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知の学びを創造する者
2024年2月23日 00:20
〈あらすじ〉1999年12月末。自分の部屋から忽然と姿を消した当時高校2年生の青野優(あおの すぐる)は研究者の父が開発した時間基盤を使い、未来へとタイムスリップした。偉大な研究者であった父だったが研究所の爆発事故に巻き込まれ、2年前に他界。父が残した時間基盤で見える未来は7回までとなっており、時間基盤は2000年4月に記録が途絶えていた。それから23年後の2023年。青野の担任であった私と
2023年4月16日 22:58
2000年4月某日海の音が聞こえる。「先生、今までありがとうございました」「僕は先生と色んな話が出来て良かったです。これが最後の言葉になると思います。僕は空白の3ヵ月間を過ごしました。先生は言ってくれましたね。『青野は、落ちこぼれなんかじゃない』って。あの言葉、忘れません」「母さん、僕を育ててくれてありがとう。弟の悟へ、今まで兄さんらしいことは出来なかったけど、10年間を一緒に過ご
2023年4月10日 17:33
「どうして?」私は少し間を置いてから、彼に尋ねていた。「無駄じゃないですか、どれだけ立派になったって。人間はいつか死ぬ。父さんは事故死なんかじゃない。殺されたんだ」「殺された?」「正確には研究だけさせられていた。研究の成果は全部、組織の人間に奪われて爆発事故に巻き込まれた」「なんで、それが分かったの?」「父さんの携帯を見たから。これ以上は何も言えない。もう帰ってよ」そう
2023年4月7日 23:12
1999年4月某日「先生、今日はお越し頂き、ありがとうございます。さあ、中に入ってください」初めて家庭訪問に伺ったのは、夕日が落ちる頃だった。「遅くなりまして、申し訳ありません。優さんはいらっしゃいますか?」彼の名前は、青野 優と言った。「ええ、息子は居るのですが、トイレとお風呂以外はずっと部屋の中に籠りっきりで」「そうですか。御飯は食べられていますか?」「はい、御飯は
2023年4月4日 00:25
エピローグこれから書く物語は私が彼に最初に出会った24年前の話である。私はこの物語を書かずに胸の内に留めておくつもりであった。しかし、当時17歳だった彼は予言をしていた。「先生は、2023年に小説を書くよ」これは私にとっての宿命であり、まだ、この物語の始まりに過ぎなかったのだ。第1章 彼について1999年12月末、彼は自分の部屋から忽然と姿を消した。当時は世紀末で街