見出し画像

大塚ひかり(1961- )「嫉妬と階級の『源氏物語』第四回 敗者復活物語としての『源氏物語』」『新潮』2023年4月号

『新潮』2023年4月号
新潮社 2023年3月7日発売
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BWK9XH6C
https://www.shinchosha.co.jp/shincho/backnumber/20230307/

大塚ひかり(1961- )
「嫉妬と階級の『源氏物語』
第四回 敗者復活物語としての『源氏物語』」
p.200-208
2023年4月23日読了

「『源氏物語』は、落ちぶれた家の女たちを異常なまでに
厚遇している、敗者復活の物語なのである。
その最たる人が、明石の君であった。
葵の上、紫の上、女三の宮といった高貴な
妻たちが源氏の娘を生まず、
受領階級に落ちぶれた明石の君だけが
源氏の娘を生むという設定なのは、
紫式部が是が非でも、
落ちぶれた受領階級から中宮を出したかった、
「敗者復活の物語」を描きたかったからに他ならない。

源氏の孫世代では、
高貴な葵の上の生んだ夕霧の子が、
明石の君の生んだ姫君の皇子たちに
仕える身になるという「逆転劇」を、
我が身に重ねて描きたかったからだ。

明石の君が繰り返し、
"数ならぬ身" の程
[人の数に入らない存在であること]
を嘆いているのも、
それが大貴族と接した
紫式部[藤原道長・彰子の女房]
の実感だからである。」
p.206

「"数ならぬ身" を
誰よりも嘆いていたのは
紫式部自身だった。
「落ちぶれ感」の強さ、
『源氏物語』での落ちぶれ女たちの逆転劇、
敗者復活劇とも言えるストーリーは、
紫式部の心情と深く関わっているように思う。
彼女の心情を最も投影しているのが
空蝉であるとすれば、
彼女の願望を最も体現しているのが
明石の君なのである。」
p.208

「彼ら[明石の入道親子]の夢の実現は、
高貴な先祖を持ちながら、
受領階級に落ちてしまった紫式部の、
物語を使った自己実現
とも言えるのではないか。」
p.204

読書メーター
大塚ひかりの本棚(登録冊数13冊 刊行年月順)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11091320

源氏物語の本棚(登録冊数42冊)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11091219

新潮の本棚(登録冊数13冊)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11500428

https://note.com/fe1955/n/n8ef90401b665
大塚ひかり(1961- )
「嫉妬と階級の『源氏物語』
新連載
『源氏物語』は「大河ドラマ」である」
『新潮』2023年1月号


https://note.com/fe1955/n/nd8f3acdc8bc1
大塚ひかり(1961- )
「嫉妬と階級の『源氏物語』
 第二回 はじめに嫉妬による死があった」
『新潮』2023年2月号


https://note.com/fe1955/n/n333db0b1fcbd
大塚ひかり(1961- )
「嫉妬と階級の『源氏物語』
 第三回 紫式部の隠された欲望」
『新潮』2023年3月号


https://note.com/fe1955/n/nf22b8c134b29
三田村雅子(1948.11.6- )
『源氏物語 天皇になれなかった皇子のものがたり
(とんぼの本)』
新潮社 2008.9
『記憶の中の源氏物語』
新潮社 2008.10


https://note.com/fe1955/n/n2b8658079955
林望(1949.4.20- )
『源氏物語の楽しみかた(祥伝社新書)』
祥伝社 2020.12
『謹訳 源氏物語 私抄 味わいつくす十三の視点』
祥伝社 2014.4
『謹訳 源氏物語 四』
祥伝社 2010.11
『謹訳 源氏物語 五』
祥伝社 2011.2
丸谷才一(1925.8.27-2012.10.13)
「舟のかよひ路」
『梨のつぶて 文芸評論集』
晶文社 1966.10

https://note.com/fe1955/n/na3ae02ec7a01
丸谷才一(1925.8.27-2012.10.13)
「昭和が発見したもの」
『一千年目の源氏物語(シリーズ古典再生)』
伊井春樹編  思文閣出版 2008.6
「むらさきの色こき時」
『樹液そして果実』
集英社  2011.7


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?