でべそのつぶやき <萬年筆くらぶ・フェルマー出版社>

スペインへ向かう飛行機の中でフェルマー出版社は立ち上げられた。 自分たちで本を作り、自…

でべそのつぶやき <萬年筆くらぶ・フェルマー出版社>

スペインへ向かう飛行機の中でフェルマー出版社は立ち上げられた。 自分たちで本を作り、自分たちで販売する。利益はなくてもいい。自分たちが納得できる書籍、それを作りたい。夢と希望と理想を求める本作りの旅が始まった。

記事一覧

#090 fuente 92号

 印刷屋からfuente 92号が納品された。fuenteの山を目の前にして毎回思うことがある。それは、ああ、今回も約束を果たせたなということ。  fuenteを発行するという約束。…

#089 e+mのボールペン

 万年筆愛用家のなかにはボールペンが苦手だという人もいるが、私はケースバイケースでボールペンも使っている。  e+mとの出合いはクラッチペンだった。5.6ミリ径の…

#088 OHTO COLOR PENCIL

 恐らく、このペンシルを使っている人間は極めて少ないだろう。  赤色軸に白色の丸いノックパーツ。軸にOHTO COLOR PENCIL OP-C200 NO.1 RED=APASSIONATO と刻印がある…

#087 ボールペン BIC

 昔、ボールペンといえば、インク溜まりができる、書いてからしばらく経っても、紙面を擦るとインクがダマになっているところから彗星の尻尾のようにインクが広がり紙面が…

#086 スカンノへの旅 (最終回) スケッチブックの中の時間

 スケッチツアーからの帰国後、ツアー中に描いた絵の手直しをするとか、着彩するとか、そのようなことを今まであまりやったことがない。それどころか、再びペンを持ちスケ…

#085 スカンノへの旅 (その22) 帰国の飛行機にて

 スカンノには5日間滞在した。中4日間、朝から夕刻まで屋外でスケッチをするという、普段やらないことをやった。それは、ある意味、冒険でもあった。そのようなことが私…

#084 先客

 夏は4時を過ぎると白々と明るくなる。早朝、ひと仕事を済ませ、いつもなら5時頃に散歩に出掛けるが、今日はちょっと早めに出てみるかと思い立ち、4時半に家を出た。 …

#083 ブルーモーメント

 家人が「これって、よく言っているブルーブラックの空のことじゃない?」と言って、新聞の記事を見せてくれた。テレビドラマの紹介記事で、ドラマの名が「ブルーモーメン…

#082 スカンノへの旅 (その21) 「今日はゆったりとした気分だ」

 スカンノでは4日間、朝から夕刻まで一日中スケッチをした。画家でもなく、絵画の勉強をしているわけでもない私が、一日中、屋外でスケッチをする。それも4日間連続で。…

#081 スカンノへの旅 (その20) 目標は達成できたのか?

 壮大な光景が目の前に広がっている。一つ一つの建物が数百年という歴史をもっている。ドアや窓の形・デザインが素晴らしい。窓辺の花が嬉しい。壁の表情が堪らなく豊かだ…

#080 野花コレクション

 早朝の空の色、風の香、せせらぎの音。それらを感じながら、私は川沿いの小径を歩く。  道の両脇には多種の草が生えている。その中に、赤、黄、紫の小さな花が見えた。…

#079 スカンノへの旅 (その19) スカンノの猫

 「猫一匹いない道」という表現の裏には、(道に)猫というものはどこかしらいるものであるといった意味合いを感じる。  スカンノでの早朝散歩では、人は勿論、猫一匹い…

#078 MDノート コットン A5スクエア

 MDノートに使われている紙は「MDペーパー」と呼ばれている優れた紙だ。万年筆からボールペン、鉛筆まで、何で書いても受け止めてくれる安定感がある。  また、MDノート…

#077 スカンノへの旅 (その18) 突然の音楽

 朝食後、教会の広場でのんびりと時を過ごしていたら、遠くからブラスバンドの音が聞こえてきた。見ると制服を身に纏ったマーチングバンドだ。力強い音を響かせながら広場…

#076 スカンノへの旅 (その17) 手作りビスケット屋

BISCOTTERIA ARTIGIANALE 手作りビスケット屋  メイン通りから坂道を10メートルくらい下った場所に、このビスケット屋はある。旅の者は誰も気が付かないだろう。地元の…

#075 絶滅危惧種? 記念切手を貼った手書き葉書(下)

 いま葉書の送料は63円。封書(定型)は84円だ。それが今後、葉書が85円、封書が110円に値上げされるという。約3割の値上げを検討しているというから、萬年筆く…

#090 fuente 92号

 印刷屋からfuente 92号が納品された。fuenteの山を目の前にして毎回思うことがある。それは、ああ、今回も約束を果たせたなということ。  fuenteを発行するという約束。  しかし、そのような約束を私は誰ともしたことはない。なのに何故、約束を果たしたと思ってしまうのか。  萬年筆くらぶには入会費も会費もない。それぞれの会員が、金額をそれぞれに決めて、でべそに送るというシステムをとっている。  会費制にしていたら、fuenteを発行することが義務となってしまう。f

#089 e+mのボールペン

 万年筆愛用家のなかにはボールペンが苦手だという人もいるが、私はケースバイケースでボールペンも使っている。  e+mとの出合いはクラッチペンだった。5.6ミリ径の芯を装填して使うクラッチペンに夢中になった時期があり、何本も買った。どれも魅力的なもので、特にゼブラノと呼ばれている、木目が鮮明な縞模様になっているものを好んで使っている。  クラッチペンを使っていたら、e+mのボールペンも視野に入るようになり、e+mのボールペンが1本1本と増えていった。木製の軸が程良く太くて、手に

#088 OHTO COLOR PENCIL

 恐らく、このペンシルを使っている人間は極めて少ないだろう。  赤色軸に白色の丸いノックパーツ。軸にOHTO COLOR PENCIL OP-C200 NO.1 RED=APASSIONATO と刻印がある。デフォルトで2ミリ径の赤芯が入っていた。  私は新聞記事のサイドラインにこれを使うことが多い。濃過ぎず、薄過ぎず、太過ぎず、細過ぎずとちょうどいい。  赤色と白色の2色で構成されているレトロな姿と、何と言っても球状のノックパーツが可愛い。  いま5本のOHTO COLOR

#087 ボールペン BIC

 昔、ボールペンといえば、インク溜まりができる、書いてからしばらく経っても、紙面を擦るとインクがダマになっているところから彗星の尻尾のようにインクが広がり紙面が汚れるなどということがあった。万年筆愛用家の中にはボールペンが苦手だという人が多い。  ボールペンと聞けば何種類か頭の中に浮かぶが、その中の1本にBICがある。発売されたのが1950年というから、もう74年選手ということになる。オレンジ色の胴軸に、インクと同色のビニールっぽいキャップ。多分に漏れず、このBICもインク溜

#086 スカンノへの旅 (最終回) スケッチブックの中の時間

 スケッチツアーからの帰国後、ツアー中に描いた絵の手直しをするとか、着彩するとか、そのようなことを今まであまりやったことがない。それどころか、再びペンを持ちスケッチブックを開くこともなくなる。日常的に絵を描くという生活を日本ではしておらず、帰国と同時に絵を描くということが特別なこととなってしまう。  スカンノでも多くの写真を撮ってきた。それらを見ながらペン画を描くかといえば、描かない。私は屋外で風を頬に感じながらスケッチをするのが好きなようで、写真を見ながら絵を描くということ

#085 スカンノへの旅 (その22) 帰国の飛行機にて

 スカンノには5日間滞在した。中4日間、朝から夕刻まで屋外でスケッチをするという、普段やらないことをやった。それは、ある意味、冒険でもあった。そのようなことが私にできるだろうかと不安だった。流石に4日目には集中力を欠いてきたが、スカンノの魅力的な町並みと同行者の笑顔が私を励ましてくれ、無事にスケッチツアーを終わらせることができた。  スカンノからローマへ。ローマから機中の人となった。飛行機の中での長時間をどう過ごすかが課題でもあり、楽しみでもある。過ごし方の一つに映画鑑賞が

#084 先客

 夏は4時を過ぎると白々と明るくなる。早朝、ひと仕事を済ませ、いつもなら5時頃に散歩に出掛けるが、今日はちょっと早めに出てみるかと思い立ち、4時半に家を出た。  ひんやりとした空気が頬に触れる。車もほとんど走っていない。静寂のなかを数分歩くと、いつもの川沿いの散歩コースに着く。せせらぎの音を聞きながら、左に水田が拡がる小径を歩く。今日は少し早い時間だから、誰も歩いていないなと思いながら足を進めていたら、先客がいた。  鴨のつがい。不器用に体重移動しながら、ヨタヨタと歩いている

#083 ブルーモーメント

 家人が「これって、よく言っているブルーブラックの空のことじゃない?」と言って、新聞の記事を見せてくれた。テレビドラマの紹介記事で、ドラマの名が「ブルーモーメント」。その記事は次のような文章で始まる。  「日の出前と日の入り後のわずかな時間だけ、空が濃い青色に染まる。そのブルーモーメントをいつも通り見られることがどれほど幸せか。気象災害は時に、日常も命も突然奪っていく。そんな気象災害から命を守るチームの奮闘の物語が始まる。」  あのブルーブラックの、数分間の空のことをブルーモ

#082 スカンノへの旅 (その21) 「今日はゆったりとした気分だ」

 スカンノでは4日間、朝から夕刻まで一日中スケッチをした。画家でもなく、絵画の勉強をしているわけでもない私が、一日中、屋外でスケッチをする。それも4日間連続で。遊びと言えども、それは想像以上に大変なことだった。  流石に4日目は疲労を感じ、集中力がなくなった。スケッチブックの白紙にペンを下ろすことが面倒になり、描き始めるのにヨォ〜イショ! と心の中で掛け声を掛ける始末だった。  4日間のスケッチを終えて、スカンノを去る日となった。ホテルを10時に出発だ。スケッチブックや画材

#081 スカンノへの旅 (その20) 目標は達成できたのか?

 壮大な光景が目の前に広がっている。一つ一つの建物が数百年という歴史をもっている。ドアや窓の形・デザインが素晴らしい。窓辺の花が嬉しい。壁の表情が堪らなく豊かだ。これらを全部描いて持って帰りたい。建物だけではない。建物で囲まれた広場の空気感。それも表現したい。この空間にあるもの、この空間で感じられるもの全てを描いて、全てを持って帰りたい。  コロナ禍で数年間、海外へスケッチに行くことができなかったこともあり、イタリア・スカンノで久し振りにスケッチをした私は、少々興奮していた。

#080 野花コレクション

 早朝の空の色、風の香、せせらぎの音。それらを感じながら、私は川沿いの小径を歩く。  道の両脇には多種の草が生えている。その中に、赤、黄、紫の小さな花が見えた。花の名は知らない。  一輪、二輪と摘んで持ち帰り、お気に入りのガラス瓶に挿した。茎の色もそれぞれ違うことに気付く。小さな発見が嬉しい。  水彩画のモデルさんになってもらうつもりだ。パレットのどの色を使うか、すでに考え始めている。小さな行動の切っ掛けとなっていることが嬉しい。  明日はどのような野花と出合えるだろうか。

#079 スカンノへの旅 (その19) スカンノの猫

 「猫一匹いない道」という表現の裏には、(道に)猫というものはどこかしらいるものであるといった意味合いを感じる。  スカンノでの早朝散歩では、人は勿論、猫一匹いない道を、貸し切り状態で毎日歩いた。朝の空気が好きだ。静寂が心に沁みる。今日も生きていることを実感する。生命をもたない石に囲まれた空間の中で、私だけが命を得ている。私の命は、五感、身体、心をフル稼働している。  道の角を曲がったら、いた。猫が一匹、道の脇に座っていた。私と同じ、朝の空気を楽しんでいたのかもしれない。私が

#078 MDノート コットン A5スクエア

 MDノートに使われている紙は「MDペーパー」と呼ばれている優れた紙だ。万年筆からボールペン、鉛筆まで、何で書いても受け止めてくれる安定感がある。  また、MDノートの周年記念として使われた紙に「MD用紙コットン」というものがある。この「MD用紙コットン」が実に素晴らしい。メーカーのキャッチコピーには、「空気を含んだ柔らかな紙」とある。「『コットンパルプ』を20%配合した、滑らかで優しい肌合いと、上品な書き心地を愉しめる特別な紙」とある。「空気を含んだコットンパルプが筆跡に奥

#077 スカンノへの旅 (その18) 突然の音楽

 朝食後、教会の広場でのんびりと時を過ごしていたら、遠くからブラスバンドの音が聞こえてきた。見ると制服を身に纏ったマーチングバンドだ。力強い音を響かせながら広場まで歩いてきて、演奏を続けながら整然と並んだ。どの演奏家も実に凛々しい表情をしており、自信に溢れている。制服が醸し出す緊張感と演奏家たちの表情が、音楽に命を吹き込んでいるようだった。  そうだ、Hさんを呼んでこよう。  Hさんは今回のスケッチツアーの同行者の一人で、日本では絵画教室を開いているベテランだ。特に演奏家が演

#076 スカンノへの旅 (その17) 手作りビスケット屋

BISCOTTERIA ARTIGIANALE 手作りビスケット屋  メイン通りから坂道を10メートルくらい下った場所に、このビスケット屋はある。旅の者は誰も気が付かないだろう。地元の人だけが買いに行く。ホテルでの朝食の際、ビスケットが並んでいて、これ美味しいね、どこで売っているんだろうねと話題になり、店の名前と場所をホテルの人に教えてもらった。  訪れると、父親と息子が2人で製造・販売をしている小さな店だった。ショーケースの幅は1メートルくらいで、2人が店内に入ると3人目

#075 絶滅危惧種? 記念切手を貼った手書き葉書(下)

 いま葉書の送料は63円。封書(定型)は84円だ。それが今後、葉書が85円、封書が110円に値上げされるという。約3割の値上げを検討しているというから、萬年筆くらぶの会報誌『fuente』の送料は180円から230円となることが予想される。  少子化が進み、労働者不足が深刻な社会問題となっている今日、送料の値上げは仕方がないのかもしれない。  しかし、日本郵便よ、送料の値上げだけで、他に解決方法はとらないのか?  葉書・手紙は次世代に伝えるべく文化の一つとの認識はないのか?