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血も凍る

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怪談ツイキャス「禍話(まがばなし)」で放送された怖いお話を、色々な方が文章に“リライト”しています。それを独自の基準により勝手にまとめたものです。
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記事一覧

禍話リライト番外編:忌魅恐『フジサキくんの家のお葬式の話』

事情があって会社を休んでいた先輩のAさんが久々に出社してきたときの話である。 後輩のBさんは、昼休みに腕を組んでなにやら悩んでいるAさんを見かけた。 (休んでいた間のことは細かく伝えたつもりだけど、聞きそびれちゃってわかんないこととかあったのかな) 「どうしました?わかんないことあったら教えちゃいますよ?」 「いやぁごめん、仕事に関係ある話じゃないんだけどね、ちょっと家のことだからさ」 Aさんと親しかったこともあり、気をまわして声を掛けると、Aさんはへらり、と笑って答えた。

禍話リライト「庭の塚」

チャラチャラした感じの人だったから、話してくれたのだろうと思う。 けれど、そんな雰囲気の割にはちゃんとした人だ、ということが話しているうちにわかった。おそらく万事要領がいい人なのだろう、という男性だった。 そんな彼だったから、同じようにチャラチャラした友人たちよりも早く自動車の運転免許を取得していたという。 大学二年生の頃、仲間うちで、お前免許持ってるんだって、という話になった。素直に認めるとすげえな!と言われる。彼は最短で免許を取れたタイプの人間だったが、周りには試験やら

禍話リライト:もやがでる家

A君は大学で、資格取得を目指す真面目なサークルに入っていて、活動内容も資格の勉強を中心に行なっていた。 ある日サークル仲間のB君が浮かない顔をしていたので「どうしたの?」とたずねた。B君いわく、隣の家のおじさんが50歳ぐらいで亡くなったとのこと。気さくな人でB君にも話しかけてくれるような人だったらしく、それで落ち込んでいるのか…と思いきや、B君はこう続けた。 「半年くらい前から、おじさんが自分の家の玄関が写った写真を見せてくるようになったんだ」 その写真は夕方おじさんの

禍話リライト「かわわら」(怪談手帳より)

形五六歳の小児のごとく、遍身に毛ありて猿に似て眼するどし。常に浜辺へ出て相撲を取也。人を恐るゝことなし。され共間ちかくよれば水中に飛入也。時としては人にとりつきて、水中へ引き入レて其人を殺すことあり。河太郎と相撲を取たる人は、たとへ勝ても正気を失ひ大病をうくると云。(略)河太郎、豊後国に多し。其外九州の中所々に有。関東に多し。関東にては河童(かはわらは)と云也。 『日本山海名物図絵 三』より「豊後河太郎」 小学生の頃の、とある夏休みの話だ。 おばけ好きのAくんは、その夏、

禍話リライト『引っ越しの家』

仲間の皆で廃墟……っていうより古民家ぐらいのところだったらしいんですけど、行ったんですって。ただそこがね、不動産屋の『管理しています』って看板は出てるんだけど、連絡先とかは書いてなくて放置してある。その時点で気持ち悪いな、よくそんなとこ行ったな、って話なんですけど。 外見は普通の2階建ての民家にしか見えなくて、「なんか普通じゃんね?」とか言いながら中に入ったら、どうも奥の方に仏壇がまだ残ってるなっていうのがちらっと見えたと。 「仏壇残すって怖いぞ?」と。普通に考えたら他は残っ

禍話リライト「予告の家」

 妻子ある男性が不倫相手とともに姿を消した、ということがあった。残された家族は捜索願を出して行方を探したが、ひと月経っても居所がわからない。レンタカーを乗り捨てたようだという情報が入った程度だ。クレジットカードは止めている。現金もいずれ尽きるだろう。どっかで死んでるかもしれないわーなんて妻が笑い飛ばした、その翌日。男性と不倫相手は、男性宅の庭の木で首を吊った。  遺族はすぐに引っ越したそうだ。葬式は出さなかったそうだ。妻と子を捨て不倫相手と心中した男性は、無縁仏として葬られた

【怖い話】 ヨーヨーの家 【「禍話」リライト 51】

 最初から最後まで、よくわからない話。  小学生の頃、友達の家に泊まったという。  お金持ちの友達だった。豪邸、というほどではないのだが、結構な広さの家だったらしい。  お父さん、お母さん、妹さんと友達の4人家族と晩ごはんを食べる。おかずももちろん、お米もなんだか、自分の家で食べているものよりいい味がする。  ちょっと見たことのないお菓子をいただいたりする。これも上品な味わいで、実に美味しい。  いやぁ、お金持ちの家って……お金持ちだなぁ。いいなぁ。   子供ながらにそう思

禍話リライト「鐘の音が聞こえる」

Aさんは子供の頃から不思議に思うことがあったという。 それは夕暮れ時になるとどこからともなく聞こえてくるあのボォン、ボォンという鐘の音である。 近くに寺があるわけでもなく、かといって結婚式場の鐘の音とも違うそれはいったい何処から聞こえてくるのだろう? 大人たちは何でもないかのようにしていることがAさんにとっては酷く不思議だった。 その答えに出会ったのは水木しげる先生の妖怪図鑑を読んだときのことだったという。 そこには山は酷く入り組んでいるため反響が反響を呼んで聞こえてくること

【怖い話】 ■# Щ腴 工業 【「禍話」リライト 50】

 どこまでが本当に起きたことなのかわからない、という。 「久しぶりに実家に電話したら、母親が言うんですよ。『小学校の同窓会のハガキが来てる』って。それで俺、懐かしいなぁと思って」  Sさんは生まれ故郷から離れて就職し、そこでずっと働いていた。 「年末年始やお盆に帰ってもよかったんですが、こっちにも友人がいましたから……それに、盆正月の混んでる時期に帰るのもおっくうでしたし」  気づけば5年以上、地元から遠ざかっていたそうである。  小学校の同窓会とは珍しい。もちろんは

禍話リライト「燃えた部屋」

◆この話は、二次利用フリーな怪談ツイキャスの「禍話」を書き起こしたものです。 真・禍話/激闘編 第10夜https://twitcasting.tv/magabanasi/movie/400246373 (1:47:00頃から) とある集合住宅の話である。 県や市が建てた六階、七階くらいまであるような立派な所だったそうだ。 そこの高層階に(仮にだが六階としておく)夫婦が住んでいたという。 夫婦には高校生くらいの娘がいたが、奥さんの方が神経質な性格だったようで子供の育て

禍話リライト「たのしい禍家」

 こういう親戚がいれば冠婚葬祭は助かるだろうなという印象の、明るい男だった。 「……怖い話があるんです、聞いてもらってもいいですか」  男はそう口火を切り、とある家にまつわる話を始めた。 ●  私、妻と小学生の娘と三人暮らしなんですけれどね。家を買ったんですよ、それが職場からは通える範囲で、娘も校区を変えなくて済みそうな場所にすっごく安い一戸建ての物件を見つけちゃって。中古とはいえほとんど新築と思えるくらい新しくて、それでこの値段なら全然買えるぞって勢い付いちゃいましてね

禍話リライト「先回りこっくりさん」

◆この話は、二次利用フリーな怪談ツイキャスの「禍話」を書き起こしたものです。 禍話X 第十五夜 (35:31頃~) 某月刊誌やテレビなどの影響もあってオカルトブーム全盛期だった頃のこと。 学校の七不思議やら都市伝説などが大いに学校を賑わせていた。 そんな中でも女子というものに欠かせないものが恋愛系統のおまじないだ。 それが結果としてマイナスなものになったりもするが基本的にする側は楽しんでするものである。 その中の一つにこっくりさん、というものがある。 漢字だと狐狗狸さん

禍話リライト「鬼婆神社」

 人が見てはならないものがある、という話。 ●  仲間内で「肝試しに行こうぜ!」ということになったそうだ。だがあまり怖過ぎるところには行きたくない。そこまで怖くなくて、けれど雰囲気はほどほどに味わえる。そういう都合のいい場所はないかと話し合ったところ、一人が「あそこはいいんじゃね? 鬼婆神社」と言い出した。  鬼婆神社。正式には神社かどうかも怪しいらしく、鳥居も鈴もないが本堂らしき場所は残っている。地元の者は一様に「鬼婆神社」と呼ぶ――そういう場所があるそうだ。 「それ

禍話リライト「ビルのスキマのヒロミさん」

◆この話は、二次利用フリーな怪談ツイキャスの「禍話」を書き起こしたものです。 震!禍話 第十夜 佐藤君スペシャル② アドレス https://twitcasting.tv/magabanasi/movie/453505759 (02:10ごろから) ある地方都市の大学のサークルで起きた話だ。 サークルといっても熱心な活動をしているわけではなく、だらだらと雑談などを垂れ流している溜まり場のような場所であったらしい。 少人数サークルというほどでもないが、積極的な勧誘はして