「旅先で読みたい本」3選 FIKAのブックトーク#30
こんにちは、FIKAです。
毎回1つのテーマで数冊の本を紹介しています。
今回のテーマは「旅先で読みたい本」。
移動中の乗り物の中。
宿でほっとくつろぐ時。
見知らぬ街のカフェでオーダーを待つ間。
皆さんならどんな本を読みたいですか?
私はこんな時、エッセイを読むのが好きです。
という訳で「旅先で読みたい本」あらため「旅先で読んで面白かったエッセイ」にテーマを変更して3冊の本を紹介したいと思います。
「ポーカー・フェース」 沢木耕太郎
沢木耕太郎のエッセイの魅力は、何と言っても縦横無尽に展開していく「語りのマジック」です。
日常のこと、旅のこと、昔の思い出、本や映画やお酒について…
ひとつの話から別の話へ軽やかに移り、とりとめのない連想を綴っているようで、ふと気がつけばタイトルの話になっていて、実は一貫したテーマがあったのだと気付かされる語りはまさに魔法。
軽妙洒脱な短編小説を読んでいるようでもあり、深遠な人生哲学と向き合っている感じもします。
こんな魔法のようなエッセイは沢木耕太郎にしか書けないよなあ…
「旅ドロップ」 江國香織
一編わずか3ページ。
読みやすくて楽しい様々な「旅」に関するエッセイです。
若い頃、友達と行った初めてのパリ
70代の母を連れて行ったプーケット
日帰り旅行における時間と空間の感覚
旅先で降る雨
早朝のニューヨークの風景
長崎のスナックで見知らぬ人たちとカラオケで歌い明かしたディープな夜
北海道の美瑛で見たキタキツネ
ロシアで飲んだ紅茶の美味しさ
登山列車用に傾いたコップを始めとする旅のお土産品
そして物語の中で描かれるいろんな「旅」に至るまで、江國香織の筆は読者を果てしない旅の世界へ誘ってくれます。
冒頭に置かれた、旅がテーマの三編の詩もすごくいいですよ。
「遠い太鼓」 村上春樹
エッセイの冒頭に置かれたエピグラフのように、ある朝遠くから聞こえてきた太鼓の音に誘われて村上春樹は日本を離れ長い旅に出ます。
本書は1986年秋から1989年秋までの3年間に及ぶギリシャ・イタリアへの旅を日記風に綴った旅行記です。
…いや、「旅」ではないでしょう。生活と仕事の拠点を日本から移し奥さんも伴っている時点で、それは「旅」ではなく「移住」と呼ばれるものだと思います。
でも、本書が醸し出す雰囲気は「旅」なんですよね。ローマを拠点に、地中海のスペッツェス島、ミコノス島、シシリー島に移り住み、ロンドンに滞在したり、オーストリアを訪れたり、時には日本に戻ったり…移住というよりはやはり旅のようで、それぞれの土地で感じたことが綴られます。
地中海の島の人ののんびりした生活、シーズンオフのリゾート地の様子と秋の嵐、南ヨーロッパのジョギング事情、ギリシャで迎えた復活祭、美味しい食べ物や奥さんとのケンカ、小説家の一日や創作論、イタリアの駐車事情、郵便事情、泥棒事情…
異国の暮らしの中で、村上春樹が何を見て、何を思い、何を感じたのか。何を失い、何を得たのか。
わかったようなわからないような感覚は、なんだか旅を終えた時の気持ちとよく似ているような気がしました。
以上、3冊の本を紹介しました。
読書を楽しみながら、ふと顔を上げるとそこにはいつもの日常とは違う旅先の景色がある…それって最高の読書シチュエーションの一つだと思いませんか?
読んでくださってありがとうございました。
(おまけ)普段は週1の投稿ですが、10月27日から11月9日の「読書週間」は2週間連続投稿にチャレンジ中です。よかったらお付き合いください。(読書週間第10日目)