本郷 あき

小説を書く人になりたいひと。 梁石日『闇の子供たち』 パヴェーゼ『美しい夏』 佐藤…

本郷 あき

小説を書く人になりたいひと。 梁石日『闇の子供たち』 パヴェーゼ『美しい夏』 佐藤泰志『海炭市叙景』川上弘美『真鶴』 中村文則『教団X』 アラン・シリトー『漁船の絵』沼田真祐『影裏』 植本一子作品、坂口恭平作品、すきです。本がすきだ。

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焼身旅行記

 バスの中は込み合っていて、小説を書くことはできなかった。   おそろしいくらい、足の長い中学生か高校生が、足を持て余す形で、左隣の席に座っていた。  くもみたい。  足の長い。くも。いいなあ。私の二倍はある。ほんとうにうらやましくなる。  バスに乗ったのは十分程度で、降りたあたりはわたしの通っていた幼稚園のちかくで(途中で、登園拒否になり幼稚園をやめてしまうのだが!) 懐かしい。  自宅から、そう離れていないこともあり、何光年ぶりに通った!とかではないんだけど、

    • 心証風景

       美容室に行く。とある目的のため。欲していたのだ、おえ、きもちわるい構文、構文には自信があるくせに、改め、目的は、散髪ではない。 いや、すこしだけ、散髪の目的もあったけれど。  わたしは、担当の美容師さんのことが、もとから、大好きで、かわいいし、気取らないし、なんか一方的に勝手に、とてもファンだったのだけど、その美容師さんが推しているアイドルというのが、現在わたしと、家族が熱狂しているアイドルであるからにして、とにかく、会話を求めてほっとぺっぱーパーで予約した。  身

      • たとえば夜は、左利き

        バイトが終わってから、カラオケにでも行って、大音量で音楽をかけて、土曜の夜に一人で部屋占領すんなと、ひんしゅくされても、めげず、カラオケの中で、原稿書いて、泣こうと思ってたのに、バイト先をでた瞬間に、桜が、モノクロで光っていたし、商店街の桜は、大体満開で、今日は、バイトでは、グラスも割って、要領もあいかわらず悪くて、すぐにでも、この地球にむかって、ド阿呆、情けなく泣いてしまおうと、コンジョナシ、まるで、世界と空っぽの決闘している気分、意気地無し、泣かずに歩く、酔客の声だけ道路

        • どこかに、飛んで、凧のように離れてしまいたくてもさ。

          なまえをよばれた。    しかし、ふりむかなかった。    肉色の蝶番、つるりとした突起、わたしのなめくじが、透明に這う。  喜びいさむ舌、勇敢な舌、果敢な味蕾、不格好に変色しつくした、小指の爪。  そのとき、粘膜は蜂起し、わたしのただなかに、ぐいと、押し入る。  ――強盗のように――、蹂躙され、屈服する。  十時七分。つまさきが、痙攣する。  怠惰に糸ひく一対の、ひるの魔物。  時は、撹拌される。  舌禍は、さらぬだにかえりみられず。  体は、孤独な布だった。  楽園がすべ

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        • わすれない
          9本

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          てめえは、のどの奥に、無理強いされて、紙の束で手をくくられて、って、犯罪のにおいもなんにも無臭なのに、わたしの世界は、清潔だから、でも、無理強いって、どこの爺、もしくは、辞意、どんなマニフェスト、全部「す」のせいだ。あれができてから、近所の人口の半分が、「す」に消えた。  いつだか、つぶれたコンビニの跡地が、急に飾りたてられ、ポスターや、幟の準備がはじまった、いつだか、わたしが、酸素カートを引いて、日除けの帽子をかぶって、静かに歩いていたときだった。 「す」の会場は、

          遠出

           さして、うれしくない用事があり、早退する。 札幌は、気温も高く、しかし曇り空。小学生の下校時間に重なり、窒息しそうになる。バス停まで、いつも通らない急な坂を通る。左側は原生林が残った緑地になっており、数年前、よく残業していた頃、意味もなく、森をひとりで抜けて帰った。スマホのライトにですら、驚くような暗闇のなか、虫の声や、葉の間から見える、物憂げな夜空をみて、何度も何度も、救われたいとか、期待はずれなことばっかし思っていた。  向かいがわに、リサイクルの工場や、アパートが立ち

          春の遺影

          夜セブンイレブンへ。いこうと思ったら、やっぱセコマへ足がのびる。切手を買いに。 春の遺影という詩を、札幌で文芸誌をやっている三神さんへおくる。締め切りは落としてしまった、やむおえず。 わたしにとって、幾重にもくるまれた贈り物のような辛い出来事が、どこからか贈られて、しんしんと、漬け物みたいに落ち込んでいる。 今月に入ってから、どうも黒い背景を無理やり蛍光色で塗りつぶしたような日々で、限界マックスばりかたな日々。その間に、常に夢中になっているアイドルのことがむねのなかに、と

          ハイウェイの鬼

           頭部のあたりが渋滞している。春はささくれだ。夕刻の光る城、影の網代、はあ、いきぐるしい、それに、心臓がおかしくなりそうだ、もうとっくにおかしいのかもしれない。  でも、波打っているから、わたしは生きてるさ、わたしは自分の臓物を、自由に操れやしないけど、息ももしずらいし、今月いつかの帰宅途中、わたしはバスを降りそびれるくらい、時間泥棒のインスタグラムに目んたまと心をまんまと奪われ、これで小説なんてかけるんだろうか、小説を書いて、完成させない人生なんて、わたしの人生じゃない

          ハイウェイの鬼

          ひょうはくされた愛

           君のうなじ、ピンク色の、産毛の絨毯、蟻のたちの行軍、灰の小川が流れる、悠久のハミングが、風に乗って近づいてくる。ル、ル、ル、折り紙の太鼓鳴る、ト、ト、ト、首をはねられるのは、君の恋人たち、喜んで、細い雁首、まな板の上にたむける、彼らも、嬢ちゃんも、Oさんも、IHさんも、工作員も、五右衛門も、はなさかじいさんも、先生も生徒も、拍手喝采雨霰、ぞぞぞ、わたしは、黄金の斧をふりあげ、叫ぶ、おおおおお、「無情かな」  春の嵐、桜吹雪、うたう、緑の孤独な木々、スマートホフォン震え、ポ

          ひょうはくされた愛

          瞳孔に咲く花

          発酵した月。昨日撮影したものだ。 最近では、身辺雑記よりも思いついた言葉をつづっていることが多いのだけど、今日は日記。しかも、わたしは、有名なSというコーヒー店で、ポメラを広げているというわけだ。なんて、ありきたり。  こんな、素寒貧のわたしが、こんな贅沢を謳歌しているわけは、退職してしまった同僚がわたしにSコーヒー店で使用できるギフトカードを送ってくれたからである。  このような場所にきて良いのだろうかと想ったし、昨今の世界平和などを考えると、複雑な心境だ。でも、ギフト

          瞳孔に咲く花

          乱雑な午後に

           内側からあふれる、水の鼓動、わたしの胸元、ネックレスのすばやくゆれる鎖のあいだ、ひざこぞの骨、湾曲した足首から、大地につたうとき、麓の街路樹は枯れ、にぎわい通りの看板は、いかがわしい灯りをおとし、黙祷をささげる。  わたしのひまわりは、けむりにむかって、黄色い花びら輝かせ、木々は、とっくに閉経してるから、傷ついた梢を空気にのばす、黒鶫がさえずる、ガラスの葉が、風もないのに揺れる、もしかしたらこれは夢、夢なのかもしれないひまわりも、だからなに、わたしのひまわり、著名な映画

          乱雑な午後に

          戦闘する君よ

           週末、チャコが、カローラで現れた。 チャイルドシートに、伊津見君は乗っておらず、かわりに、ばかみたいなでかさの茶色いぬいぐるみが、苦しそうに笑っていた。  伊津見くんと、会ったのは二ヶ月前で、その時はチャコに回転寿司を奢らされた。チャコは長いつけ爪をカチカチいわせながらタッチパネルでイクラと赤貝ばかりオーダーし、伊津見くんは、〆鯖や小鰭を食べ、あんみつを目の前にして、目を輝かせた。最後はプリンではなく茶碗蒸しをデザートとして注文した。結局最後まで子供らしいものは頼まず、「

          戦闘する君よ

          ショウビズにもってこいの一日

          あへんが手に入ったと、金児美登里から連絡が入る。 あへんをすったことは、勿論ない。吸ったことがあるのは、煙草くらいで、煙草は、合法で手軽である。アポなしで、美登里の部屋を訪ねる。二階建ての階段がきしむアパート。どうみても、城ではないのに、シャトー南町コーポと名付けられた、美登里の部屋を訪ねるとき、わたしは、いつも、『都落ち』という言葉を思うが、とても失礼だろう。  昔、兄の部屋に忍び込んで、小銭をくすねていたころ、――高校生のころだった。兄は日雇いの人夫で、日中は不在だった

          ショウビズにもってこいの一日

          きよは、今、日、はっきょ、う、は、

          今日は久々に図書館へ寄り道。 文藝春秋の芥川賞号を読んでる途中だけど、乱読したくなって寄り道。これが、乱行なら、問題行動、蘭香ならかぐわしく、らんこう、って、変換すると「卵黄」もでて来る不思議。 建物内に入る前に、ネットで予約の図書が届いているか確認。植本一子の順番待ちなのだ。愛は時間がかかる。 ほんとそう、ともいえず、愛とはなんなのかのおさらいから求む。 三枚のカードを順にログインする。するするする。すると、なんと延滞していることが発覚。 石井光太の、物乞う仏陀。わ。 最

          きよは、今、日、はっきょ、う、は、

          あらゆるわたしの、春の呼び声

          肥溜めにおちたくらい、真面目な性質ゆえ、アルバイトの居酒屋のメニューの暗記表をつくって、もっていってたら、「まじめか」と言われて、そうですわたしは、真面目なんです、とかのやり取りしてるうちに、だんだんと仕事を覚えて、纏わせる煙やたばこの匂いも、なんだか勇者のマントみたいに感じる誇らしさをぶらさげ、帰途。日曜日は、皆さん居酒屋らないみたいで、客足乏しく、早めに上がらせていただき、蒸発して湯気をあげたアスファルトの黒々しさに、春を請う。 家族のことで暗礁に乗り上げていたり、自分

          あらゆるわたしの、春の呼び声

          うみに、惑う。

           もぐって、そこの、あんた、他人の性別ぶら下げた、そこのあんた、体のまんなか、どうかよう、お願いよう、もぐって、奥深く深海まで、真意を問いただして、わたしの壁という壁の、剥がれた塗装を刷毛で。 どうか、おねがい、潔白よりも、尊いもの、だってわたしの体は流星よりも美しいし、わたしの子宮に貫かれた、燃料炉であたためられた、人肌のやさしい鉄の棒。 そのうち海に、わたしの涙とか悲しみとかの液体が、放出され、公務員として分類されるやつらに、計測されるから。心配しないで、あなた、優しいあ

          うみに、惑う。