【詩・詞】もしもし、大好きでクソッたれなあなた【なもなも】

■本日の詩『もしもし、大好きでクソッたれなあなた』

もしもし
心配してると思うから一応言っておくけどまだ生きてるわ
「君となら死んでもいい」
そう言ってたあなたが約束の場所に来なかったから
別にお礼は言わないわ
あなたへの怒りが生きる原動力になったとしても

あなたが笑うと思ったから隠してたけど
私を好きだって言ってくれたのはあなただけだったのよ
世間知らずのうぶな子みたいに舞い上がったりはしなかったわ
ただ寝る前にあなたのたった一言を反芻しただけ　
気付いたら夜が明けてたけど

そんなだからあなたを失ったら生きていけないって思ってた
全身がばらけちゃうって
でも実際はそんなことない　むしろ一皮むけた気分よ
別にお礼は言わないわ
あなたが私を強くしてくれたとしても

せめてさよならくらいは言ったらどう？
ヤるために口から出まかせばかり言ってたら　全部真に受けた馬鹿な女がいたって
深夜のファミレスでボロボロジーンズの友達と笑ってたのだとしても
今なら13センチのヒールを履いてあなたの顔にビールをぶっかけられるかも
別にお礼は言わないわ
こんな私を私は案外嫌いじゃないけど

もしもし
相変わらず留守電なのね
あなたに電話するのはこれで最後にするわ
あなたもそろそろ買い替える気になってきたでしょ
今日はあなたが知らない私の話をするわ
恥ずかしいからずっと隠してた本当の話

あなたに会うまでの私って本当に最悪だったの
何をやっても自信が持てないし失敗することをいつも恐れてた
怒られると死んだ方がマシって本気で思ったし
舌打ちされながら睨まれたらトイレの中で泣いてたの
笑われても何も言い返さないで黙って俯いてたわ　顔を真っ赤にしながらね

あなたに会って生きててもいいって初めて思えたの
あなたのために何かをしてあげたくて夜も寝ないで考えたわ
眠れない夜には慣れてたけどこんなに幸せな朝は初めてだって毎日思ってた
あなたのために優しくなろうと思ったしあなたのために強くなろうと思った
あなたによくサプライズをしたよね　昔の私からは考えられない
あなたが喜ばないかもとか迷惑かもとか昔の私が考えそうなことはやっぱり考えたけど
そしたら次こそもっとあなたが喜ぶことをしてあげようって思ったら怖くなかった
人生の幸せってものをあなたが私に教えてくれたのよ

だから今日はお礼を言おうと思うの
あなたは私ほど真剣に私たちのことを考えてなかったかもしれないけど
それでもあなたは私の恩人よ
愛してはくれていなかったとしても　夢は見せてくれたわ
この世で一番美しくて優しい夢
私にとってのあなたほど　あなたにとっての私は価値がなかっただろうけど
それでも出会えてよかったわ
私はもう人ごみの中を俯いて駆け抜けたりしない
誰にも笑われないからって理由だけで白いシャツを着たりはしない
怒られたらそうね……やっぱりへこむでしょう
笑われたらそうね……やっぱり傷つくでしょう
でももう生きてることを謝ったりはしないわ
あなたのおかげね
私を強くしてくれてありがとう

次に会ったらその鼻へし折ってやるから覚悟しな

　　　　　　　　（作　なもなも）

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