e-Governance Academy編著(2019)『e-エストニア デジタル・ガバナンスの最前線』日経BP
e-ガバナンスも広範囲であることがわかる本
2019年にこの本が発売される前にアマゾンで先行予約して購入したものの、中身をつまみ食い程度にパラパラと拝見しただけで、全体を通しては読んでいませんでした。
ちょっとだけ時間に余裕ができましたので、改めて全てを読破することにしました。
本書は紙の質も良く、適度にまとめられて見やすく仕立てられています。内容は、翻訳陣に三菱UFJリサーチ&コンサルティングの面々が関わっているので、コンサルの提案資料のような仕立て上がりになっています。
内容的には、エストニアの電子政府の全容をさらっと説明している紹介資料のような感じです。その電子政府は、金融、教育、警察、司法、ビジネス、インフラ等、国が成り立つあらゆる分野をどうまとめていくかという視点と、それにどう取り組んでいるかという簡単な説明がなされています。
世界の電子政府のお手本のようなエストニアですが、国のあらゆる機能を電子政府化するには、多方面にわたる電子化の必要性があり、日本のような、最近やっとDXのDあたりが少しずつ進歩している状態に比べると、その進度は遥かに速い気がします。
何となく、日本の場合はデジタル庁含め、未だモタモタしていて肝心要なところのDX化までは、まだまだ先な感じがします。また、わたしも一時期地方公務員でしたが、一般企業と比べるとIT化というか電子化の進み具合や、それを取り巻く規程類、そして運用含めて確実に10年は遅れているし、わたしの専門分野の情報セキュリティ関係では15~20年遅れているというDX関係の同僚もいる状態でした。
折角民間で使われている最新のものを提供しようと考えていても、事務職関連の既得権と上意下達の文化の抵抗にあって、かれらに10年以上遅れていることと、その内容や考え方を懇切丁寧に説いても、長年井の中の蛙状態で純粋培養されてきた人たちには、その懇切丁寧に説いている中身すら理解できないくらい「考える力」が退化している次第です。
本書でエストニアで電子政府をつくるにあたって、官民や特に官僚内での方向性の一致などの組織力に関する内容が触れられていれば良かったのですが、その点は公表するのが難しかったのかも知れません。日本はDX以前に、そもそも組織力で劣っているのが致命的かも知れないですね。
そんな日本の実情を知っているので、エストニアが逸速く電子化し、デジタルガバナンスができていることを知ると、まだまだエストニアと日本のギャップは大きいことを感じざるを得ない状態です。ここで書かれているエストニアの現状に、2024年の日本は未だ追いついていないことを実感として残念に思う次第。
この本が2019年に刊行されて、既に4年以上が経過しており、途中にコロナ禍が入りましたが、その後のエストニアの現状をリポートした第2版を期待したいですね。
広く浅くエストニアのe-ガバナンスの実態を知るには良書ですし、日本もこの程度の内容の電子書籍が出回るくらいにデジタル庁に頑張って欲しいですね。
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