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「読書感想文課題図書(中学校の部)」 FIKAのブックトーク#7

こんにちは、FIKAです。
毎回1つのテーマで数冊の本を紹介しています。

今回のテーマは「読書感想文コンクール課題図書(中学校の部)」です。

仕事柄毎年読むのですが、これを読むと夏だなあと感じます。
中学生向けの本ですが、今の時代を反映した小説やドキュメンタリーは大人が読んでも面白いです。




「ノクツドウライオウ」 佐藤まどか

不思議なタイトルですが、これは看板の文字です。
上段に「ノ靴」、下段に「堂来往」とかかれているので、小学生は左から右に「ノクツドウドウライオウ」と読むけど、本当は靴ノ往来堂くつのおうらいどう」、四代続く老舗の靴屋です。

中学生の夏希はこの靴屋の孫娘です。祖父が作る地味なオーダーメイドの靴じゃなくて、もっと可愛くて新しい靴を作りたいと夢見ています。
でも靴作りは難しいし、お客は減っているし、虫の好かないクラスメイトの宗太が祖父に弟子入りを志願するなど悩みは尽きません。

でも夏希は、お客の足にぴったり合う靴を作る祖父の凄さに気づくようになります。祖父の靴を履いたお客は「まさか自分の人生がたった一足の靴で変わるとは思いませんでした」と言うのです。

進路に悩む中学生の姿を等身大に描く青春小説ですが、「足は第二の心臓」だからこんな靴屋が近くにあったらいいなあと思いながら読みました。



「希望のひとしずく」          キース・カラブレーゼ

古いボードゲーム、靴下で作ったサルの人形、おもちゃのピストル、手づくりのキルト、消火器、お絵描きセット…

屋根裏部屋に残されたこれらのガラクタが町を救うんです

田舎町クリフ・ドリーは不景気で活気が失われ、大人も子どもも将来に希望が持てず鬱屈して暮らしていました。
ところが、町外れの願いを叶える井戸に3人の中学生がやって来た時から町は大きく変わっていきます。

それぞれのガラクタが呼び水となって、ある出来事が起こったり、人と人が出会ったり、ピンチを救ったり、新しい事を始めるきっかけになったりします。こんなガラクタが何の役に立つんだろうと思っていたのに、魔法のように物事がどんどんいい方向に進んでいくのです。

でもそれはあくまできっかけにすぎません。好循環を作り出す中心にいるのは井戸を見つけた3人の中学生です。恋や友情や進路に悩んだり傷ついたりしながらも誰かのために何かをしようと頑張る優しさがガラクタによるきっかけを「奇跡」に変えていったのです。

希望と再生の物語でもあり、いろんな伏線やエピソードが見事に回収されるエンタメとしても素晴らしい作品でした。



「アフリカで、バッグの会社はじめました」 江口絵理

アフリカでバッグの会社を作った女性のドキュメンタリーだから、バリバリのビジネスウーマンか、もしくは手芸が大好きで趣味が高じて起業したかのどっちかなと思ったら、どっちも違った!

仲本千津さんは人の命を救う医者になるのが夢でしたが、理系科目が苦手で断念します。その後、国連で働きたいと思ってボランティア活動をしたり、大学院に進んだり、銀行に就職したり、紆余曲折の末アフリカに渡り、アフリカの布を用いたバッグの会社を起こしました。

ずいぶん行き当たりばったりに見えますが、実は彼女のやりたいことはずっと変わっていません。「貧困をなくす」ことで「人の命を救おう」としているのです。

千津さんの会社で作るバッグは、カラフルな色で質も良く日本の顧客の評判は上々です。一方、現地のバッグ工場は貧困に苦しむアフリカ女性にとっては安定した収入を得られる雇用の場です。さらに働きやすい環境を整えようと千津さんは奮闘します。

現地の人に寄付を施すのでなく、お互いにとってWIN WINな関係性を構築する、これこそ千津さんが学生時代に所属していたボランティアサークル「テーブル・フォー・ツー」の考え方でした。

「人の命を救う」という大きな目標に向かって、寄り道が多めでも自分の夢を実現していく千津さんを応援したくなります。バッグも買ってみたいなあ…



以上、3冊の本を紹介しました。
来月は高校の部の課題図書を紹介したいと思います。

読んで下さってありがとうございました。


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