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課長と部長と取締役と私 ‐姉・S子

鎌倉ネタを続けます。

先日、頼朝こと課長が、「飲みに行かない?」と言ってきました。
頼朝とは、同い年の気さくな仲なので、「なんか、悩みごとでもあるのか?」と聞くと「ない」と言うので、よくわからないけど、興味本位で誘いに乗ることにしました。

M美ちゃんもご存じの通り、我らが頼朝は、滑舌が悪すぎるので、私は終始「は?」「何?」「今なんつった?」と、北条政子ばりに凄みを利かせながら質問し、「あぁ、そういう意味か」「最初からそう言ってよ」と、会話の主導権を握りながら、お酒を飲んでいました。

定期的に「で、何の用なの?」と聞いても、「いや、特にない」と言うので、どうやら本当に何もなかったようなのです。
一体何なんだろう……と疑問に思いましたが、意外と盛り上がったので、二次会に繰り出すことにしました。

二軒目でも相変わらず滑舌が悪いので(酔っているから、さらに何言ってるかわからない!)、聞き返すのに飽きてしまい、ちょっと空気を変えたくなり、ある考えがよぎりました。

後白河法皇を召喚しよう……。

時刻は8時半。後白河法皇こと部長をお呼び出しするのは、なんとも失礼な話。でも、声を掛けたら絶対に来る! となぜか確信があったので、頼朝に「法皇様呼ぼうよ」というと、「え? 俺が連絡するの?」と聞いてくるので、「他に誰がいるのよ?」と返すと、「そうだよね」と言って、社用スマホをポチポチしだしました(酔っているので、御しやすい)。

15分後、頼朝がスマホを見てニヤリとし「法皇来るって」と言いました。さらに10分後、法皇様降臨です。
「珍しい二人が飲んでるね」と、近くで一人飲みを満喫していたらしい法皇様は、ご機嫌でした。

法皇様は一軒目で、〆のおにぎりまで召し上がってしまったそうで、乾き物しか要らないとおっしゃるので(私たちも雑炊まで食べ終わっていた)、枝豆とビール、私は白ワインを。頼朝は、心が乙女なので、カシスオレンジを飲んでいました。
いろいろと思い出話などをお話しいただき、なかなか良いムードで二次会終了。そのまま帰路につきました。

翌日、出社すると、最近なかなか会社でお見掛けしない取締役がいらっしゃいました。私は、取締役のビジュが結構好きなので「よし、ちょっかいを出そう」と思い、近づいて「わー、リアルKさんだー!」と声を掛けました。
取締役は、最近さらに出世してしまい、私のような下々の者と話すのが久しぶりだったようで、「ずっと引きこもってたから、これからは出社を多めにしようと思って」と嬉しそうに答えてくれました。
政子は、権力に弱いので「じゃあ、これからは頻繁にお顔を拝見できますね!」とお上手を言うと「ちょっといいかな?」と会議室に案内されました。

お上手がお上手じゃなくて、説教されるのかと冷や冷やしましたが「最近のメンバーはどう? 元気? 困ったことはないか?」と、一人出世して置き去りにしてしまった部下たちをとても心配して、近況を聞きたかったようです。
「淋しいですけど、みんな元気です。頑張ってます」と当り障りのない会話をして「最近、課長を頼朝に例えて、私は政子になって支えるごっこをしています」と言うと、「頼朝は、ちょっとポヤンとしてるくらいがいいんだよなぁ」と、大笑いしてくれました。
私は、調子に乗って「そういえば、昨日新部長と飲んだんですよ。部長は、後白河法皇です」と言うと、さっきまで大笑いしていた取締役の顔が急に真顔になり「まだ早い!」と言いました。

政子、どうやら社内政治の戦略を間違えた模様です。

取締役には、法皇より偉い役をあげなきゃ……。
なんだろう?
大王とかかな……。

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