🇵🇪ペルー旅行記🇵🇪 #1【NEW WORLD】

2012年3月。

僕達は、南米にあるペルーという国に上陸した。

これは、まるで僕がマチュピチュの第1発見者かのように振る舞うことを記していくペルー旅行記である。

前回のあらすじ

▶︎旅立ちの日

「いってきます」

出発をする時、僕は振り返って、実家の自分の部屋をゆっくり眺めた。

初海外、ツアーなし、男2人旅。いざペルーへ。

「もう、ここには戻ってこないのかもしれないな」

帰る予定はきっと冒険の邪魔になる。もう戻るつもりはない。そう決心して家を出た。

その2秒後に母親が「もう行くの？いってらっしゃい！気をつけて！お土産よろしく！」とテンプレート見送りを立て続けに連発してきた。

帰る予定がすぐにできた。

大学の卒業式の翌日である。ペルー旅行を決めたのは、その日から遡ること1ヶ月前ぐらいだ。

思えばそれからが長かった。このペルー旅行は全部で確か10泊11日ぐらいだったはずだが、準備に対して、精神的には8ヶ月ぐらいかかった。

前述した通り僕達は、初海外のくせに往復の航空券だけを買い、ツアーなしでペルー旅行を組むという、ほとんど光月おでんみたいな好奇心でこの旅に挑んでいる。

準備にマジで力を入れた。

「この旅行で特にこだわった点は？」と問われたら「準備」と答えるだろう。

あまり時間がない中でのパスポートやESTAの申請および取得、最低限コミュニケーションが取れるほどの英語力(スペイン語は10数えるところまでで諦めた)、地球の歩き方読破などなど。

景気付けに美味しいトンカツなんかも食べに行った。

さらには何度も言うように、ツアーを組んでいないので、向こうでのバスや列車や現地ツアー、泊まる宿も英語で予約していかなければならない。

こういう時、僕はだいたいGOに任せてきた。彼の勘と計画性、行動力にはいつも驚かされる。

ハーレーを学校帰りに衝動買いした(前回参照)ことに関しては計画性もクソもないが、実は彼は計画の化物なのだ。

1に対して10興味を持ち100調べて1000アクションを起こし、10000楽しむ。それがGOという男だ。

僕はと言えば、その10000を見て「50000乗っかる」という超楽ポジションをとっていた。

だが、これは男2人旅だ。さすがに任せてばっかりではいられない。GOに負担がすぎる。なので、僕もたくさん調べて、予約を取ったりして、準備に力を入れた。

今現在、僕に行動力があるのであれば、この時の経験が大きい。少なくとも何でも飛び込んでみようという度胸はついた。

それでもGOは先にいた。「なんかペルーって今こうこうこうでさ、こうらしいんだよ、でぇ、こうだとこうじゃん？だからこれをこうしてこうする方がいいんじゃないかと思うんだけど、どう思う？」みたいなことを言っていた。

「こいつ実はペルー8回目なんじゃないか？」そう思った。「どこが初海外なんだよ」と言うのと同時に、なんて頼りになるやつなんだとも思った。

そうして、この出発当日を迎えた。

この旅行のために買った激デカリュックを背負い、「荷物を詰め込みすぎてドアに突っかかって無理矢理引っ張ったらその勢いで坂道ゴロゴロ転がる」みたいな感じで普通に外に出た。

「インティ(ケチュア語で太陽)」

僕は晴れた空を見上げてそう言った。

インティ(太陽)は僕にこう言った。

「は？」

▶︎いざ、成田空港へ

「あの、すみません、第2ターミナルってこっちであってますか？」

初海外丸出しの大学卒業したてのかわいい僕は、成田空港で迷子になっていた。

飛行機といえば、それまでに沖縄へ行くための羽田空港しか利用したことがなかったので、不安でしょうがなかった。

手当たり次第、話をかけた。あの時、成田空港で優しくしてくれた人のことは皆好きになった。

「ここが成田空港か…」

旅の目的を達成したかのようなテンションだった。

続けて、「なんだろう、なんだか初めてな気がしないな…」と、以前に訪れたことがある方にシフトチェンジをして少しでも自分に自信をつけていると、間もなくしてGOも着いた。

「なんかさ（笑）成田空港って感じだな（笑）」

実際、成田空港だからだ。

2人ともどこか落ち着かない様子で、このままでは捕まるぐらい終始ニヤニヤしている。

大きい荷物を預け、探知機を通り荷物検査をする。何も悪いことをしていないのに、何か引っかかったらどうしようとドキドキする。

何も所持していないことを証明するためにも全裸になれる覚悟はいつでもできていた。

さぁ、このゲートをくぐれば旅が始まる。

卒業旅行とは言っているものの、これは、まぎれもなく「冒険」である。

過酷な旅が予想される。

大学は前日に卒業した。これからは僕達は大人の仲間入り。そう、これは大人としての第一歩なのだ。

僕達はもう大学生じゃない。

これから足を踏み入れる世界に、言葉はいらない。笑顔もいらない。振り返りもいらない。黙って背中で語ればいいのだ。

そうして僕達は出発した。

きちんと「大学生」が、きちんと「いってきます」じゃねぇか。

▶︎いざ、フライトへ

拝啓、日本の皆様。

僕達の居ない日本はどうですか？？勢力図は変わりましたか？？

そんなことを思いながら、楽しみにしていた機内食をバクバク食べた。

「とりあえず食べられるものを寄せ集めた」みたいな機内食だった。

「いなりとエビだけの寿司」を初めて見た。クラッカーも「PREMIUM」でどうにかしている。

ただ、「キャンプで食べるカレーは余計にうまい」みたいなニュアンスでは充分おいしかった。

冒険へのワクワクとは最高の調味料なのだ。

は？

フライトの時間は、アメリカまで12時間(ガソリンを入れるため)、アメリカからペルーまで7時間の、計19時間だった。とてつもなく長い。

4時間ぐらい経った頃だろうか。すでに日本時間では寝る時間だ。

隣を見てみると、GOが早くもエコノミー症候群にかかっていた。身長も高くガタイも良いため、窮屈そうだ。

「大丈夫か？」僕はどこででも寝られるタイプなので、GOを気遣った。

すると彼は気分が悪そうに言った。

「この操縦士、運転が荒い…」

飛行機の操縦に対する文句だった。そういえば車にしろバイクにしろ、こいつは完全にドライバー体質なのだ。全ての乗り物は自分が運転するべきだと考えている。

「俺が運転した方が絶対にうまい」とブツブツ言っていた。

今、空で最も頼もしいやつだなと思った。

僕はというと、爆睡したり、機内の映画を観たり、おやつを食べたり、たまに乱気流でガタンッってなってコーラをこぼしちゃったりして、だいぶかわいかった。

そうしてあっという間に経った12時間。

ガソリンを入れるために経由したニューヨーク。

初の海外はペルーの前にニューヨークになった。その滞在時間、わずか4時間。

何をしていいか分からなくて、おおよそニューヨークらしからぬファッションで、イエローキャブ(アメリカのタクシー)を眺めて、「本場の味だ」と言いながらコーラを飲んで終わった。

そうして、そろそろ集合時間かな？と空港内に戻ると、何やら英語でアナウンスが聴こえてきた。

「……suke…Shimazaki」

「え？」

「…and Ryusuke Shimazaki」

GOと僕の名前がニューヨークの空港でアナウンスされている。

「なんか呼ばれてない？え、全部聴こえなかったけど、良くねぇアナウンスだろ、これ」

GOと僕はめちゃくちゃ走った。向こうは犯罪が多いと聞く。犯罪者ぐらい走った。ニューヨーク最後の思い出は全力ダッシュだ。

このままでは英語で怒られて、英語で謝って、英語で言い訳をしなくてはならない。

遠目に見える、ゲート前の葉巻が似合いそうなアメリカ人。やばい、遅刻とか絶対に許さなさそう。捕まえられて独房に入れられて鎖に繋がれて警棒でボコボコにされる。

そう思いながら駆け込み土下座の勢いでゲート前につくと、

「もうすぐでフライトですよー」と、おもいっきり日本語で注意された。

僕達は「いや日本語しゃべれんのかい！！！」の威力を使ってそのままゲートをくぐった。

ペルーまで、あと7時間である。

つづく

ペルー旅行記なのにまだペルーに着いてないのなんなんだよ。

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