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隣のアイツは何してる?~ラボインタビュー vol.8 東京学芸大学ヒューマンライブラリー

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東京学芸大学Mistletoeが取り組む新たな教育の試み、Explayground(エクスプレイグラウンド)。
Explaygroundには、子どもたちや学芸大を始めとした各大学の学生、教職員、地域住民などが参加し、今後、企業や行政などとの共同研究の核となっていく「ラボ」が多く存在します。
しかしラボにおける活動も、コロナ禍による影響を大きく受け、大幅に制限されたり活動自体を休止したりしています。
でも、何事にも学びはある。
第8回は、東京学芸大学ヒューマンライブラリーの岡智之先生に話を伺いました。

東京学芸大学留学生センター所属の岡と申します。
主に大学院の次世代日本型教育の日本語教育領域で教えており、本務では留学生の日本語教育ならびに日本理解教育を主にやってます。
いま力を入れてるのは多文化共修という授業で、日本人と留学生が共修しながら、さまざまな国際的な文化とか日本の文化や社会を理解していくという内容になります。
ヒューマンライブラリーとは、多文化共修の授業を作っていくなかで、多文化あるいは多様性を深く理解していく取り組みを模索していた際に出会いました。
当時は、異文化間教育学会で取り組んでいる先生方がメインで、明治大学や駒澤大学などで開かれていました。そこで学びながら東京学芸大学でもやってみようということになり、2016年から始め今年で5年目となります。

●ヒューマンライブラリーという手法について教えて頂けますか?
人を本と見立て、読者が本を借りるという形でお話を聴いていく手法です。もともと一対一でやるのが基本だったみたいです。最初に「こういう本があります」というリストを出しておき、その話を聞きたいという人がその場にいって話を聞く。セッションは1回あたり約30分間で複数セッションが行われている場合は、それを回ることもあります。

●一見するとマイノリティーな立場の人の講演会みたいなものと似ているような印象を受けますが、違いの一つは少人数であるということですね。
少人数での対話。対話が重要なんですね。

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●なるほど。メタファーとして図書館が合いますね。
はい。「司書」は「本」と「読者」をつなぐということで、「本」の世話役でもあるし、もともと「本」を選ぶってところからやるっていうのもあります。去年はうちの大学院生から日本語学校で一緒に働いている在日ベトナム人や、昔から付き合いがある肢体不自由の障がいを持ってる人など、2、3人紹介してもらったりしました。
私のつながりだけど少し狭いので、こういった形でドンドン「本」も広がっていけばいいなと思っています。結局私ひとりで選んでいると僕の興味の範囲でしかなくなってしまい、あまりその広がりが出てこないので。
私の専門から言うと、在日外国人の問題を、例えばイスラム人留学生であるとか、あるいは日本にいる難民の方などを呼んでお話しを聞くことから始まりました。
今は、在日外国人関係、セクシャルマイノリティの人やLGBTの方、それから障がい者の方などに広がってきました。

ヒューマンライブラリーは、マイノリティーというか生きづらさを抱える人たちの話を聴き、差別・偏見の定義を図っていくという主旨から始まりました。もともとデンマークのロックフェスティバルで始まったと言われています。その後それが世界的に広がり、日本でも10年以上いろんなところで開催されヒューマンライブラリー学会という学会もできました。
学芸大では年1回のイベントという形で続けています。学内を始めとして地域社会にも参加を呼びかけており、本学では地域連携事業の一つにもなっています。

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●つながりを拡げていく際に、是非、ほかのExplaygroundのラボとの交流も一つのきっかけに使っていただければと思いますが、先生が興味のあるラボはありますでしょうか?

沖縄の「ハイサイ・ウチナー」ラボですね。授業でも沖縄に関連する問題や、琉球語などを取り上げたりしていることもあり、興味があります。
授業の範囲ではなかなか難しいですが、琉球やアイヌなどの文化を体験するツアーなどでつながりができればなと。あとは「MUSASHINO LAB」にも興味があります。
また留学生関係では「INTER」というラボです。学生が主体のラボで私が顧問を引き受けているのですが、留学生と日本人学生の交流を目的として留学生カフェやトークルームなどの取り組みをやっていました。ほかに留学生や多文化関係のラボがあれば、何か一緒にできそうな気もします。

●セッションを行う際、本(話し手)はどのような読者(聞き手)を対象とするかなど、事前にある程度ターゲットを絞ったりするのでしょうか?例えば小学生向けや大学生向け、ご年配の方向けなどで話分けたりはされますか。

どのような話をされるかの基本線は主催者側でも聞いていますが、基本的には本の方にお任せです。内容は、一方的に話して最後に質問みたいな形だけじゃなく、まずは来てもらった人の自己紹介や問題意識を共有してもらい、聞きたい内容を先にヒアリングし、そこから話を展開していくやり方もあります。また「本」と同じ立場の方が読者として参加しているケースもありますね。
子供たちでいうと、制限はしていませんが高校生以上が多く、中学生以下はほとんどいませんね。子供たちには少し噛み砕いて話すとか、何か工夫が必要なので、別個に開催したほうがいいと思っています。

●ただの講演じゃないところがヒューマンライブラリーの良いところだと感じました。ぜひ人格形成中の小学生や中学生などの世代向けにも開催してほしいと思いました。
また同様の生きづらさを感じている人が、「本」として来て下さる方と「読者」として来て下さる方がいて、終了後にディスカッションが行われるのは非常に深みがあると感じました。

そうですね。コロナ禍前は最後に交流会を行うこともありました。こういう場で「本」同士、あるいは「読者」同士、「本」と「読者」とそれぞれの交流も生まれたりします。
前回はコロナで集まることができなかったのでオンラインで実施したのですが、オンラインでやってみたら、遠隔の方も参加しやすいなど良い面もありつつ、いくつもの顔が自分の方に向いてたくさん並んでいる状態が苦手、自分が話す時は全員カメラをオフにしてくださいという「本」の方からの意見もありました。

●ありがとうございます。今後、ヒューマンライブラリーが何か新たな形でやりたいことなどを含め、Explayground事務局でお手伝いできるところはありそうでしょうか?

ヒューマンライブラリーは年1回のみのイベント的なものになっているので、最低1学期に1〜2回とか、小規模でも恒常的にとか、回数を増やしたいと思っております。またもちろん対面が基本になりますが、オンライン形式も併用することも、それはそれとしてありだと思っています。「本」の方もわざわざ来ないで自宅からできるとか、オンラインのメリットもありますからね。
なので対面とオンライン両方の利点を生かしながらハイブリッドでできるのかは、ちょっとわかりません。対面なら対面、オンラインならオンラインとして、はっきり分けてやったほうがいいかなと思っています。
オンラインの場合、1人の力ではなかなか難しい部分もあるので何かご支援いただければありがたいと思います。(了)

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インタビュアー:Explayground
編集:フジムー、ミーコ
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●これまでの連載
vol.1 変人類学研究所
vol.2 codoschool(こどスクール)
vol.3 Edu Coaching Lab
vol.4 EXPitch
vol.5 武蔵野らぼ & グローカルジオラボ
vol.6 授業研究ラボ「IMPULS」
vol.7 VIVISTOP GAKUGEI準備室




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