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夫婦で立ち上げ!家族の“和”を育むNPO誕生秘話|深掘りニスト

このnoteは、中小企業の社長さんに仕事への想いや仕事を始めたルーツを深掘りインタビューするnoteです。

|概要

家族の“和”を育むための様々なイベントを開催しているNPO法人アイルビーワム。代表は家庭教師事業を営む株式会社アイルビーワム代表取締役社長 田中淳吾さん、副代表は田中さんの奥様です。ご夫婦で立ち上げたNPO法人ですが、その立ち上げに際しては教育分野でたくさんの子どもとその親と関わってきた中で感じている田中さんの想いがありました。今回は、NPO法人立ち上げの経緯と今後の活動について深掘りしました。

|子供の教育の一歩目は親が変わること

NPO法人アイルビーワムの前身である任意団体わの活動。この頃から子育て中の親子の支援に取り組んでいる。

ーーー田中さんは家庭教師の事業を株式会社として立ち上げ、その後にNPO法人を立ち上げていらっしゃいますね。まずは株式会社アイルビーワムで行っている家庭教師事業についての想いをお伺いしてもよろしいでしょうか?
 
田中氏:私たちは小学生から高校生を対象にした家庭教師事業を行っています。家庭教師と言うと、とにかく志望校に合格させることがゴールと思われがちですが、実際は違います。私たちが大切にしているのは、子どもをどのように育てたいのか?という親の教育観です。志望校に合格させることが子どもの人生のゴールではありません。大切なのは、受験という一大プロジェクトを家族楽しんで挑戦することで、そのプロセスで得られるこどもの自立心や家族の和です。合格することによって、子どもの可能性は拡がりますが、そのプロセスを犠牲にしがちなのが今の受験の弊害だと思っています。そして、合格の先の希望があるからこそ、その志望校に合格してほしいと親御さんは思っているはずです。ですから、家庭教師のご依頼があったご家庭には、必ず伺って親御さんの人生観を伺うようにしています。人生観と教育観は繋がっていますから。
 
ーーー親御さんの人生観ですか。それは例えばどのように子どもに影響するのでしょうか?
 
田中氏:例えば、お母さんが勉強できる環境を一生懸命作ろうとしている一方、お父さんはもっと自由にさせてあげれば?と放任主義的な立場を取るご家庭は少なくありません。お母さんが過保護でお父さんが放任主義。その間に挟まれた子どもはどうしていいかわからなくなる。でも、この中に誰1人として悪意のある人はいないですよね。親は子のために、子は親のためにどうしたらいいだろうと考えています。ただ、お互いの価値観に違いがあり噛み合っていないだけなのです。過保護と放任、両極端で肝心な“寄り添う”ことができていない。
 
ーーー“寄り添う”というのは子供に対して大人が持つべき姿勢になりそうですね。
 
田中氏:そうですね。教育とは一言で言うと“寄り添う”ことです。例えば、お母さんはお子さんに勉強できるようになってほしいと思っているのですが、肝心のお子さんには「あなたはバカなんだから、ちゃんと勉強しなさい」などといった言葉がけをしてしまうことが少なからずあります。受験に受かってほしいと思っているのに矛盾していますよね。
教育とは “寄り添う”こと。寄り添うとは子どもが何を考え、何を感じているかを心で感じることです。寄り添った言葉がけによって、子供は勉強が面白いと思えるようになり、なぜ勉強しなければならないのかに向き合うことができます。
ところが、親御さんは言葉がけを教わるわけではありません。だから、先ほどのような矛盾した言葉がけになってしまう。親御さんはどうしていいかわからないだけなのです。ですから、実は子どもの教育というのは子どもだけではなくて親も変わっていく必要がありますし、親子で成長していけるからこそ、子育ての意味は大きいと思います。

|教育の根本は『感謝・豊かな心を持つこと・子どもに寄り添う言葉かけ

NPO法人アイルビーワムでは家族で一緒に取り組むイベントを企画

ーーー子の教育のためには親も変わっていく必要がある、という状況に対して家庭教師の事業ではどのように対応しているのでしょうか。
 
田中氏:世の中には「こうすれば教育は成功する」というような書籍などが溢れています。しかし、私自身は教育現場で多くの親御さんやお子さんと接してきて、万人に100%あてはまる正解の子育てなんてないと考えています。それよりも、もっと根本的な感謝や豊かな心を持つこと、そして子どもの心に寄り添った言葉がけが子育ての根幹にあると思うのです。
そこで親御さんが気軽に、ゲーム感覚で子育ての本質を学ぶことができたら、という想いで開発したのが“ieRU”というゲームアプリです。ゲーム内でキャラクターに寄り添ったポジティブな言葉がけをする経験を通じて、実際にお子さんの心に寄り添った言葉掛けができるようになる設計をしています。そして、ゲーム内のポイントでオンライン講座や親子イベントに参加できるようになっています。これは、家族の“和”を育む仕掛けです。
 
ーーー家族の“和”というキーワードが出てきました。これはNPO法人の設立に繋がりそうですね。

 
田中氏:家庭教師の事業では、家族関係が子どもの勉強に影響を与えることを認識しながらも、株式会社である以上は、やはり特定の層にしかアプローチができない。日本中の子育て世帯に対して、もっと家族の絆が深まるような、そんな働きかけができないか?と考えたところ、出てきた答えがNPO法人でした。

|NPO法人での活動は心から求める理想

NPO法人アイルビーワムで行っているゴミ拾い活動の様子

ーーー家庭教師事業の課題から、NPO法人の立ち上げに至ったのですね。
 
田中氏:家庭教師事業での課題感はもちろんですが、実は私自身の体験からもこの事業はとてもやりたかった事業なのです。子どもの頃、私の家族はあまり仲が良くなく、家族は安心して帰ってこられる場所でも、お互いを応援し合える場所でもなかった。もし、嬉しいことや悲しいことをいつも共有できて、いつでも受け入れてくれるような家族だったら、自分はもっといろんなことにチャレンジできていたかもしれないなと思うのです。今、私自身も子育ての真っ最中。だからこそ、自分の家族を含めた子育て世帯には、家族の“和”を育む場所を提供して、家族がチームになる機会をもっと増やしていきたいと思っています。自分の理想を求めているのかもしれませんね。
 
ーーーご自身の理想でもあり、それを目指すことが世の中の子育て世帯への貢献になっているのですから、最高の事業ですね。アイルビーワムという社名の由来をお聞かせ願えますか?
 
田中氏:アイルビーワムは、英語で書くとI’ll be WAM.です。I wll beのIは私、wllは未来・希望・決断、beは在り方・なりたい姿、です。これをまとめて『私は〜になる』。そしてWAMは和(調和)・fam(家族)・マム(母、包容力)・one(個、一体)という意味を込めて『個の自立と調和』という意味です。私の想いを込めました。

|正解の無い問いを考え答える力

ーーーNPO法人の活動で大切にしていることをお聞かせください。
 
田中氏:家庭教師事業でもieRUの活動でもNPOでも『家族が変われば国が変わる』という考え方を土台にしています。
社会に出れば正解の無い問いに対して自ら考え答えを出していかなければなりません。しかし、日本の教育は正解のある問いばかりが教えられてきます。大学入試に正解のある問いばかりが出題されるのです。
一方、教育の先端と言われる北欧では、小さな頃から「あなたにとっての幸せは何?」と言った、正解の無い問いが投げかけられます。だから、あちらの子供達は正解の無い問いに対して自分と向き合って答えを出すことが身についています。実際に、入試にも正解の無い問いが出てくるのです。
教育業界では、大学入試が変われば、高校入試が変わる、高校入試が変われば中学入試が変わる、中学入試が変われば家庭教育が変わると言われています。では、大学入試を変えるためにはどうするか?それは家族が変わる必要がある。つまり、国民の声が必要ということです。
この構造にジレンマを感じていましたが、この“家族”にアプローチできるのが、NPOでの活動だと感じています。正解の無い問いにも自分なりの答えを導き出せる思考力は、幼少の頃から自分と向き合い、自分の思いを知るという経験を積み重ねることによって身に付くものです。家庭での教育は親も変わる必要があるというのは先にもお話しした通り。NPO法人の活動では、学校では体験できない、家族の共通の経験を通じて、親も子も自分と向き合い家族と向き合い、そして一緒に問題を解決していくような体験ができる機会を提供しています。

|NPO法人立ち上げからの家族の変化

NPO法人立ち上げ当初から続く人気の米粉パン教室。親は子の成長がわかり、子は好奇心いっぱいに工作のように取り組める、いくら捏ねても失敗しないパンレシピを採用。

ーーーNPO法人は代表が田中さん、副代表が奥様ですね。NPO法人を立ち上げてから奥様やお子様の変化はありましたか?
 
田中氏:NPO法人を立ち上げるまで、妻は子育てに専念していました。すると、社会との繋がりが限られたものになり、会話をする相手と言えば夫である私くらい。「あなたには会話する相手がいるけれど、私にはあなたしかいない」と言われた時には、胸に突き刺さるものがありました。現在NPOの活動は妻が中心になって動いてくれていますが、とてもイキイキとするようになりました。NPOを通じて交友関係が増え、活動の幅が広がることによって話題も豊富になっています。NPOの活動を通じて、自分自身で動ける時間が増えたのも良かったのかもしれません。
子供達も変化しました。アイルビーワムの活動はもちろんですが、他のNPO法人の活動に子供達を連れて参加するようになったことで、今まで室内での遊びを好んでしていたのが、屋外や体を動かす遊びの面白さに気づいたようです。

|全方よしの里山プロジェクト

ーーーご両親がイキイキと活動することによって、お子様たちにも様々な環境に触れる機会ができ、家族としてとても良い循環になっているようですね。NPO法人の今後の活動をお聞かせください。
 
田中氏:地域と繋がって里山プロジェクトをすることです。日本には、手入れができていない里山が多くあります。持ち主の方が手入れできなかったり、そもそも持ち主がわからなかったりするためです。荒れてしまった里山では猪など獣の被害が出てきてしまいますよね。そこで、里山の整備と教育を掛け合わせた活動を計画しています。里山は、五感をフル活用して感じられることがたくさんあります。例えば、家族で一緒に木を切る体験や整備した場所で作物を育てる経験。自分でやった里山整備という活動が人のためになっていると実感できる体験。里山を整備することで、子供達やその家族が一緒に新しい体験ができ家族の“和”が強くなる、一方、里山は整備されるので周辺に住む方にとっては安心できる環境になる。双方にとってプラスになるプロジェクトです。

◯プロフィール
田中淳吾(たなか じゅんご)
株式会社アイルビーワム代表取締役社長、NPO法人アイルビーワム代表。
二児のパパ。自称教育オタク(ブログ→ https://note.com/jungotanaka/ )
株式会社アイルビーワム ホームページ→ https://illbewam.co.jp/identity/

○インタビュアー
深掘りニスト 飯野真里子(いいの まりこ)
自分では気がついていない自分の魅力、あるいは商品やサービス、企業の魅力を引き出す深掘りサービスを展開中。

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