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一遍上人をたずねて。

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一遍上人の踊り念仏について、調べたことや思ったこと、考えたことなんかを気ままに綴っています。
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2023年10月の記事一覧

一遍上人をたずねて⑤

一遍上人をたずねて⑤

 一遍上人によって流行したとされる踊り念仏は、のちの盆踊りや伝統芸能に影響を与えた。

 と、するのが一般的な紹介である。しかしながら、どうも私には違和感しかない。この違和感は一体なんなのだろう?

「一遍上人の踊り念仏」というならば、その踊り方の手順や音楽について、取り扱い説明書的なものがあってもよさそうだが、どうもそういったものは一切ない。私は元々西洋音楽を学んだ人間で西洋音楽にとって楽譜は

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一遍上人をたずねて④

一遍上人をたずねて④

 一遍上人よりも前、朝鮮半島で踊り念仏を広めた人物がいた。

 元暁(ウォンヒョ)、日本では、「がんぎょう」もしくは「げんきょう」とも呼ばれている。7世紀の統一新羅時代に朝鮮仏教界で活躍した僧で、日本では「無量寿経宗要」の著者として知られている。

 元暁は、華厳宗の僧侶でありったが晩年は破戒僧となり、俗服を着て小姓居士となのり、芝居道具であった大瓢で遊び道具を作って、これを持って念仏を唱えながら

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一遍上人をたずねて③

一遍上人をたずねて③

 平安末期から鎌倉時代にかけて仏教にかげりが見え始める。いわゆる末法思想というものである。それはそのはずで、比叡山延暦寺では貴族や朝廷の相続権を持たない子どもたちで溢れ、権力社会が横行し、ヒエラルキーができる。真言宗金剛峯寺でも、空海が作り上げた思想をツールとしてただ振りかざすだけで停滞し、衰退が始まる。

 そんな中から新しく出てくるのが鎌倉真仏教と呼ばれるもので、法然の浄土宗、親鸞の浄土真宗、

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一遍上人をたずねて②

一遍上人をたずねて②

 一遍上人の踊り念仏とは、一体どんなものであったのだろう?私の興味は、その一点に絞られた。

 色々調べていると、湘南工科大学の長澤可也という教授が面白い報告書を出しておられた。一遍聖絵を元に踊りの順番を3DのCGで復元するというもので、聖絵は踊りの手順が記されたものではないかということであった。非常に興味深い。

 しかし、私にはどことなく言葉にできない違和感があった。一遍聖絵は、一遍上人が亡く

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