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インタビュー企画#1 柴田功校長先生 前編 ~ICT教育・オンライン授業~

皆さん こんにちは! EISです!
このコロナ禍で良くも悪くも、学びの形は大きく変わっていきました。
その代表的な事例として“オンライン授業”が行われ、「情報」という教科も新しく大学入試の科目になるなど、「ICT教育」が進みつつあります。

皆さんも一度は聞いたことがある 

  • あの「GIGAスクール構想 - 一人一台端末」とは何か

  • そしてコロナ禍で突如として出てきた“オンライン授業”では一体何ができるのか?

  • 数年後のPC教室はどうなるのか?

  • 改めて考える「学校に行く価値」とは?

中高生の皆さんも実際にオンライン授業を受けたりと、思うことはたくさんあると思います。

ということで、今回は、そのコロナ禍を 校長として、情報教員として、様々なことに取り組んだ 
現在、希望ケ丘高校の校長である 柴田 功 校長先生にお話を伺いました。

是非自分の考えと比べながら読んでみてください!
※本記事は2部編成になります。

前編は主に柴田校長先生のこれまでの取り組みを掲載しています。
後編は主に柴田校長先生の「PC教室」「オンライン授業」
「学校に行く価値」についての考えを掲載しています。

神奈川県立希望ケ丘高等学校

前編

▶柴田校長先生の経歴紹介

・もともとは物理教員として学校の先生に
・川崎北高校では情報科の授業を先行実施
・神奈川県立総合教育センター、神奈川県教育委員会の指導主事を歴任
・その後、コロナ禍の中で、川崎北高校の校長となる
・そこで校長として、オンライン授業のやり方や実践事例を発信
・2022年、現在 希望ケ丘高校の校長として着任

柴田校長はまだ情報という教科が始まる前に、情報の先行授業を行い、また、以前教育委員会でやっていた仕事が、あの「GIGAスクール構想 - 一人一台端末の整備」でインターネットの回線やアカウントを整理したり、端末を整備していたそうです。現場に戻られた後にも、オンライン授業の推進に取り組んできました。コロナ禍ではZOOM○○会という意見交流会も開催しているそうです。今回は、その当時の話やオンライン授業などに対する考えを聞いてきました。

▶川崎北高校での取り組み

情報の授業を先行実施

情報の授業を先行実施という形で行いました。1995年、川崎北高校に着任した時にパソコン教室があまり使われていなかったので、情報の授業を選択科目でやりたいと思ったんです。それで授業を開設すると、生徒からは抽選で人数を絞る程の人気があったんですよ。(柴田校長先生)

情報の授業で行ったこと

その頃はワープロ・表計算・プログラミングの授業をやりましたね。新しいことをやったのはホームページを作るという授業で、生徒が興味を持って自分の趣味や頑張っていることを作ったホームページで情報発信する授業をしたんです。生徒のモチベーションが高く、放課後遅くまで残っている人もいましたね。


先行実施―その反響は?

2000年に、情報の選択科目の希望者が増えていったので全員に学ばせてしまおうと思って、まもなく情報という教科も始まるので2年前倒しで情報の授業を先にやることにしたんです。教科書もなかったんですけど、授業を行っていました。その頃にだんだん注目されて、いざ情報という教科が立ち上がり、周りがどういうような授業をしたらいいか悩んでいた時に、川崎北高校が先行して授業を行っていたんです。そこにいろんな人が取材や見学・視察に来たりしましてね。生徒はそういうことがあると、どんどん頑張るようになっていって、 その結果どんどん良い授業になったんです。生徒がプレゼンテーションをやったりホームページを作ったりして。それがちょうど当時の情報という授業の形にあっていたんですね。

HP作成を授業に取り入れてみた理由

自分がHPを作っていたことが大きいですね。ホームページを立ち上げるといろんな人が見てくれるんです。アクセスカウンターがだんだんと増えていくのが、たまらなく嬉しかった。感想もたまに来てくれて。それで、情報発信すると反応が返ってくる。その喜びを知って、生徒にその喜びを一緒に共有したかったから、そういう授業をやろうと思ったんです。



校長として着任したのは、生徒のいない学校―まずはできることから

2020年、校長として現場に戻って、その時に川崎北高校という自分の経験もあった学校に着任したので、いろいろとやり易かったです。そのときはちょうどコロナの臨時休業の時で、4月に校長として着任し、生徒と一緒に色々なことをやれるなと楽しみにしてたのが、生徒のいない学校に着任しちゃったんです。入学式と始業式だけ顔を合わせて、あとはもう約二カ月くらい会わなかったですね。学校に生徒は居ないが、なんとか学びを続けてもらいたいということで、校長に着任する前は「ICT推進担当課長」という職で、今の県立高校のネットワークや端末の地盤を整備してましてね。でも、川崎北高校に着任するとあまり使われていなかったんです。すごくがっかりしましたね。生徒用のパソコンはピカピカだし、あまり使われていなかった。

まずはできることから
着任すると、パソコンがあまり使われていなかった。なので、まずは先生にパソコンを配りましょうと。先生たちに配って研修を行ったんです。生徒がいないので研修をやって、その時は自分で講師をやりました。「googleのサービスはこんなのがありますよ」とか「共同編集できますよ」とか。そうすると、だんだん先生たちも使えるようになって、「じゃあオンライン授業も少しずつやれるようにしましょう」と少しずつやり始めたんです。まずは課題を配信したり提出したりしました。でも、それは授業の形ではない。ただワークシートを配って回収しているだけで、それは生徒もつらいだろうなと思って、「授業動画を作ろうよ」と呼び掛けをしたんです。しかし、なかなか最初は、先生たちも「なにそれ」という反応で、そんなときに自分で「授業動画を作ろう」という動画を作ったんです。それを最初に川崎北高校の先生たちに配信したところ結構評判が良かった。なので、「全部の学校に見えるようにしちゃおう」と限定公開をやめて全体公開にしたら、ものすごい反響があったんです。あの頃YouTubeというのは学校で使うという発想はなかなかなくて「YouTubeなんて学校の敵だ」みたいな感じでフィルタリングさえ掛かっていましたからね。学校のネットワークからは見れないような時代でした。

オンライン授業実現に向けて
自分でYouTubeに動画のせたら、あっという間に1万回再生されて、すぐなんとかしようと思いましたね。
オンライン授業とはどのようなものか誰もイメージが沸かない中で、
「オンデマンド型やライブ型がありますよ」とか
「スマホがあれば撮影できますよ」とか
「何回も撮り直さずに一発撮りでもいいですよ」
といった言葉が多くの先生に刺さったんです。
「編集しなくていいんだ」「一発撮りでもいいんだ」
「スマホでいいんだ」「5分ぐらいでいいんだ」
それで、みんなすごく気が楽になって、授業動画を作るきっかけになったといろんな方から言われました。それから川崎北高校も授業動画を作る先生がだいぶ増えて、課題を配信回収だけでなく、実際に黒板で授業をやっている動画を配信したりして何とか学びを続けようとしたというのが川崎北高校での取り組みですね。

操作研修―まずは、自分が手本に

自分は研修で意識していたのは先生たちにデモンストレーション、見本をみせようということですね。先生たちに「まずやってごらん」ではなく自分も「やってみたよ」とだから「先生たちもやってごらん」というやり方をやってきました。まずは自分がやってみると。その後はライブ型の授業を校長と先生でやりました。そうすると、みんなこんなふうにやれるんだと気づく。YouTubeの動画もそうだし、あらゆるものを「まずはやってみる」っていうのを見せて、そのイメージをもってもらった上で研修をやると前向きになりますよね。そのための操作研修なんだなと思います。操作研修から入ってしまうと、何のためにやっているのかわからなくなる。例えばアンケートフォームをつくり生徒からの意見が集まってくる。それでこんな風にアンケートができるんだって先生たちも実感するし一歩一歩、スモールステップでタイムリーな研修をやっていました。何回も繰り返し行ってね。はじめはよく分かっていなかったがイメージができた。それが大きかった。 



▶これから希望ケ丘高校で取り組みたいこと

授業改善に力を入れようと思ってます。一人一台端末を手にしたけど、それを使う授業はだいたいうまく行かない。「授業をよくしよう・こんな授業にしていこう」 その中に一人一台端末というものはすごく噛み合う。だから、そういう授業改善に取り組んでいこうと思う。

一人一台端末の目的

ただ、「一人一台使うこと」自体をあまり目的化しないで、あくまで道具・手段として使うのが大切。自分で発表したり、SSHの科目だけでなく、探究したり話し合いをするとか。どの授業でも発表するとか。レポートを書くとか。私が目指しているのは全ての教科でポートフォリオを作ってもらいたい。デジタルで digital portfolio― 一つの授業ができるまでの進行のプロセスや自分のそのときの振り返りがまとまったもの 先生からもらったプリントをファイリングするそれがデジタルになったようなもの―動画も静止画も音声もすべてつなげられる。それを取り込みたい。一人一台端末を保護者に負担してもらった目的はそういうことができるように。自分で情報をまとめて発信するようなことのために一人一台端末を買ったのだと。生徒には、情報の受け手ではなく、発信側になれるような大人になって欲しいと。自分の考えを発信したり提案したり、いろんな人と繋がることができる大人になってほしいと思います。

▶ZOOM○○会

ZOOM○○会の始まり

私は、飲み会が好きで、コロナ禍になっちゃって、それがぴたっと出来ない時代になったんです。家と職場の往復だけというのはストレスでしたね。何とかできないかというので、最初は2年前の4月ちょうど臨時休業の時に四人くらいでZOOM飲み会をやりまして、案外面白いなと感じたんです。「また来週やろうね」なんてやっているうちに、そのことをFacebookに載せたら、参加する人が増えて、だんだん広がっていったんです。

テーマを決めよう
そうすると、人数が多くなって、話ができなくなったり、テーマが散漫になったりしたのでテーマを決めるようにしました。例えば今週は「GIGAスクールのこと」だったり「オンライン授業はどうやるの」とかだったり「情報の授業はどんな工夫をしていますか」というようなテーマを毎回決めたんです。そうするとテーマによって参加する人も今日のテーマは参加しようと選んで来てくれる。だいたいそれで30人くらいの人が毎週集まって話すんです。

会議じゃないから自由に話せる
その集まりは、セミナーみたいに会議じゃなくて、飲み会だから自由に言いたいことが話せる。そうするといろんなアイディアが飛んできて、いろんなノウハウを相手も自分も共有できる場なんだなと、だんだん注目されるようになっていきました。意外にテーマは真面目で「オンライン授業、ICT」そんなようなテーマが多い。テーマによっては50人ぐらい集まったんですよ。テーマの設定が以外と難しいんですけどね。あるときは沖縄から北海道の先生まで参加していて、同じ画面に服装や気候が全然違う人がいるのは面白かったですね。

どんな人がZOOM○○会に参加しているのか
ZOOM○○会に来る人は高校の情報の先生が多いですけど、大学の先生や文部科学省の調査官、一般の民間の企業の方。たまに保護者や高校生も来るんですよ。


テーマは自分の○○を

自分の中でもやもやしていることとか、うまくいっていないようなことをテーマにしたり、すぐ学校で実行できるようなことをテーマにするんですよ。そうしたら、いろんな立場の人がいるので様々な視点からのアイディア・ノウハウを頂いて、それが明日からの仕事のモチベーションにもなって、それが上手くいくと伝えたくなる。そのサイクルが生まれている感じがしますね。実は、YouTubeで配信した動画の作り方もZOOM会から取り入れたものがあるんです。それほどZOOM○○会という存在は大きかったですね。




前編 まとめ

柴田校長先生が情報の授業をやろうと思ったきっかけは、
これからの情報の授業は世界に情報発信をして行くというものの喜びや交流
これを生徒と一緒に共有したかったから
これまでの授業のように学校の中で完結させるのではなく、世界に発信するというのがこれからの情報科のポイントになりそうです!

情報の授業の先行実施はもちろん、オンライン授業も教科書や前例がない中で、積極的に取り組んできた柴田校長先生の行動力はまずは自分から挑戦してみるというのが大きく影響していると感じました。
そう考えれば、今では当たり前になったオンライン授業。あの頃、先生たちは手探りで「どうやってやるんだ」という状況で頑張っていたんですね。

ZOOM○○会には、保護者や高校生も来ていたなんて驚きました。
テーマには「情報科やオンライン授業」に関するものが多いそうです!
自分の居場所に関係なく、自分や相手の意見を気軽に交流できる場を作れるのは、オンラインの強みですね。
ZOOM○○会は毎週金曜日に行われているので中高生の皆さんも気になるテーマがあれば、参加してみてはどうでしょうか?


後編へ続く
後編は「学校に行く価値」や「情報」を学ぶ理由などが載っているのでぜひチェックしてみてください!

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