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【1分フィクション】

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1分以内で読み切り可能なフィクション作品集。 2022年1月より週1本追加しています。(2024.4時点) 追記:2024年度は不定期更新
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2022年5月の記事一覧

剣を持たない少女

剣を持たない少女

地面をそっと撫でる指。

綺麗なその顔を歪めては、また消す。

残像のように蘇る薄らなこれからの温かい記憶
目の前のはっきりした夢を現実の曖昧な記憶と照らし合わせてみても、ぴったり合うことはなかった。
やっぱり記憶なんて不確かで頼りにならない

自分の意識を目の前に戻す。

その少女は1ミリも笑わない。

向こうで沢山の子供たちがキャッキャ遊んでるのに。

ひとり、ポツリ。

ずっと地面と睨めっこ

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「さようなら」のその前に。

「さようなら」のその前に。

橙色に染まる空。
数羽の鳥たちがまばらに飛んでゆく。

すーっと一直線の雲を描く飛行機は沢山の人々を乗せて遠くの街へと旅立たんだよね

ぐーんと上へ、上へ。

少し下の方へ目をやると海は波打って轟音を立てていた。その内に段々、空の色と同化していく。

空と海の境界線が曖昧だ
吹き荒れる潮風が冷たい
水平線へと消えゆく太陽を眺めながら僕は重い感情に支配されていた。

振り返れば振り返るほど、この地に

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AiMaiな関係

AiMaiな関係

私は誰?
あなたに答えてほしいなんて思わない。

わからないなら、曖昧なままで。

あなたから見えている私だけで十分なの。
私を解こうとしないで。
理解しようとしないで。

わからないなら、曖昧なままで。

なぜそんなに知ろうとするの?ずっと私を探すあなたに私の気持ちなぞわかるものか。わかってたまるか。あなたはただ分析して、私という実験体を知ろうとしてるだけ。

わからないなら、曖昧なままで。

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味方はいないと思ってた

味方はいないと思ってた

消えない雫。

見えない先。

どこにも居場所なんてないならさ
どうなったっていいじゃない?

味方も敵もいない
だからどうなろうにもなれないんだけど
もはやどうにかなってしまいたいとさえ思うけど

止まらない闇。 

定まらない旗。

ここで煙みたいに消えちゃってもさ
他人に影響を与えているような
そんな大いなる人間じゃないから
一瞬悲しむヤツはいるかもしれないけど
それまでだよね

ならいいじ

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げっきょく

げっきょく

いつもの帰り道に見かける看板が窓から見える。

"げっきょく"

どういう意味なんだろう。

いつも気になってた。

だけど文字からはあまり推測ができなくて困る。

学校で習ったっけ?

全く覚えがない。

かといって他でも見かけたことある気がするから創作単語って訳ではなさそう。

んー気になる。

「ねぇ"げっきょく"駐車場ってどういう意味?」

赤信号で車が止まったとき、運転席の方に目を向けて

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