文豪が綴る心震わす言葉を飲みほして。日本近現代文学作品イメージティー
ひとりの本好きが「すきとおったほんとうのたべもの」の具体化に挑戦してみました。
作家が紡いだ言葉が、まさしく食べ物が如く体を構築する感覚を、もっとダイレクトに感じることが出来るイメージティー。
みなさま、こんにちは!
歴史と読書が好きなミュージアム部プランナー・ささのはです。
突然ですが、みなさまは以下の文を読んだことはありますでしょうか?
これは『銀河鉄道の夜』などで知られる宮沢賢治によって、『注文の多い料理店』の序文として書かれた文章の一部です。
賢治は自分が見たものを「きれいなたべもの」「きれいなやきもの」とも称し、自分が書く話はすべてそういった「うつくしいもの」から生まれたのだと言います。そしてこの文は、最後、このように締めくくられます。
物語が食べ物になる。
作家が書いた物語が、読んだ人を構築する一部になる……。
本と言えば読んだ人に大きな影響を与えることができる、いわゆる「人生を変えるアイテム」の筆頭。
かくいう私も様々な作家による言葉をまるで食べ物のように摂取し、影響を受けて育ちました。面白い物語を読み終えてパタンと本を閉じるとき、自然とため息が出、満腹感にも似たものを感じることすらあります。
とはいえ、これは目に見えない大変感覚的なもの。
作家が紡いだ言葉が、まさしく食べ物が如く体を構築する感覚を、もっとダイレクトに感じることが出来たらいいのに……。
何より私がそれぞれの物語から感じ取った、宮沢賢治がいうところの「すきとおったほんとうのたべもの」を具体化してみたい!
そんなことを考えたプランナーが日本の近現代文学を4作品選出し、各作品に登場する印象的なモチーフや、それぞれを象徴する色から連想したイメージティーを作ってみました。
早速ですが、イメージティー及び作品のラインナップと、着想元になったモチーフたちの紹介をさせていただきます!
〈中島敦著『山月記』× 虎に還るように色が変化するお茶〉
中島敦著『山月記』に描かれた、「虎に姿を変える李徴と、別れの夜明け」をモチーフにしたジャスミン香る青いブレンドティー。レモンを入れると、お茶の水色が青色から赤紫色に変化します。
表紙側には満ちていく月に向かって咆哮する虎の「李徴」を描いています。
中国が舞台のお話なので、中国の切り絵・剪紙テイストを感じられるデザインに。
裏表紙側は、李徴が立ち去った後の風景。
白く光を失った残月がただ、静かに空に浮かびます。
《物語をもっと楽しむために…》
蜂蜜を入れたカップに、ジャスミンが香る青いお茶を注いで。ストローなどで吸ったレモン果汁をそっと蜂蜜部分に注ぎ入れれば、人間が虎に変身するが如く、ふわりと夜明けの空の色に変化します。カップのふちには、残月のような輪切りレモンを添えても素敵です。
〈高村光太郎著『智恵子抄』× 天のものなるレモンの紅茶〉
高村光太郎著の詩集『智恵子抄』に綴られた一編・レモン哀歌よりイメージした、「わたしの手からとったひとつのレモン」をモチーフにした紅茶です。
表紙側には高村光太郎の妻・智恵子が恋焦がれた、彼女の故郷にある「阿多多羅山」と、その上に広がる「ほんとの空」を。
また、トパアズの香りを漂わせるレモンをデザインに取り入れ、思わずはっと目が覚めるような爽やかな色合いにまとめました。
裏表紙側は病床の智恵子が作った「切り絵」をテーマに、二人の出会いを象徴する花・グロキシニヤで飾りました。光太郎のアトリエを訪ねる際に、智恵子がグロキシニヤの大鉢を持ってきたと光太郎は書き残しています。
《作品をもっと楽しむために…》
香りがはじけるように立ち上る、新鮮なレモンをトッピングして。まるで自身の半身のようにも思える大事な人と、一緒の時間を過ごしたい。そんな時におすすめなアレンジです。
〈室生犀星著『蜜のあわれ』× 燃えている金魚のように赤いお茶〉
室生犀星著『蜜のあわれ』に描かれた、「誰より大胆で無邪気な金魚の女の子」をモチーフにしたフルーツハーブティー。金魚のように赤い水色が目を惹きます。
表紙側には金魚の赤子が夢見る「たくさんの金魚のお友達との暮らし(そしてメダカ!)」と、飼い主である小説家のおじさまのお遣いで買おうとした「赤いのや青いのが雑っている鬼みたいに大粒の金平糖」をデザイン。
作中で「大胆で無邪気」と称された金魚の少女をイメージした、明るくポップな色合いでまとめました。
裏表紙側には、赤子と幽霊の女性の邂逅にまつわるモチーフを。
赤子が腰かけていた石の塀に、厳しい冬の訪れを告げる白椿。
そして幽霊の女性がかつて持っていた壊れた時計は、二人が出会う「ふたすじの道」がある時刻・5時を指します。
《物語をもっと楽しむために…》
よく冷やした赤いお茶に、著者・室生犀星といえばの果物・あんずや、林檎やベリーを加え、フルーツティーにするのもおすすめです。色とりどりな果物と一緒に、真っ赤な金魚・赤子のはじけるような魅力をお楽しみください。
〈江戸川乱歩著『孤島の鬼』× 宝石より魅力的なチョコレートの紅茶〉
江戸川乱歩著『孤島の鬼』で描かれた、「最初の事件解決の鍵を握ったチョコレート」をモチーフにした紅茶です。
表紙側には、事件の犯人を探し求めてたどり着いた島にある古井戸と、そこから入ることが出来る暗い横穴が。
主人公たちの道しるべにもなる太い麻縄は、無情にも誰かの手によってすぱっと切られています。
裏表紙側には、主人公と初代の恋の様子を描いています。
箕浦が「初代の指に映画のような手つきではめてあげた、電気石がはまった指輪」、二人が交わした「手紙」、初代が語る記憶の中の「彼女の故郷を描き出したホテルの用箋」、そして初代が箕浦に婚約の証として預けた「古めかしい織物の表紙がついた薄い系譜図」……。
二人の親密さを象徴するものたちが、不穏な雰囲気を漂わせる「七宝の花瓶」へ向けて落下していきます。
《物語をもっと楽しむために…》
甘い香りが立ち上るチョコレート風味の紅茶に、ミルクとお砂糖を加えて糖分摂取。主人公たちと一緒に、怪事件の犯人を推理してみてはいかが?
きっと犯人は、綺麗なものと甘いものに目がない人物でしょう。
ちなみに著者の江戸川乱歩も甘いものが好きだったのだとか!
イメージティーを納めた本型パッケージは文庫本と同じサイズで、本好きのこころをくすぐります。
1箱に17個、ティーバッグが入っています。
お茶を飲みきったら、パッケージに小物を収納して楽しめます。
商品に同封されている情報カードの一部にパッケージデザインの一部をプリントしており、切り取ることで栞としてお使いいただけます。
ゆったりと読書を楽しむ、癒しのひととき。
作家が描いた作品世界の味や香りや色を現実世界に再現した「イメージティー」を飲みながら本を読んだら、「物語が食べ物のように自分を構成する一部に変わる感覚」が感じとれるかもしれません。
~もっと作家・作品に触れたい方へおすすめ~
実際にプランナーが訪れた、
作家ゆかりのミュージアムその他の紹介コーナー
【高村光太郎関係】
・高村光太郎記念館(岩手・花巻)
作家としてだけではなく彫刻家・装丁家としても活躍した、オールマイティーな高村光太郎の魅力をたっぷり知ることが出来ます。町中心部からは離れているのですが、ぜひ一度足を運んでみてください!
・高村山荘(岩手・花巻)
記念館の横にある、高村光太郎がかつて住んでいた山荘。
貴重な建物を守るため、山荘を覆うように保護用の套屋が二重に建てられています。
・「雨ニモマケズ」 詩碑(岩手・花巻)
宮沢賢治の『雨ニモマケズ』の詩碑で、碑の文字は高村光太郎によるものです。詩人・草野心平の紹介で賢治の『春と修羅』を読んだ光太郎は、賢治が紡ぐ詩的世界を称賛し、彼の死後は『宮澤賢治全集』発刊のために奔走しました。
【室生犀星関係】
・室生犀星記念館(石川・金沢)
犀星の生家跡に建つ記念館。犀星の作品や直筆の原稿、遺品などさまざまなものが展示されています。
さすが、自身の著作の装丁にこだわっていた犀星。装丁デザインを落とし込んだミュージアムグッズがとても素敵でした。
・雨宝院(石川・金沢)
幼少の犀星を養子として引き取ったお寺で、記念館から歩いてすぐ。著作『幼年時代』ではその頃の思い出が自伝的小説として書かれています。
・犀川(石川・金沢)
犀川のほとりにある雨宝院で育った犀星。犀川の西(星)に生まれ育ったことをペンネームの由来とするほど、犀川がある風景を愛していました。
・海月寺(石川・金沢)
「河北潟投毒疑獄事件」にて罪を被せられた加賀藩豪商・銭屋五兵衛を弔うために建立されたお寺。海月寺の2階には、犀星がかつて下宿していたお部屋があります。また、境内には犀星が詠んだ句碑があるのでお見逃しなく。
・金沢城公園 三文豪の石像(石川・金沢)
金沢三文豪と呼ばれる、泉鏡花・室生犀星・徳田秋声の像。
お散歩がてら文豪たちに会いにいってみては?
【江戸川乱歩関係】
・江戸川乱歩像(三重・名張)
乱歩の生家がある名張へ。駅を降りてすぐ、立派な像が迎えてくれます。
・江戸川乱歩生家跡(三重・名張)
乱歩の生家跡は今は広場に。記念の石碑が建っていました。
・天麩羅はちまき(東京・神保町)
昭和期、乱歩や作家クラブの面々が、毎月27日にこの天ぷら屋さんの2階に集まって「二七会」を開催していたのだそう。絶品の天丼をいただきました!!
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