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2つの顔を持つヤヌス粒子

裏表がある人は恐ろしいですが、裏表がある微粒子はこれからの社会をより豊かにしていくでしょう。

今回は、1つの粒子が複数の顔を持つヤヌス粒子ついて紹介します。
なんだその変な名前の粒子は?と思われるかもしれませんが、光を当てると生き物のように動きだしたり、複雑な構造体を作り上げたりと非常に面白い性質を示します。


ヤヌス粒子とは

あまり一般的ではないですが、ヤヌスとは顔が2つある神の名前で、ヤヌス粒子とは1つの粒子に2種類の表面があります。この2つの異なる顔(表面)は異なる特性をもちます。
ちなみにヤヌスは1月の英語Januaryの語源らしいです。

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ヤヌス粒子の2つの異なる表面とは、半分は水に濡れやすい親水性・もう半分は水に濡れにくい疎水性といった具合です。だから何だ?といわれそうですが、2つの性質を持つということは、1つの粒子が2つの仕事をできるようになるわけです。

ヤヌス粒子の作り方

ヤヌス粒子は小さいため作るのにもコツがあります。職人が片面だけ色を塗るというようなことはできないわけです。
ここでは現在行われている作り方を簡単に紹介していきます。


マスク
最新の装置で小さな粒子の片方だけ色を塗るイメージです。人の手ではできませんが、現在の科学技術を使えば可能になります。
粒子を界面に整列させて固定して、上からガスを吹きかけて片面だけ違い素材の表面にしてしまいます。その後、固定されていた粒子を自由にしてやれば完成です。

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自己組織化
2種類の分子でできた紐状の高分子(ポリマー)は形を変えて複雑な形状をとることができます。このちょっと特殊なポリマーを使うと紐状だったものが1つの粒子になります。この時、2種類の分子の仲が悪く2つの領域に分かれると、1つの粒子に2つの領域(表面)が実現されます。

他にもヤヌス粒子を作製する方法はいくつかあり、最新の研究ではより複雑な構造や扱いの難しい素材に挑戦されています。


何の役に立つの?

ヤヌス粒子は2つの異なる表面を持つため、普通の粒子とは異なる性質を持ちます。

医療・バイオ
片面にウイルスに反応する抗体を付け、片面に光/磁気応答する表面を作ったヤヌス粒子は医療用として期待されています。この粒子は体内でウイルスに反応してくっつき、外から電磁気的応答をもって調べることができます。
これは精密なウイルス検査に期待されています。

繊維工業
片面が親水性、片面が疎水性のヤヌス粒子を繊維と混ぜると繊維側に親水基がつき、繊維表面には疎水基がくっつきます。するとなんの特徴もなかった繊維の表面に水をはじく疎水性粒子がついていることになるため、水をはじく繊維が完成します。

電子デバイス
片面が白、片面が黒のヤヌス粒子使った電子ペーパーが提案されています。白黒ヤヌス粒子を一面に並べた電子ペーパーに電気を流すと、あるところは黒面が上に残りは白面が上になります(オセロをイメージするとわかりやすいです)。
それはまるで白いディスプレイ状に黒い粒子で文字が書かれるようなイメージです。
1画素が1粒子といった感じなので、電気応答の良い小さな白黒ヤヌス粒子が開発されると、より高精細で高速に動くディスプレイが完成します。

新材料
ヤヌス粒子は集まって球状になってみたり、数珠のようにつながって紐のようになったりと様々な構造を形成します。
または条件がそろえば規則的な構造を作ったりと多彩なふるまいを見せます。

ヤヌス粒子は光や磁気(電磁場)、pHといった環境に依存して粒子間の相互作用が変わります。これを人間の手で制御することで粒子のふるまいを操ることができます。


最後に

また最近では日本の研究グループによって3つの顔を持つアシュラ粒子と呼ばれるものも作製されています。3種類の高分子によって構成されており、3つの特性を持つことができそうですね。(ネーミングもかっこいいです)

今回紹介したようにヤヌス粒子はナノ~マイクロスケールの小さな”ものづくり”の研究者・技術者にとっては、とても面白い性質で、この特性を用いて新たな材料を開発しようとされています。

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