見出し画像

山本淳子 (1960.8.27- )『源氏物語の時代 一条天皇と后たちのものがたり(朝日選書 820)』 朝日新聞社 2007年4月刊 305ページ

山本淳子 (1960.8.27- )
『源氏物語の時代 一条天皇と后たちのものがたり
(朝日選書 820)』
朝日新聞社 2007年4月刊 305ページ
https://www.amazon.co.jp/dp/4022599200

「『源氏物語』を生んだ一条朝は、紫式部、清少納言、安倍晴明など、おなじみのスターが活躍した時代。藤原道長が権勢をふるった時代とも記憶されているが、一条天皇は傀儡の帝だったわけではなく、「叡哲欽明」と評された賢王であった。皇位継承をめぐる政界の権謀術数やクーデター未遂事件、当時としてはめずらしい「純愛」ともいうべき愛情関係。ドラマチックな一条天皇の時代を、放埓だった前代・花山天皇の、謀略による衝撃的な退位から書き起こし、現存する歴史資料と文学作品、最新の研究成果にもとづいて、実証的かつ立体的な「ものがたり」に紡ぎあげる。『源氏物語』が一条朝に生まれたのは、決して偶然ではない。」

目次
序章 一条朝の幕開け
第1章 清涼殿の春
第2章 政変と悲劇
第3章 家族再建
第4章 男子誕生
第5章 草葉の露
第6章 敦成誕生
第7章 源氏物語
終章 一条の死

2009年3月2日読了
猫を膝に乗せて陽だまりに座り込んで読みました。
副書名にものがたりとあるように、読みやすい本です。

先月[2009年2月]読んだ、
大野晋(1919.8.23-2008.7.14)
『源氏物語(岩波現代文庫)』岩波書店 2008.9
https://www.amazon.co.jp/dp/4006001975

で強調されていた紫式部と藤原道長の関係が、
本書ではまったく言及されていません。
色々な見方があるんだなぁと思いながら、
楽しく読めました。

「本書の題名「源氏物語の時代」とは、
実在の帝、一条天皇の時代をさしています。
彼は今からほぼ千年前に幼くして位につき、
二十五年の長きにわたって治世を保ちつつも、
わずか三十二歳の若さで逝きました。
彼の時代には紫式部が『源氏物語』を作り、
清少納言が『枕草子』を書きました。
これらの作品や作者の名を知らない人は少ないでしょう。
また彼の時代に貴族として最高権力者の座にあった
藤原道長の名も、よく知られています。
しかし青年天皇一条については、名前も知らない、
または名前しか知らないという人が多いのではないでしょうか。
あるいは、ご存知の方でも、権力者藤原道長の陰に隠れた
無力な天皇というイメージを持つ人がいるのではないでしょうか。
実は、彼の時代については、豊富な歴史資料が遺されています。
また『栄花物語』はじめノンフィクションの文学作品にも、
彼自身やその治世が描かれています。
さらに時代を下って、平安末期や鎌倉期以降に編纂された説話集にも、
彼の時代の人物や出来事がしばしば取り上げられています。
そのため、古代史や平安文学研究の世界では、
一条天皇とその時代は、今やかなり輪郭の鮮明なものになっています。
……
本書は、この一条天皇と、彼めぐる二人の后、定子と彰子の物語を、
現存する歴史資料と文学作品によって再構成したものです ……」
p.i「はじめに」

ということで、本書は、
『大鏡』
『日本紀略』
『江談抄』
『栄花物語』
『枕草子』
等々を次々に引用しながら、
花山天皇の失踪と出家に始まる
この時代の様子を描写していて、楽しく読めます。

「この時代、帝という存在はただ一人の女だけを
愛してはならなかった。数多くのキサキを後宮に置き、
その実家の政治力に応じて尊重する「後宮経営」に
努めることが求められた。
子づくりは皇統の安定のための国家的責務であり、
必ずや男子を産ませること、それも即位の際、
貴族社会が納得するようなキサキに産ませることが必要だった。
つまり、天皇の愛や性は彼一人のものではない。
社会のものなのだ。
世の利益の前には、「純愛」はむしろ罪である。
それが彼の従うべき倫理であり、
彼の負った宿命だった ……」
p.121「家族再建」



https://ja.wikipedia.org/wiki/山本淳子

読書メーター
源氏物語の本棚(登録冊数42冊)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/1109121

山本淳子の本棚(登録冊数5冊)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11091365

https://note.com/fe1955/n/nef8cb068b3ec
山本淳子(1960.8.27- )
林真理子(1954.4.1- )
『誰も教えてくれなかった『源氏物語』本当の面白さ
(小学館101新書)』
小学館 2008.10
192ページ


https://note.com/fe1955/n/n8a77c09049c5
山本淳子(1960.8.27- )
『私が源氏物語を書いたわけ
紫式部ひとり語り』
角川学芸出版 2011.10
253ページ


https://note.com/fe1955/n/nc3a1160a0123
山本淳子 (1960.8.27- )
『平安人の心で「源氏物語」を読む』
朝日新聞出版  2014.6
328ページ


https://note.com/fe1955/n/n27e6fad89d78
山本淳子(1960.8.27- )
『枕草子のたくらみ
「春はあけぼの」に秘められた思い
(朝日選書)』
朝日新聞出版 2017.4
312ページ


https://note.com/fe1955/n/n8ef90401b665
大塚ひかり(1961.2.7- )
「嫉妬と階級の『源氏物語』
新連載
『源氏物語』は「大河ドラマ」である」
『新潮』2023年1月号


https://note.com/fe1955/n/nd8f3acdc8bc1
大塚ひかり(1961.2.7- )
「嫉妬と階級の『源氏物語』
 第二回 はじめに嫉妬による死があった」
『新潮』2023年2月号


https://note.com/fe1955/n/n333db0b1fcbd
大塚ひかり(1961.2.7- )
「嫉妬と階級の『源氏物語』
 第三回 紫式部の隠された欲望」
『新潮』2023年3月号


https://note.com/fe1955/n/n124d45f52d2b
大塚ひかり(1961.2.7- )
「嫉妬と階級の『源氏物語』
第四回 敗者復活物語としての『源氏物語』」
『新潮』2023年4月号

https://note.com/fe1955/n/n942cb810e109
大塚ひかり(1961.2.7- )
「嫉妬と階級の『源氏物語』
第五回 意図的に描かれる逆転劇」
『新潮』2023年5月号


https://note.com/fe1955/n/ncc2837435432
大塚ひかり(1961 .2.7-)
「嫉妬と階級の『源氏物語』
第六回 身分に応じた愛され方があるという発想」
『新潮』2023年6月号

https://note.com/fe1955/n/nf22b8c134b29
三田村雅子(1948.11.6- )
『源氏物語 天皇になれなかった皇子のものがたり
(とんぼの本)』
新潮社 2008.9
『記憶の中の源氏物語』
新潮社 2008.10


https://note.com/fe1955/n/n2b8658079955
林望(1949.4.20- )
『源氏物語の楽しみかた(祥伝社新書)』
祥伝社 2020.12
『謹訳 源氏物語 私抄 味わいつくす十三の視点』
祥伝社 2014.4
『謹訳 源氏物語 四』
祥伝社 2010.11
『謹訳 源氏物語 五』
祥伝社 2011.2
丸谷才一(1925.8.27-2012.10.13)
「舟のかよひ路」
『梨のつぶて 文芸評論集』
晶文社 1966.10

https://note.com/fe1955/n/na3ae02ec7a01
丸谷才一(1925.8.27-2012.10.13)
「昭和が発見したもの」
『一千年目の源氏物語(シリーズ古典再生)』
伊井春樹編  思文閣出版 2008.6
「むらさきの色こき時」
『樹液そして果実』
集英社  2011.7

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?