42歳一独身公務員の旅行記(インド編)②「北京」
「ついたよ」
スーツの男に言われ、ワゴン車から降りた。暗くてよくわからなかったが、辺りにはまばらに高い建物が並んでいた。目の前には10階建てくらいのホテルが建っていた。
ビクビクしながらホテルに入る。パッと明るいロビーが現れた!清潔だ!まともなホテルだ!良かったよ!フロントのお姉さんもどう考えても優しい雰囲気で、僕は胸を撫で下ろした。
伊丹から北京にきただけではあるが、けっこうくたびれていた。ホテルの名前も覚えていないのだ。北京空港近くのホテル、としかわからない・・。後、室内のトイレがガラス張りで丸見えだなーと思った。湯加減調整の仕方がよくわからぬシャワーを浴び、気を失うように眠った・・・。
翌朝。ホテルにはなんとバイキングが用意されていた。さらにフロントの方に聞くと空港まで車で送ってくれるという。すごくいいホテルじゃないか!
朝6時。ホテル出発。ワゴン車で北京首都国際空港に向かう。窓からの景色。空が青い。昨日は暗くてよくわからなかったけど、ポツポツと、建物が立ち並んでいる。朝日を浴びてオレンジがかった建物も、なんかよくわからないオブジェも、プラスチックのおもちゃみたいだった。何だろう。自分は35歳一独身公務員にかかわらず、何やら冒険家にでもなったような気分。
空港について「サンキュー」運転手さんにかっこよくお礼を言い、別れた。一人旅再開だ。
上海浦東国際空港に向かう。搭乗手続きをすませる。90番ゲートに向かう。
ちなみに荷物チェックをする際、ヘアジェルが液体物で持ち込めず没収されてしまった。交渉しようとしたが一蹴されてしまった・・。
出発まで時間があり、待合室のベンチに座った。
前に、日本人らしき若い20歳くらいの男の子達が3人で座っていた。いかにもヤング、て感じで、何やらイケてる感じ。20歳でインド旅行かー。やるなあー。僕など20歳の時は浪人しててずっと速読英単語読んでたけどなあーとか考えながらぼんやり彼らの後ろ姿を眺めていた。
搭乗時間がやってきた。ベンチから立ち上がった時。4人組の1人のパーマの男の子が声をかけてきた。
「あ、お兄さん日本人ですよね?一人旅ですか?」
「えっあっ はい、まあ一応、ひとり旅、です、」
ビックリして吃ってしまう・・・。
「ひとり旅!うわーめっちゃかっこいいですね!自分らインドいくんすよ!」
パーマの男の子は顔をクシャッとして笑った。人懐っこい子犬みたいな笑顔だ。モテるんだろうなー。
「あ、僕もインドにいくんですよ」
「えーっ!マジっすか!めっちゃ偶然ですね。また会うかもですね!」
手を振って彼らと別れた。
思わぬヤングとの交流に、根が至って寂しがりにできている自分としては思わず頬が弛む。胸が弾む。
「ええやん。エエヤン。ああーなんかこういうちょっとした旅先の会話ってイイヨネー」
ニヤリと僕は1人で笑う。ちょっと、不気味に。
そうして飛行機は上海に向かって飛び立つのだった・・・。
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