物理学者は熱を操る:フォノンエンジニアリング
熱を操るというと、不思議な力か何かかなと思われるかもしれませんが、人間の英知を使えば、熱を制御することも夢ではありません。
私の身近に専門家がいるうえ、私自身は専門ではないのであまり詳細は書けませんが、とても面白い技術なので、少しでも広がればいいかなと思っています。
いきなり難しい話をしてもわからなくなってしまうので、まずは身近なところから始めていきたいと思います。
いったい何につかえるの?
フォノニックエンジニアリングはどんなもので、いったい何に使えるのでしょうか?細かいことはさておき、まずはその応用例について紹介します。
簡単に言ってしまうと、フォノニックエンジニアリングは熱を制御する技術です。この技術が使えるようなると排熱を再利用したり、熱から電気を作ったりできるようになります!
※ちなみにトップ画像は何の関係もありません。
今回はちょっと難しい内容なので、ゆっくり進めていきましょう
そもそも熱とは
そもそも熱とは何なんでしょう?
これはとても難しい話になってしまいそうですが、ここでは物(固体)の熱さにフォーカスしてお話します。(炎とか溶岩とかはちょっと置いておきましょう)
基本的に物の熱(温度)は物質がもっているエネルギーが関係しています。例えば、金属とか半導体のような固体は原子が規則的に並んだ結晶でできています。
この原子が規則的に並んでいるものの、温度がある限りぶるぶるとわずかに振動しています。つまり、原子の振動が大きい時が熱く、あんまり振動していないときが冷たいということになります。
普通はこんな感じでブルブルしている
これを模式的に表すと、原子がばねでつながった状態で描いたりします。
そして熱が伝わるというのは、このばねの振動が伝わっていくことになります。
振動?ってなると思いますが、それは最後まで読んでいただければ雰囲気わかるかと思います。
このような説明をしてしまうと理科の授業を覚えていれば違和感を覚えるはずです。
「金属が熱をよく伝えるのは電子が動きやすいからだ」って習いますよね
これは、これで正解です。しかし世の中には電子が熱を伝えない(伝えにくい)物質が存在するのです。半導体やセラミックスといった電気を通さない(通しにくい)結晶は、原子の振動がばねのように伝わることで熱が伝わっていきます。
身近な例で考えると茶碗とか湯呑といったセラミックス(陶器)に熱々のお湯を入れたときに熱を伝えるのは電子ではなくて振動です。
フォノン登場
ここからようやく本題のフォノンに入ります。
先ほど、原子の振動が伝わって熱を伝えると書きましたが、正確には格子振動というものが伝わるという表現になります。
格子振動ってなに?ってなると思います。実際、結晶中の原子は上の図のようにばねでつながっているイメージです。このばねの伸び縮が振動となって伝わっていくのが格子振動です。
この格子振動は振動なので熱が波として伝わるわけですが、これを粒子としてみると熱が粒として移動しているようにも見えるよね、とも言えます。この熱(格子振動)の粒子のことをフォノンといいます。
ばねの振動を粒子にするなんて、だいぶこじつけじゃない?って思われるかもしれませんが、数式的に物理的にこのような科学が存在します。
以前、電子の集団振動があたかも1つの粒子のように見えるプラズモンを紹介しました。フォノンもプラズモンもそこに本当は粒子があるわけではありませんが、粒子として扱っても問題ないという事実があります。このような仮想的な粒子を準粒子といいます。
ちなみに、フォノンは(格子)振動を表しているので、熱だけでなく、固体中の音の伝わりも表すことができます。
ちょっと意外かと思われかもしれませんが、音も熱も同じなんですね。
今回はここまで!
引き続き次回は、熱を操るフォノニック結晶について紹介したいと思います。↓
注意:
フォノンの説明は非常に難しくて、正直学術的にはかなり雑な説明になっています。私自身、記事の内容は自分なりに理解してかみ砕いていますが、専門的に研究しているわけでないので、間違ってることもあるかもしれません。
あくまで、この記事は雰囲気を知るぐらいに使ってもらえればと思います。
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