を描くということ

          #086 スカンノへの旅 (最終回) スケッチブックの中の時間

          #085 スカンノへの旅 (その22) 帰国の飛行機にて

           スカンノには5日間滞在した。中4日間、朝から夕刻まで屋外でスケッチをするという、普段やらないことをやった。それは、ある意味、冒険でもあった。そのようなことが私にできるだろうかと不安だった。流石に4日目には集中力を欠いてきたが、スカンノの魅力的な町並みと同行者の笑顔が私を励ましてくれ、無事にスケッチツアーを終わらせることができた。  スカンノからローマへ。ローマから機中の人となった。飛行機の中での長時間をどう過ごすかが課題でもあり、楽しみでもある。過ごし方の一つに映画鑑賞が

          #085 スカンノへの旅 (その22) 帰国の飛行機にて

          #084 先客

           夏は4時を過ぎると白々と明るくなる。早朝、ひと仕事を済ませ、いつもなら5時頃に散歩に出掛けるが、今日はちょっと早めに出てみるかと思い立ち、4時半に家を出た。  ひんやりとした空気が頬に触れる。車もほとんど走っていない。静寂のなかを数分歩くと、いつもの川沿いの散歩コースに着く。せせらぎの音を聞きながら、左に水田が拡がる小径を歩く。今日は少し早い時間だから、誰も歩いていないなと思いながら足を進めていたら、先客がいた。  鴨のつがい。不器用に体重移動しながら、ヨタヨタと歩いている

          #083 ブルーモーメント

           家人が「これって、よく言っているブルーブラックの空のことじゃない?」と言って、新聞の記事を見せてくれた。テレビドラマの紹介記事で、ドラマの名が「ブルーモーメント」。その記事は次のような文章で始まる。  「日の出前と日の入り後のわずかな時間だけ、空が濃い青色に染まる。そのブルーモーメントをいつも通り見られることがどれほど幸せか。気象災害は時に、日常も命も突然奪っていく。そんな気象災害から命を守るチームの奮闘の物語が始まる。」  あのブルーブラックの、数分間の空のことをブルーモ

          #082 スカンノへの旅 (その21) 「今日はゆったりとした気分だ」

           スカンノでは4日間、朝から夕刻まで一日中スケッチをした。画家でもなく、絵画の勉強をしているわけでもない私が、一日中、屋外でスケッチをする。それも4日間連続で。遊びと言えども、それは想像以上に大変なことだった。  流石に4日目は疲労を感じ、集中力がなくなった。スケッチブックの白紙にペンを下ろすことが面倒になり、描き始めるのにヨォ〜イショ! と心の中で掛け声を掛ける始末だった。  4日間のスケッチを終えて、スカンノを去る日となった。ホテルを10時に出発だ。スケッチブックや画材

          #082 スカンノへの旅 (その21) 「今日はゆったりとした気分だ」

          #081 スカンノへの旅 (その20) 目標は達成できたのか?

           壮大な光景が目の前に広がっている。一つ一つの建物が数百年という歴史をもっている。ドアや窓の形・デザインが素晴らしい。窓辺の花が嬉しい。壁の表情が堪らなく豊かだ。これらを全部描いて持って帰りたい。建物だけではない。建物で囲まれた広場の空気感。それも表現したい。この空間にあるもの、この空間で感じられるもの全てを描いて、全てを持って帰りたい。  コロナ禍で数年間、海外へスケッチに行くことができなかったこともあり、イタリア・スカンノで久し振りにスケッチをした私は、少々興奮していた。

          #081 スカンノへの旅 (その20) 目標は達成できたのか?

          #080 野花コレクション

           早朝の空の色、風の香、せせらぎの音。それらを感じながら、私は川沿いの小径を歩く。  道の両脇には多種の草が生えている。その中に、赤、黄、紫の小さな花が見えた。花の名は知らない。  一輪、二輪と摘んで持ち帰り、お気に入りのガラス瓶に挿した。茎の色もそれぞれ違うことに気付く。小さな発見が嬉しい。  水彩画のモデルさんになってもらうつもりだ。パレットのどの色を使うか、すでに考え始めている。小さな行動の切っ掛けとなっていることが嬉しい。  明日はどのような野花と出合えるだろうか。