欧州: 代替燃料インフラ規則（AFIR）
運輸・交通部門の脱炭素化に不可欠なEVや代替燃料車両だが、それらの実生活での利用には、充電施設を含めた代替燃料インフラ施設が不可欠。そしてEU加盟国に対して代替インフラ設置を義務付ける代替燃料インフラ規則（AFIR）が先般採択されたところ、その背景＆概要をサクッと整理。
記事要約
Fit for 55政策パッケージの一つとして提案された代替燃料インフラ規則（AFIR）。2021年7月に欧州委員会が改定案を公表、2023年3月に暫定合意。
EU域内における代替インフラ（電力、水素、液体メタン）整備を加速化させることが目的で、距離ベースの目標値や登録台数ベースの目標値がEU加盟国に課された。
AFIRが採択されたこと自体はWelcomeだが、南欧や東欧の国は厳しかったりしないのだろうか？財源はどうするのだろうか。
1. EVとインフラ整備
運輸・交通部門の脱炭素化には、EV化が不可欠。というわけでEUは、既存の自動車CO2規制を改定し、2035年以降ガソリン・ディーゼル車両の新車販売を法律で禁止。
※EU 自動車CO2規制の概要はこちらから
なお、現時点で、EVが新車に占める割合は以下。
（出典：Euronews HP）
EV使用に欠かせないのが充電インフラ。かなりの勢いで充電インフラが拡充されている（2022年には、15万基が新たに設置され、Publicly accessible充電施設の総数は32万から47.5万基まで増加）。
しかし、EU加盟国間で充電施設の設置状況が大きく異なることがわかっている。人口10万人あたりにEV充電インフラ何基が利用可能かをプロットしたのが下の図。オランダ（577）がトップで、次いでルクセンブルグ（308）、オーストリア、スウェーデン、。。。となる。EU加盟国のアベレージは人口10万人あたりに106基。
2021-2022年の新規設置数でみると、相変わらずオランダがダントツだが、ドイツやフランス、イタリアなども頑張っていくのがわかる。
2. 代替燃料インフラ規則（AFIR）概要
2020 年7 月8 日に、欧州グリーンディールの文脈の中、Fit for 55政策パッケージの一つとして提案されたのが、代替燃料インフラ指令（AFID）の改定案で代替燃料インフラ規則（AFIR）。既存法規であったAFIDは、充電設備やインフラ整備目標について拘束力がなく、上述の通り加盟国間で大きな差が出てきていた。2021年7月に欧州委員会が改定案を公表、コデシを経て、2023年3月に暫定合意その後官報発行に至る。
AFIRの目的は、EU加盟国に対してインフラ整備に関する目標値を課すことで、EU域内における代替インフラ（電力、水素、液体メタン）整備を加速化させること。その概要は以下の通り。
登録台数に応じた目標値：EU加盟各国は、普通自動車のバッテリー式電気自動車（BEV）とプラグインハイブリッド車（PHEV）の登録台数1台当たりにつき、それぞれ1.3キロワット（kW）と0.8 kW以上の充電設備を設置（毎年末時点）。
距離に応じた目標値：汎欧州運輸ネットワーク（TEN-T）幹線道路沿いに60km毎に後続充電施設を設置（2025 年末（※：3.5ｔ以上の重量車両用は2030年末迄））、最低出力は2027年の600kWに向けて毎年増加（詳細以下の表）。
水素目標値：2030年末までにTEN-Tの中核ネットワーク沿いに200キロ以下の間隔で水素ステーション整備＆都市結節点に1カ所以上、水素ステーションを設置
他、港湾施設や空港における各種義務もあるが割愛。
（出典：ICCT報告書, p. 3）
（出典：JETROビジネス短信）
3. コメント
AFIRが採択されたこと自体はWelcomeだが、幹線道路の60km置きに充電施設設置とかは、南欧や東欧の国は厳しかったりしないのだろうか？と思ってしまう。下記の図を見る限り、幹線道路と言っても結構な距離がありそう。お金がない国は、EUの資金をあてがうのだろうか。今後要注視。
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