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インターネットの未来をつくる32話目 【日本のこれからの結論】日本からGoogleが生まれない理由を簡潔に述べると...。

最近また読み直している本がある。2006年の当時のベストセラーのちくま新書「ウェブ進化論」である。

梅田望夫さんは、残念ながら、表舞台から姿を消してしまったが、この本は「未来予測本」というには、今では全て、「当たり前」になっている。つまり、ここに書かれていることなんぞ、2022年の今では誰でも知っている周知の事実になっており、極めて、興味深い。それぐらい当たってしまっている。

とくに「Amazon」に関しては「2005年(執筆時)段階」で、著者は、すべてその後を予測できている。「AWS(Amazon web service)」がAmazonの本丸になるなんてのは、ジェフベゾス本人の経営指針よりも先に予測されている。

なんと、当時から、「日本からGoogleが出ない理由」が先回りして述べられている。

詳しくは本文を読んでほしいが、要は人的レイバー・コスト(労働力の省力化)や生産性・サービス財の「自動化・AI化・無人化・省力化」を日本人があまり「美徳」と考えないことにある、というような論調であり、うなづける。

コンビニの「無人化」は進んでいるし、無人餃子販売店FCみたいなのもいっぱいできているが、残念ながらあまりそれらの市場は急速拡大はどこかで止まり、やがては日本においてはそこまでは普及化しない感じを個人的に受けている。

結局「無人化営業」自体が単に「コモディティ化」されてしまい、結局粗利を取る事業者は、「人がサービスで売るEコマース」になっていってしまうような気がする。日本社会の共同体においては、「人とサービスの介在」が日本社会の最も重要な基礎基盤インフラになっているからだ。この本にも戦後成功した日本型イノベーション会社は「生活の中のサービス会社」ばかりだ、というような論評が出てくる。

考えてみても、わたしも「人の介在しているサービス」には平気で上乗せしてでも、お金を支払う。飲食店はその典型だ。uber eatsでは味気ない。サブスクはケチケチするくせに。

今だにAmazonよりも電池などは、少し高くても、リアルのオフラインの家電量販店で買ってしまったりする。若い私でそうなのだから、老人などはもっともっとそうだろう。この行動習慣は単に「技術」だけでは予測できない。おそらく「購入時に介在するサービス財の付加価値と希少化」といった方が実感にもピタッとくる。

・日本人がGoogle的な無人化・省力化マネジメントを嫌ってしまうのはなぜか?

Googleの場合はスタンフォードの研究室、そして徹底的なエンジニア思想で、「世界のあらゆる情報を整理する」という類稀なる、極めてシンプルなミッションによって、世界をガラッと変革し続けている。

日本で「情報の整理」をAIで全部任せる!などと本気でいったら、

「図書館の司書さんやカウンター受付業務はどうするの?あの「人とのふれあい」が、本よりも図書館のメインなのに!」という批判が出る。

「リアル本屋さんがいいんだよ!選書されていてさ!」で、こういう声は、多くの人々は結構共感してしまうはずだ。

だが、Googleにとっては、「司書」や「選書」のキュレーション事業はむしろ人ではなく、「AI」や「アルゴリズム」が絶対にいいという設計思想を持っている。0.0000001秒でも早く、図書館やサーバー内部のコンテンツで最適化されたデータやコンテンツをユーザーが即座に検索・情報収集できることの方が、人類にとって限りある時間という資源を無駄にしなくて済むから、である。無駄なマッチングをなくし、生きる消費時間を少しでもよりよくしたい、というのがまさにコンピューターサイエンティストの夢なのだ。

で、余った人の労働時間はむしろもっとソフトウェア/ハードウェア・エンジニアリングや技術改良や研究をすべきだ、というのが、Googleの根本的な思想である。

事実、スマートフォン、アンドロイドやiPhone時代になって、あらゆる人が一人一台パーソナルコンピュータをポケットに常に携帯するようになった。わずか「0.0000001秒」の違いは一瞬に感じても、「人類全体」で見れば、「何万年分」もの「時間の質と量の差」につながるようになった。

今後、これらの生産性革命と省力化・無人化革命はますます進む。

できるだけ「なくせる仕事」をリストアップして、人をより最適化させる。

これをできない限り、日本からGoogle的な企業は生まれてこない。

だが、こう考えてみることもできる。

日本において、公共図書館は「本の選書サービス公共事業だ!」という思想である。いわばGoogle的な思想の真逆だ。

提供者がオウンドコンテンツを司り、偶発的にキュレートして、個人の経験則からユーザーにサービス介在し、データを授ける。これらはリテールでも結構ある。吉祥寺や中目黒のおしゃれな雑貨屋さんなどが典型的にそうである。

考えてみれば、日本のITスタートアップもこの系譜である。メルカリ、CAMPFIRE、BASE、hey(STORES)などは典型だ。できるだけ個人間のスタートする商売の開業のハードルを低くして、人の「サービス」を市場で投入化させるビジネスばかりである。

逆に、まさに超「Google的」な方向性のグノシーはあまり経営はうまくいっておらず、キュレーションやデザイン部分に人を介在させている率が高いスマートニュースがユニコーンになったのも日本的な特徴だといえる。

「無人冷凍餃子販売店」は2022年の今、大抵「1パック・1000円」である。もっと売れて、市場ができてくれば、1パック・700円になり、500円になり、400円、350円になり、やがて、300円、200円、ついには「100円」まで値が落ちてくるはずだ。それでも売れれば会社はやるのだ。

だがそこまで行く前にコモディティ化は一気に進み、パクリ合い合戦になる。で、市場における事業者が乱立することは確実である。

そうなる前に、そもそも「無人販売店」自体が姿を消し、ブランドのd2c、すなわちEコマースメインになっていく。そして、実店舗で、人が焼いたり、直接物販する体験ができる餃子屋さんになってしまうのではないか、と考えている。外れたらゴメン。でも、なんとなくその未来が予測できる

「無人餃子販売店」の話ではなく、あらゆるビジネスがそうなのだ。結局人がやった方が安くて、早くて、売れて、儲かる「江戸商人社会」なのである。なので日本で成功するスタートアップもHRや人材派遣業が一番多くなる。安く使える人を介在し、中間代理で、営業コストを減らし、収益を上げていけるからだ。

日本からGoogleが生まれない根本的な理由は、「無人餃子販売」よりも「買う商品」「取引回数」ごとで、安い人件費を使って、マスマーケできることにある、というのが私の仮説なのである。

この20年間で、労働賃金は一向に上がっていないのもそれを裏付ける。

となると、やっぱりこれから起業すべきは、HR領域になってくる。

Googleとはおそらく「真逆の思想」を使った「人材派遣業」の方が日本では成功しやすく、またGoogleのプラットフォームサービス・サーバー・AI(YOUTUBEやGOOGLE検索エンジン)を使っちゃった方が早い

また、それに加えて、日本が極めて得意なのが、ブランドビジネスである。

AppleもiPhoneやMac Bookにあの「リンゴマーク」がついていなければ、おそらく3~4万円どれも製品価格が安い。事実競合商品はみんなそうだ。Appleは割高やブランドフィーが上乗せされている。だからといって、Appleは変なもの、低価格の粗悪品はほぼ市場に投下しないので、「信頼」されている。まさにブランドである。しかし、多くの人に売りたくないわけではない。

地球上で最も海外でAppleやルイヴィトンといったブランド製品が売れている国、それが日本である。つくづく「ブランド好き」なのだ。

 日本で成功するビジネスは「輸入代理業」ばかりである。電通・博報堂の力を持ってでしても、海外での輸出やマーケティングは難しい。ソフトウェアの場合は、そのままインターネットで販売すれば、貿易力は不要である。だが「言語の壁」はでかい。日本人向けの日本語UI/UXデザインをそれぞれグローカルにシフトチェンジし直す必要と同時に、現地で最も売れる市場形成に最適化するまでに時間がかかる。結局みんな諦めて撤退し、その後そのまま性質や商品の付加価値部分を競合にパクられてしまうことが多い。

やはり、そうなってくると、国内でブランド料で収益や粗利、付加価値をいただき、それを元手にキャッシュインし、世界でより現地グローカルなブランドを取っていくしか日本の起業家に残された道はない。まさにこれは「ユニクロ」、ファーストリテーリングがやっていることだ。消費購買力が高く、目利き力の高い日本人の中間層で売り、その粗利で、薄利多売で、海外現地の支店を出し、ローカルカラーからグローバルを目指す。まさに日本的ベンチャー精神そのものである。

技術・知財で市場の囲い込みをできる段階は、おそらく最初の数年だけである。だから、それよりも、「ブランド・フィー」の部分を目指し、マーケティングに集中特化する。そして、その粗利で海外でローカルなブランドに改良・改善していく。トヨタ・ホンダ・ソニー・松下・ユニクロ・日本電産・キーエンスといった超優良日本企業が得意なこの戦術は極めて有効だ。

Googleはある意味で、インターネットの「デファクトスタンダード・ソフトウェアであり続けたい」企業文化である。「検索エンジンGoogle」は、10年後でも30年後でも100年後でも、自社製品であってほしいと願うはずだ。だが本質的にどれも「アド」でしかマネタイズできないため、有料サブスクの強いネットワーク効果を持つ幅広いドメインができて、そこであらゆる「有益かつ有料コンテント」の強いレコメンデーション・プラットフォームが競争優位性を持てば、「Google検索広告」はかなり窮地に追い込まれる可能性もある。

事実、10年前に比べて明らかにGoogle検索エンジンを使わなくなってきている

Googleは本当にいろんなビジネスや研究開発に手を出している。自動運転はもちろん、空飛ぶ車まで開発している。その本当に「無人化・省力化・自動化・AI化」力は凄いが、「顧客人生の高付加価値化」にあまり視点がいかない。やはり人類史上最も巨大な企業の一つになっても「研究室ベンチャーのDNA」なのは、変わらないのだ

こここそ、日本が狙う「ニッチな隙間産業」といえるだろう。インターネットで、人生の高付加価値化市場製品を投入すればいいソフトウェア、サービス、ゲーム、コンテンツ、なんでもまだまだある。どれも成功していくはずだし、日本のベンチャー企業や良質なスタートアップの未来は明るいし、爽やかだ。

レコメンデーション系のプラットフォーム革命が面白いのは、「能動的」にインターネットという情報ツール自体を使わなくなる可能性が高いところだ。

情報の調査・調べ物としてのインターネットが、「Web2.0」までのインターネットだとすると、その市場プレイヤーの王道はやはりAmazonとGoogleである。本が買えて、情報検索ができるわけだから。シンプルに今でも強い。

エロコンテンツや本、CD、VHSやDVDしか買えなかった初期インターネット時代から、ありとあらゆる製品・商品のお買い物・ショッピングもできるようになったのが、「Web2.0」までの特徴だ。

次にくるのは、おそらく「買い物の意思決定」がより受動的かつ自動的に選ばれる未来はありえる。

だから、「冷凍餃子」にここで話が急に戻るが、おそらくやってくる未来は、「冷凍無人餃子販売」の逆だ。

例えば、全くそれまでショッピングをしなくても、最初の初回ユーザーは自動的に「何か(商品A)」をもらえる。ここまではデアゴスティーニやかつての「辞典」通販ビジネスと同じだ。

で、2回目以降継続購入すると、付加価値が載り、少し割高だが専門的なサービス・異質かつプレミアムな製品が、セットでその顧客のみ購入できる未来。二段階ハードルである。これはいわば「サブスク」と似ているようでかなり違う。サブスクの場合は継続購入・年会会員フィーであるが、会員データと組み合わせて、付加価値製品とオンラインコンテンツに接続され続けるわけだ。ずっと顧客はインターネットに接続しながら、そもそも「検索」したり、選ぶ作業コストが不要になる。ニュースや天気もここのドメイン内でよくなる。

こうなれば、進化するのは、インターネット独自の「プレミアムバリュー・プロダクト」と「オートメーション」による即時配達レコメンデーションECである。これも最初は慣れないだろうが、タレントやクリエイターを使って、「最初は無料で届く!もっといい製品が買える!」のエンタメバラエティ番組があれば、すぐに普及化し、一般化する。

だが、オペレーション的にこれができる事業プレイヤーは限られる。なので無人餃子販売FCと違って、参入障壁が高い。顧客データがすでにないとビジネス自体が難しいのだ。Amazonや楽天のようなプレイヤーが組んでいくのだ。

そして、GoogleやFacebookのようなアドメイン収益のプレイヤーはこのレコメンデーションされたプレミアムプロダクトを「見れない・売れない・買えない」ようになる。そのようにオープンソースにただ「ランダムな個人にレコメンドされ」る世界の中で、確実に、ばら撒かれる多すぎるノイズーー「不要な商品広告とのミスマッチング」に飽きてくる。YOUTUBEの広告訴求力は今後10年で一気にマスになるだろうが、そこで「無料で時間を消費し続ける」エンドユーザーは年とともに減り、「広告不要」かつ「プレミアムブランド」の中で、広告と有料の中間コンテンツだけでほとんどのユーザーの情報消費は間に合う。

というような「検索がなくなるインターネット世界」=「Web4.0」「Web5.0」の世界観は、確実に姿を見せつつある

もう少しここらへんは深掘りして、考えてみたい。

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