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30日間の革命 #革命編 13日目

 「今だけは生徒会とか白の会とか関係なく江藤ちゃんとして話しを聞いてほしい」

 加賀からの真剣な問いかけに、江藤は戸惑っていた。再び革命を起こそうとしているという告白を受け、自分はどうするべきか。このまま加賀の話を聞かずに馬場へと報告するべきか。もっと情報を聞き出すべくこのまま話を聞くか。それとも、本当にかつての友人として話を聞くのか。

 「……うん。いいよ」

 江藤はそんな迷いを抱えたまま短く返事をした。

 「……ありがと。てか、やっぱ江藤ちゃんとはこんな堅苦しい感じで話すのは何か変な感じするな。前はお互いこんな顔して話すことはなかったのにね」

 加賀はそう言うと、少し寂しそうな笑顔を浮かべた。

 「いつからなのか、お互い何かを抱えていって、こんな状態になっちゃったんだと思う。だから、このままそんな状態で前には進みたくないから、江藤ちゃんの率直な気持ちを教えて欲しいんだ。今、楽しい? 今の状態が江藤ちゃんにとって一番望んだ状態?」

 加賀は真っすぐ江藤の目を見て問いかけた。江藤は思わずつばを飲み込んだ。革命について詮索する気持ちが少しあったので、こんな質問が来るとは想定もしていなかったので、どう答えるべきなのか分からなかった。江藤の目が泳ぐ。どう答えれば馬場にとってプラスになるのか。答え方によれば、革命についての話をもっと詳しく聞き出せるかもしれない。そんな考えが江藤の頭の中で廻った。すると、

 「さっきもいったけど、今は『江藤ちゃん』に聞いてる。生徒会とか革命とか関係なく。もし、江藤ちゃんが本当に今の状態が一番望んでいた状態だとしたら、それでいいんだ。そしたら革命についてももう少し情報もあげるよ。俺は今駆け引きをしているわけじゃない。本当にただ一人の友人として『江藤ちゃん』に話をしている」

 と加賀が話した。まるで江藤の心を見透かしたように。江藤の心に更なる迷いが生じた。加賀には自分の気持ちが見透かされている。なら正直に答えるべきか、それとも馬場のように相手の一歩先を読んで別の答えを言うべきか。

 江藤は少しの間うつむき、考えた。そして腹が決まったように顔を上げ、加賀に向かってこう答えた。

 「……楽しいわけないじゃん。確かに憧れてはいたよ。学校のみんなから注目を浴びて、廊下を歩くだけで後輩たちから寄ってきて挨拶をされる。それなりに責任感も出たし、ある程度は自分が望んだ状態になったよ。でも楽しくない」

 江藤の顔は次第に険しくなっていき、感情が少しずつ言葉に乗ってきているようだった。

 「前は気にならなかったこともどんどん気になってきて、力で抑えこむことしか出来なくなってきた。気に食わない奴とか歯向かう奴がいたら徹底的に叩いたよ。自分の立場を守るために。強くなくちゃいけないって思ったし。そしたらどんどん一人になっていく感じがした。話しかけてくれる人はいるけど、みんな気をつかってる。後輩も同級生もそう。セトたちを見たら何かみんなで楽しそうなことしてるし。何か悔しかったよ」

 加賀はそんな江藤を見守るように話を聞いていた。

 「そんな中で馬場は違った。こっちには一切気を使わず、私のことを必要だと言ってくれた。だから馬場についていった。馬場が私の立場を利用しているのも知ってる。だけど私を必要としていることには変わりないよ。それが私にとっては重要だったから。だから、今の状態で満足している。私を必要としてくれる人が一人でもいること。それが私にとって重要だから、楽しくはないけど、これが私の望んだ状態だよ」

 江藤はそう言い切った。これは、駆け引きなどではなく、友人として聞いてくれた加賀に、最後に友人として答えたつもりだった。最後にというのは、江藤はこの後馬場に報告にいくつもりだったからである。全てのことを馬場に話せば、恐らく加賀たちとの関係はここで終わる。江藤はその覚悟を持って、加賀へと思いを打ち明けたのだった。

▼30日間の革命 第一部
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