見出し画像

企画の在り方

先日、仕事でブランディングの記事を書いていたら、昔のことを思い出したので、書き留めておきます。

メーカーで「製品や技術の企画」をしていた時期がありました。
開発サイドの企画のため、いわゆる商品企画とは少し違う立場でした。

Seeds(シーズ)

自社のリソースを用いて、市場に何が提供できるのか、ある種プロダクトアウト的な考え方はありますが、そういう方向性を持っていました。
「Needs(ニーズ)」ではなく「Seeds(シーズ)」を捉えていました。

よくマーケティングが大事とか、リサーチが大事とか言われますが、いくら市場に問いかけても、出てこない答えがあります。

たとえば開発会議において、販売部門はこのようなことを言います。

「(競合の)〇〇社はこういう機能を持った製品を出している(出す予定がある)ので是非ラインナップしてほしい」「なおかつ低価格でないと競争力がない」

「早く出してくれないと売るものがない」「セールスできない」

マーケティングや商品企画部門には、そのような突き上げが絶えず来るから、マーケティング部門はニーズに対する答えを探そうとするのです。

でもそれは、本当の意味での「企画」と言えるのか?
あくまで販売企画なのではないのか?

市場のうねりとリソースとロードマップ

市場には激しく変化する波と、季節のようにゆっくりとうねる波があります。
技術開発は、その大きな波を捉えて方向性を決めます。
少なくとも3〜5年ぐらいのロードマップがあります。(無理やりでも)
実際には来年どこに着地するか、というような目でしか見られない状況もあります。

ニーズといっても目先の顧客要望ではなくて、もっと大きく市場が求めるものを考えます。
そこに自社の限られたリソースの、どの部分を活かして、何を投入すれば市場は満足するのかを考えることが、企画の大事な役割ではないかと思います。

もし、求められるものズバリの答えを提示できない、王道の答えができない場合でも、何らかの形で市場に応える方法はあるはずです。
必ずしも業界の先頭を行けていない企業で、制約だらけであっても、自社ならではの答えが出せるはず。

開発と研究はもっと先を見ている

それでも企画、あるいは商品企画というのは、ミーハーでもいい立場です。

開発の責任者は、狙いが外れたときのダメージが大きいから、開発レベルでの他の企業の動向や、市場動向を常にキャッチしています。

研究部門は、さらに先のこと、あるいは根幹について考えています。
開発・研究部門に、企画セクションがなかったとしても、実際にはその機能を、誰かが果たしています。部門長であったり、取締役であったりします。

企画は調整係を兼ねる

結局のところ、マーケティングを除いた企画部門の役割は、市場を見ながら開発・研究部門と相談をして、ロードマップを決める作業をすることです。
実務のほとんどは、調整です。

技術はすべて、開発部門と研究部門(もしくは製造部門)が持っているし、決定権があります。
販売に関しては、営業部門と販売部門に決定権があります。

企画部門だけでは、何も決められません。リソースもありません。
しかし、重要な開発会議で、社長が誰の見解を重視するかといえば、企画です。企画が「こうしましょう」と言えば、そうかということになる。

つまりそれが企業の建前なのです。

社長が「うん」と言えば、プロジェクトは走ってしまうから、各部門とも真剣です。企画に対しては「こんなことを言ってくれ」「こういうことは言わないでくれ」というような圧力もあります。

事前の根回し、調整が綿密であれば、まずおかしなことにはなりませんが、それを怠って販売サイドと開発サイドがミスマッチになったときは、すべて企画の責任になる。

企画の在り方は、調整役。コンセンサスの可視化です。
市場・製品・技術の流れを読み取って、ときには部門長のご機嫌を伺いながら、みんなが「これで行こう!」と思える答えを見つけ出すのが仕事なのですね。

あとがき

久しぶりに昔の仕事のことを思い出しました。
当時はなんだか分からず闇雲に突き進んでいたことでも、後から振り返ると、また、自分が大人になると、見えてくるものがあります。
そして整理できます。

いま企画の仕事をしている人に、参考になるかどうか分かりませんが、少しでもヒントになることがあれば幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?