ヘンバーガー男爵

ともかくパティをバンズで挟め

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最近の記事

カイナン

道はどこかへ続いている。 ある場所からある場所へ、それがどんなに辺鄙な場所だとも、いつか誰かが行けるように続いている。 けれど、道はどこまでも際限なく続いているわけではない。 一見するとどこまでも続いていそうだけれど、実際に歩いてみるとわかる、必ずどこかに終わりがあって何かにたどり着く。 これは絶対的にそうだ。 でも、目に見える道の全てを歩ききる事はできないし、ある道がまた別の道へ繋がっていたりするので体感的には無限に思える。 道とはそういうもので、私たちはそんなふうなのだ。

    • 国司、在任期間の在国について不明、お上の指示を賜りたく候

      今更になり人生の事、今までの私と今後の私について考える機会か増えてきた様に思う。 私は、実のところ最近現れたので、私の歴史の中は殆ど僕が占めている。なので時系列的には僕の歴史の最新場面に私が登場したというのが正しい。 さて、私はここ数年同じ悩みを先送りしてきた。当初はささやかな悩みだった、それは計画された事であり、その計画についての不審というぐらいだったので気を紛らわせれば心配する事はなかった。 幸か不幸か、私は忘れっぽく色々な事をしっかり忘れられる。社会で生きていくに

      • 生活経営独白①

        遠くの事について話そう。 あれは、まだ僕がこの辺りで有力な同盟者と協調関係にあった頃、その頃は今よりもずっと外交的だったので、心の往来がよくあった。 もちろんそれは今となって影も形もないので、時限的であったわけだが、ともかく今とは違っていた。 あの頃は同盟者は数人いて、生活上に登場する頻度もままあった。 彼ら彼女らは、まったく全部の好みが一致しているわけではなかったし、それなりに細かな政治的な腐心も必要としていたけれど、それでも定期的な往来と、売り買いがあり賑わいがあった。

        • 最近のこと

          ここ数年、私の生活はかつてない好景気の最中にあった。 ひょんなことをきっかけに、本来は降下してこないような幸福が続け様におき、お腹も膨れてぐっすりと眠れるようになったのだ。 毎日の労働もそのけたたましさをすっかり潜めていたし、退屈で仕方なかった休日も楽しみになっていき、生活の前後にある諸々の嫌々は、全部が中和されていたように思う。 けれど、傲慢さというのは留まるところを知らないらしく、どうもつけ上がりはじめた。 それでも最初のうちはまだ良好で、感謝を忘れなかったり、想像する

          2181年の戦役

          同盟はその効力を停止し、その機構自体も解体されることとなった。この実行におけるプロセスは同盟両者の同意とそれに基づく理解を必要としない、それは禁止が明文化されていないという事でなく、この同盟の最も基本的な特徴だと言える。 つまり、プログラムに沿った順路通りというわけであるが、これは紛れもなく破綻だ。 実の所この同盟は随分前にそのプロセスを歩み出した、だがその後プロトコルの進捗は鈍化し、一時停止したかのように見えた。 正直に言えば、攻勢限界だと思っていた。進軍のスピードに補

          あの頃を思い出す、壮年の盆休み

          中学生の頃、来る日も来る日も部活動があり、春夏秋冬、雨風熱波関係なく練習をしていた。 人間は偉いもので、そんな生活も半年もやると慣れてくる。 今にして思えば、毎週の遠征で弁当を作ってくれたり、様々な消耗品を嫌な顔ひとつせず買ってくれた両親は偉人と遜色ない。 定期の休みは、お盆と正月の各5日程度で、今ならやり過ぎだと思うが、なぜか当時は不思議と気にならなかった。 結構素直な少年だったのだろう。 今にして思えば、両親が日程表を見るたびに怪訝な顔をしていた気がするが、運動に打

          あの頃を思い出す、壮年の盆休み

          太守、帰国候

          ニンゲンのバランスはとてもむつかしい。 何かが十分になるまで、ひとしきり努力すると、かえってその十分がいつか手を離れるのではないかと大いに悩む。 私たちの悩みは、往々にして生活の敵であり、悩みをどうにか忘却の淵に追いやろうと手を尽くすわけだ。 けれど、その手立ての中で最も一般的な方法である充足は、不安定であり、今この瞬間はそうであっても、明日にはそうではないのかもしれないという考えがずっと纏わりつく。 何かを遠ざける為の方策として、遠ざけたいその物を自身のうちに飼わねばな

          同盟における弁論

          私にとって、同盟は最重要の項目になっていたらしい。 同盟は、互いに了解したいくつかの決め事を遵守し、かつ互いの権益を保護する義務に基づく。 けれど、そういった事は明文化されているわけではない。 それは、この同盟の本質的な弱さであるわけだが、一方で、暗黙のうちに了解される事が、不履行になるわけも、するはずもないという意思が明確にあり、それが存在する程度には互いを行き来していたという事でもあるのだ。 私たちは、互いに権益を持ち、その権益に対し多額の投資を行う事で、引き換えに

          同盟における弁論

          お久しぶりでござんす

          この前、久しぶりに映画を見た。 ここ数年ロクに映画を見れていなかったのだが、久しぶりの映画はとても良かった。 映画のジャンルは、アニメ映画だったのだけど、登場人物の表情の微妙な機微が正確に書かれている気がして、見終わった後に色々な場面について考えを巡らせる事ができた。 映画に限らず映像は、見る側の見るスピードに関わらず、どんどん進んでいく。 僕は、見るスピードも、見た物事について考えるスピードもはやくないので、どうも画面の大きな一枚絵に圧倒されてしまう。 なので、僕がせいぜい

          お久しぶりでござんす

          永見原市臼杵15-6

          ダ・コーネル。 看板にはそう書いてあり、縁がガビガビの電球でささやかに飾られている。冬になると、この店は閉まってしまう。 つい三年ほど前まではそんな事なかったのだが、去年も一昨年もずっとそうなのだ。 理由はわからないが、おそらく店主の都合だろう。店に入った事はないので詳しくは知らないが、何度か店から出てくる姿を見た事がある。 見た目はどこにでもいるおじさん、というよりはお爺さんに近い見た目で、小柄でやや背中は曲がっている様に見える。 おそらく、この店の寿命も残り少ないのだろう

          段階的標榜

          たちこめる暗雲は、どれも同じ色なのだろう、敗北の味はどこでも一緒なのだろう。 時間をやり過ごし、まだ見ぬ幸福の到来を予感しながら生きていく。 一週間うち5日間はしこたま労働に従事し、時間を生活資金に変換していく。 残りの2日間はただ泥の様に寝たり、寝転びスマホと睨めっこをする。 私は、不幸ではない。 嘘ではなく、不幸ではない。 私にはまだ幸福になれるだけの物資があり、見通しもある。 私は不幸ではない。 なぜなら物資があり、それを積載するだけの容積を有している。

          ありゃりゃ

          持久走は、どうせ周回遅れになるので、ロケットスタートをキメよう。 不思議と周回遅れになるより、一瞬でも1番になる方が恥ずかしかった。 恥ずかしいとは本来こういうものなのかもしれない。

          おひとりさま

          形はわからないが、何やら鼓動するしている黒い塊がゆっくりと、そして不規則に動いている。 目を凝らしても、ところどころ光を反射するばかりで全体を掴めない。 けれど、鼻の奥を通り抜けるこの匂いは、真っ赤な太陽の下、騒ぎたてるセミ達の合唱と共に香ったあの匂いだ。 あの頃も確か、この一面と空との境がサッパリ分からず、不思議な地続きで空の雲が落っこちないか心配になったものだ。 今も、この一面は空とくっついてるようだが、何もかもあの頃とは違っている。 抱く印象も、見え方も、僕も、何

          あさ

          びっくりするほどにシンプルな朝。 乱暴に手のひらで擦りながら開く目、そこに飛び込んでくるのは残然とした部屋。 そう、僕の部屋である。 引っ越してはや3年がすぎる激安賃貸は、すっかり荒れ放題になっていた。 ペチャンコなひしゃげ布団で、何度寝かをかましただろう僕は、昨夜計画していた優雅な朝が失われた事に気がつく。 この眩しさを想像するに太陽の日が随分と高く、日差しが強い。 念のため確認をするべく、枕元にある手のひらサイズの目覚まし時計に手をかける。 定まらない視点に苦戦し