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山本淳子(1960.8.27- )『私が源氏物語を書いたわけ 紫式部ひとり語り』 角川学芸出版 2011.10 253ページ


山本淳子(1960.8.27- )
『私が源氏物語を書いたわけ
紫式部ひとり語り』
角川学芸出版 2011年10月刊 
253ページ
https://www.amazon.co.jp/dp/4046532483
「侍女になりたくなかった紫式部が中宮の侍女となった理由、宮中の人付き合いの難しさ、主人中宮彰子への賛嘆、ライバル清少納言への批判……。『源氏物語』の時代の宮廷生活、執筆動機がわかる!」

https://www.amazon.co.jp/dp/4044005818
『紫式部ひとり語り』
角川ソフィア文庫 2020.2
「紫式部はどのような心の持ち主で、なぜ「源氏物語」を書くに至ったのか。後宮女房としてどのように世の中を見つめたのか。紫式部の生涯を、平安時代の文学作品や国文学・国史学の研究成果をもとに、紫式部自身の言葉でたどる。」

2011年11月27日読了

『源氏物語の時代 一条天皇と后たちのものがたり』
朝日新聞社 2007.4
の著者による、書名の通り、
『紫式部日記』と『紫式部集』や
歴史資料などをもとにした、紫式部による一人称の独白です。

毎晩、布団の中で眠る前に少しづつ読んでいたので、
一週間以上かかってしまいましたが、253ページの、
それほど分厚い本ではありません。
小説のように読み通せました。

「左衛門の督(かみ)、「あなかしこ、このわたりに若紫やさぶらふ」とうかがひ給ふ。源氏に似るべき人も見え給はぬに、かの上はまいていかでものし給はんと、聞き居たり。
(『紫式部日記』寛弘五(1008)年十一月一日)

左衛門督藤原公任様が 「失礼、この辺りに若紫さんはお控えかな」 と中を覗かれる。ここには光源氏に似ていそうな方もお見えでないのに、まして紫の上などいるはずもないではないか。私は存じませんことよ、と聞くだけは聞いたが応えないでおく。

公任様は『源氏の物語』を読んでおられた。そのことを知らせるために、わざわざ私のことを「若紫」と、光源氏の妻の名前で呼ばれたのだ。見え透いたおだてに乗るものですか。意地悪な心が起こって、私は公任様を黙殺した。

だがいっぽうで、私は深い喜びを禁じ得なかった。公任様が言われた「あなかしこ、このわたりに若紫やさぶらふ」という言葉は、中国唐代の伝奇小説『遊仙窟』の一場面に倣ったものなのだ。

私は山中で運命の女と出会うという設定を『源氏の物語』に取り込み、光源氏が北山で若紫と出会う場面を作った。公任様が『遊仙窟』の言葉を使って私に呼びかけられたのは、それに気がついたということなのだ。

『源氏の物語』での密かな引用にも気がついて、「若紫の巻で、かの『遊仙窟』をうまく使いましたね。私は分かっていますよ」とほのめかして下さったのだ。

自分が知の限りを注ぎ込んで成したものが、しかるべき人にきちんと理解されている。それを知った喜びは、まさに物語作者としての手ごたえ以外の何物でもなかった。」
p.153
「第十章 女房 ものの飾りにはあらず」
『私が源氏物語を書いたわけ 紫式部ひとり語り』

読書メーター
源氏物語の本棚(登録冊数42冊)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/1109121

山本淳子の本棚(登録冊数5冊)
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https://note.com/fe1955/n/nc07bb6cbfb99
山本淳子 (1960.8.27- )
『源氏物語の時代
一条天皇と后たちのものがたり
(朝日選書 820)』
朝日新聞社 2007年4月刊
305ページ


https://note.com/fe1955/n/nef8cb068b3ec
山本淳子(1960.8.27- )
林真理子(1954.4.1- )
『誰も教えてくれなかった『源氏物語』本当の面白さ
(小学館101新書)』
小学館 2008.10
192ページ


https://note.com/fe1955/n/nc3a1160a0123
山本淳子 (1960.8.27- )
『平安人の心で「源氏物語」を読む』
朝日新聞出版  2014.6
328ページ


https://note.com/fe1955/n/n27e6fad89d78
山本淳子(1960.8.27- )
『枕草子のたくらみ
「春はあけぼの」に秘められた思い
(朝日選書)』
朝日新聞出版 2017.4
312ページ



https://note.com/fe1955/n/n8ef90401b665
大塚ひかり(1961.2.7- )
「嫉妬と階級の『源氏物語』
新連載
『源氏物語』は「大河ドラマ」である」
『新潮』2023年1月号


https://note.com/fe1955/n/nd8f3acdc8bc1
大塚ひかり(1961.2.7- )
「嫉妬と階級の『源氏物語』
 第二回 はじめに嫉妬による死があった」
『新潮』2023年2月号


https://note.com/fe1955/n/n333db0b1fcbd
大塚ひかり(1961.2.7- )
「嫉妬と階級の『源氏物語』
 第三回 紫式部の隠された欲望」
『新潮』2023年3月号


https://note.com/fe1955/n/n124d45f52d2b
大塚ひかり(1961.2.7- )
「嫉妬と階級の『源氏物語』
第四回 敗者復活物語としての『源氏物語』」
『新潮』2023年4月号

https://note.com/fe1955/n/n942cb810e109
大塚ひかり(1961.2.7- )
「嫉妬と階級の『源氏物語』
第五回 意図的に描かれる逆転劇」
『新潮』2023年5月号


https://note.com/fe1955/n/ncc2837435432
大塚ひかり(1961 .2.7-)
「嫉妬と階級の『源氏物語』
第六回 身分に応じた愛され方があるという発想」
『新潮』2023年6月号

https://note.com/fe1955/n/nf22b8c134b29
三田村雅子(1948.11.6- )
『源氏物語 天皇になれなかった皇子のものがたり
(とんぼの本)』
新潮社 2008.9
『記憶の中の源氏物語』
新潮社 2008.10


https://note.com/fe1955/n/n2b8658079955
林望(1949.4.20- )
『源氏物語の楽しみかた(祥伝社新書)』
祥伝社 2020.12
『謹訳 源氏物語 私抄 味わいつくす十三の視点』
祥伝社 2014.4
『謹訳 源氏物語 四』
祥伝社 2010.11
『謹訳 源氏物語 五』
祥伝社 2011.2
丸谷才一(1925.8.27-2012.10.13)
「舟のかよひ路」
『梨のつぶて 文芸評論集』
晶文社 1966.10

https://note.com/fe1955/n/na3ae02ec7a01
丸谷才一(1925.8.27-2012.10.13)
「昭和が発見したもの」
『一千年目の源氏物語(シリーズ古典再生)』
伊井春樹編  思文閣出版 2008.6
「むらさきの色こき時」
『樹液そして果実』
集英社  2011.7

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