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【1分フィクション】

90
1分以内で読み切り可能なフィクション作品集。 2022年1月より週1本追加しています。(2024.4時点) 追記:2024年度は不定期更新
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2022年3月の記事一覧

新たな日常

新たな日常

プシュー

電車のドアが開き、人の波に揉まれながら電車へ吸い込まれて意図しない方向へと流される。

意味もなく乗客の一人一人の顔を見る。
この電車に毎日乗ってる人もいるんだろうな。
でもこの中には自分みたいに今日が1日目なんて人もいるはずだと思って緊張した顔持ちの人を流し目で探してみるけど、さすがに顔だけではわからない。

電車の広告を見る。
今期から始まるドラマらしい。4月らしく桜が描かれている

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見えない糸

見えない糸

あれからもう1ヶ月経ってしまった。
もう触れられない、会えない。
その苦しさは考えていた以上だった。
何かあるたびに彼女に報告したくなる。
喜びも悲しみも今まで全て共有してきたから、もう隣にいないことがとても辛い。
美味しい料理を食べたら一緒に来たいって思ってしまったり、ニュースで事件を聞くたびに心配になってしまう。
一瞬一瞬、生活の端々で彼女を思い出しては胸が苦しくなる。今までの僕の人生で恋人は

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もう二度と踏み入れない

もう二度と踏み入れない

楽しかったね
一緒に写真撮ろう〜
もう卒業だなんて早いわね
そんな声たちがあちらこちらから聞こえてくる。

僕は人ごみをかき分けて友人を探していた。
写真撮りたいな…。
学校で出会えた数少ない友人たち。
でもようやく見つけた時には皆、他の誰かと写真を撮ったり談笑していたり。その会話に入っていく度胸なんてものはない。僕は所詮彼らにとって後回しの人間だと認めざるを得なかった。一番最初に写真を撮りたいと

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あなたの向こう側

あなたの向こう側

泣きたい時に泣けばいいって言うけど
そんな簡単じゃない

心の内を話してって
そしたらわかりあえるからって
言えるわけないじゃない

辛くても人に言えなくて
幸せでも報告できなくて
苦しくても頼れなくて
心の隙間に入り込まれて頼った時なんて後悔しか残らない

そんな人間に何を求めてるの

あなたみたいに真っ直ぐでピュアで。
自分と同じことを他人にも無自覚で求めるような、自分しか見えてない自分勝手さ

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