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読書日記 【安いニッポン 「価格」が示す停滞】

こんばんは。本日、日経新聞の記者である中藤玲さんの本『安いニッポン』を読み終わった。

今月の8日に出版されたばかりのほやほやの本だ。なので、中身はとても新鮮で、まだ情報が新しいうちに読めて良かった。

この本を読んで、私が今日本に対して抱いていた危惧感が更に強まった。日本は、素晴らしい国だ。人は真面目で、香港の人も言っていたが、嘘をつかないし人を騙そうとする人は割合としてとても少ないだろう。一般的にみんな働き者で、表面的には文句も言わずお給料が多くなくても一生懸命会社の為に働く。

お陰様で、提供商品やサービスの品質は最高で、値段は安い。今お金を稼いでいない身分としては、こういった国に暮らしていて本当にありがたい。だが、この安さは日本の労働者の報酬の安さから来ている。世界での日本と日本人の競争力を考えると、どうなのだろう。私は、日本人が能力に見合った報酬をそれぞれちゃんと受け取って欲しいと思う。

それこそ10年も前だが、タイやマレーシア等の東南アジアに日本の年金で悠々自適な暮らしをするという話がネットや週刊誌に出ていた。私も、その時はお金が足りなかったらそういう選択があるのかなと思っていた。

しかし、今は逆に日本で暮らした方が安いと思い始めている。例えば、最近実家を出る準備で、都心のアパート式ホテルに滞在する金額を調べていた。コロナ禍もあるだろうが、1ヶ月の滞在金額は光熱費もインターネット接続料も1週間に1度の掃除も込みで15万円程で、タイの中級のサービスアパートに滞在するのと同じくらいの値段だった。思った通りだ。タイ料理や果物、マッサージなど、タイの方が安いものはまだ沢山あると思うが、医療費や日本食等、タイでは中流以上に提供されるサービスは既に日本の方が安い。

日本以外では、お給料が毎年上がって行くのは普通の事だ。お給料も上がるし、物価も上がる。日本では、30年間もそれらは普通の事では無くなってしまった。この本では、いかに日本の労働力が安いのか様々な角度から説明している。

以下は、OECD (Organisation for Economic Co-operation and Development)に参加する国のデータだが、日本の平均年収は韓国、スペイン、イタリアより低い。

そして、労働生産性も低く、ここ30年で下がる一方だ。この本によると、生産性が低いのは、日本の製品の値段の付け方が低すぎるから。日本は労働時間が長いと言われるが、香港の様に同じ様に労働時間が長くても生産性が高い所はある。生産性は値段を労働時間で割ったものなので、値段が高ければ生産性が高くなる。もっと品質に見合った値段をつけて、日本のお給料を上げて欲しい。

その他にも、日本では良いお給料と待遇を求めて転職をする人は少なく、会社でお給料を上げる交渉もしない。そういった慣習もお給料が上がらない理由の一つだ。例えば、日本と反対に高いお給料への転職と社内交渉を繰り返す中国ではアニメーターの平均月収が杭州で52万円、北京で45万円だそうだ。日本では半分以下なのでは無いだろうか?

このままだと、日本の安さから、土地や、企業や、労働力から外国に買い占められてしまうのではないか?今に世界のサプライチェーンの下請けになってしまいそうで怖くなる。

最後に、本に書かれていた米コロンビア大学教授の日本の安さに関しての意見の一部を共有しておく。

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