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30日間の革命 #革命編 119日

 その日の坂本はいつもと変わらなかった。いつも通りの振る舞い、そしていつも通りに完璧だった。しかし、加賀にとってそのいつも通りが逆に違和感を覚えた。坂本のことをよく知る前の、あのロボットのような感覚。だからこそ、中々話しかけることが出来なかった。

 そうして昼休みが終わり、文化祭へ向けた準備が始まる。3年1組の文化祭実行委員は坂本であるため、坂本が指揮をとり準備は進んでいった。これもまた順調だった。何事もなく準備は進んでいく。クラスメイトも例年になく楽しそうにしているし、決して不安なことはない。むしろこのままいけば賞を狙えるのではないかというくらい練習もしっかりと出来ていた。

 ただ、やはり加賀の違和感はなくならない。

 その違和感の正体は「日常」だった。自分たちはこの文化祭で革命を起こすはずなのに、なぜこんなにも順調に文化祭に向けて準備を進めているのか。白の会の人数も集まり、革命を起こすことも現実味を帯びてきている。なのに、なぜこの1週間前に普段通りの「日常」を送っているのか。そしてそれを指揮しているのは坂本だった。一見当たり前の風景である。文化祭に向けて皆で協力し合い、最後の想い出にと楽しく過ごすことに何の違和感もない。このまま革命なんて忘れてしまいそうになるほど穏やかな雰囲気で準備は進んでいく。

 クラスの雰囲気も、革命を起こすというより賞をとるということに向かっているようだった。いつしか江藤も楽しそうに文化祭へ向けた準備をしている。江藤の他にも白の会に参加してくれているクラスメイトたちも同じように準備を楽しそうに行っていた。それも全て坂本があえてそういう方向に持っていっているようにも思えた。革命というものを皆の頭から忘れさせ、日常を取り戻している。加賀にはなぜかそのように思えてしょうがなかった。

 その雰囲気に我慢ならなくなった加賀は、準備の合間に坂本を人気のない場所へと連れ出した。

 「ちょっとごめん。もう文化祭まで1週間なんだけど、革命に向けては動かなくて大丈夫なの?」

 加賀がそう聞くと、

 「……ええ、大丈夫。何もかも順調よ。このままで問題ないわ」

 と坂本はいつも通りの笑顔で答えた。いつも通りの坂本なのだが、やはり昨日までの坂本とは違っていた。

 「……な、何か作戦があるとか?だからこんなに普通に文化祭に向けて準備してるとか?」

 「そうね。……大丈夫、安心して。何も問題ないから」

 坂本はそう言うと、そのまま教室へと戻っていった。加賀はその後ろ姿をただ見送るしか出来なかった。

▼30日間の革命 第一部
まだお読みでない方は、ぜひお読みください!

▼30日間の革命 ~第二部革命編~
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