欧州: 気候変動の社会・経済的リスク by EEA
EUの専門機関である欧州環境機関/EEAが、欧州気候リスクアセス/European climate risk assessment報告書を発行、近年異常気象が続いている欧州でも、今後食料安全や人々の健康、インフラなど、社会のあらゆる側面に対して大きなリスクとなりつつあり、至急対策が必要との内容。その概要を整理。
記事要約
2023年は、観測史上最も暖かい年(過去10万年)となり、産業革命以前の気温よりも平均1.5度以上高くなった。中でも欧州は、気温上昇が最も早い地域。
緊急性を要するものとしては、沿岸地区における各種対策、穀物生産の確保、熱波対策、洪水対策、欧州の連帯メカニズムの構築などが喫緊の課題など。
一定のデータやモデリングに基づく内容で、学会では議論があるのかもしれないが、現場にいる私としては腹落ちする内容。
1. 欧州環境機関とは
本報告書を発表した団体は欧州環境機関/European Environment Agency(EEA)という名の欧州連合/EUの専門機関の一つで、1994年にデンマーク・コペンハーゲンに設立。
wikiによると、各国代表(EU加盟国+周辺国)と欧州委員会、欧州議会が任命した科学者2名で構成される管理役員会/Management Board membersが運営を行い、事務局としては事務局長を筆頭とする事務方に加え、科学委員会が補佐する体制。
ということで、しっかりと確立された団体が出した報告書、ということになる(名前からもわかる通り、いつも環境よりの事を言っている団体でもある)。
2. 報告書概要
以下、EEAが2024年1月に発行した欧州気候リスクアセス/European climate risk assessment報告書の概要。
2023年は、観測史上最も暖かい年(過去10万年)となり、産業革命以前の気温よりも平均1.5度以上高くなった。中でも欧州は、気温上昇が最も早い地域で、熱波や洪水パターンの劇的変化に見舞われている。なお、南欧では今まで以上の洪水量減&干ばつが予測されている。
これら気候災害は、食糧安全や水安全、エネルギー安全、人々の健康、エコシステム、インフラ、経済など多様な観点から大きなリスクとなる。それがわかるのが下記の図。それぞれ交互に関連しているので、いったん始まるとドミノ倒しのごとく連鎖していくことがわかる。
実際のリスク度合いは、政府や社会がどれだけ対策(排出削減対策&気候対応対策)を打てるかによる。ただ、やることがありすぎてどのリスクにフォーカスすればわからない。それを整理したのが下記の図。緊急性を要するものとしては、沿岸地区における各種対策、穀物生産の確保、熱波対策、洪水対策、欧州の連帯メカニズムの構築などが喫緊の課題とのこと。
報告書には各種リスクに関する詳細なアセス内容が記載されているがここでは割愛。
3. コメント
気候変動や地球温暖化問題を語るとき、とにもかくにも脱炭素、排出削減、カーボンニュートラルがフォーカスされがち。ただ、世界全体の排出量を見た時、いまだピークアウトしていないのが現状。先進国は2050年脱炭素に向けて世界をリードしようとしているが、どうなるかはいまだ不明。
一方、足元を見ると、毎年のように異常気象が見られ、もはや「異常」と呼ぶのが正しいのかもわからなくなりつつある。確かなのは熱波や洪水、暴風雨は私の住む北ヨーロッパでも増えている。といったことをしっかりと図解してくれるのがこのEEAの報告書。
無論、これも一定のデータとモデリングに基づいたものでしかなく、それが本当に正しいかどうか、学会では議論があるのかもしれないが、異常気象が色々と社会生活に悪影響を及ぼしつつあるという結論は、現場にいる私の肌感からしても腹落ちする内容。
個人的に私が一番心配しているのは、私が保有する不動産。通常時でさえ、何か災害があっても保険会社は払い戻ししたがらないのだが、それが異常気象で頻繁になってきたり、洪水とか起こってどうしようもない被害が出た時にどうなるのかが気になる。
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