ブラック&ブラック #毎日ネタ出し35日目
【タイトル】
ブラック&ブラック
【あらすじ】
身体が重い。頭も痛い。何もやる気が起きない。
でも、動き続けなければならない。ここは真っ暗な世界だ。
今思えば、大学のときもっと頑張っておけばよかった。
「就活なんて早めに終わらせて、あとは遊ぼうぜ」
そんなことを言っていた自分を呪いたい。あの時ちゃんと選んでおけば。あの時他の会社も受けていれば。後悔したってもう元には戻れない。
私は広告代理店に勤めている。朝から晩まで働きっぱなしで休む暇もない。次から次へと仕事が降ってきて、寝ることさえ難しくなってきた。
もう限界だ、辞めよう。
そう思っても、仕事がどんどんと重なっていき身動きがとれない。頭ではわかっていても、身体が動かない。仕事の辞め方すら分からない。
そうなると、やることはただ一つ。
駅のホームにふらりと立った私は、吸い込まれるように迫りくる電車に向かっていた。
「ああ、これで全てから開放される」
そう目を閉じる。全てが終わったんだ。もう働かなくていいんだ。しかし、私に待ち受けていたのは更なる地獄だった。
私はそっと目を開ける。そこには真っ暗な闇が拡がっていた。
「俺は死んだのか? まあそれなら良かった。あとはゆっくり休もう」
そう思い、その場に座ろうとしたとき、目の前に炎が立ち上った。そして、その中から一人のスーツを着た男が現れる。
「そんなところで何をしているんだ。早くこっちへ来い。そして早く働くんだ」
男はそう冷淡に私に告げると、無理やり私を引きずり、ある場所へと連れていく。私は何が起こっているのかわからず、ただただ引きずられていくしかなかった。
「ついたぞ。ここがお前の”職場”だ」
男がそう言い、私は顔を上げる。そして絶望する。なぜなら、そこには大量の人間が奴隷のように働いていたからだ。ピラミッドのようなものを作っているのか、石を運ぶ人や穴を掘る人など様々な作業をしている。それも、かなりの重労働に見える。そして全員が苦悶の表情を浮かべていた。
「お前も今日からここで働くんだ。とにかく休むな。身体だけを動かせ。いいな」
「い、嫌だ。俺はもう働きたくないんだ。だから自殺したんだよ!」
「甘えるなよ。死んだら労働から開放されるとでも思っていたのか? お前は多くの人に迷惑をかけて死んだんだ。その分の罪は償ってもらう。お前が現世で残した負債をここで精算するまでは開放されない」
「そ、そんな……。どれだけ働けばいいんだよ」
「現世の時間に換算すると、ちょうど1000年くらいになるかな。まあ現世とは違ってこっちには休憩も休息も必要ないから、体感的にはもっと短く感じるかもしれんが」
「せ、1000年……」
私はひざから崩れ落ちる。死んだら楽になると思っていた。全てから開放されると思っていた。しかし、それは間違いだったんだ。
「ほら、さっさと働け。ここじゃあもう死ぬことも出来ないし、逃げ出すことも出来ない。1000年間、しっかりと働けよ」
私は絶望の中、道具を与えられ労働者たちの中に蹴落とされる。そして、1000年間の労働が始まった。
地獄の日々の始まりだった。
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