結晶性高分子とは
ゴムやプラスチックといったやわらかい高分子を分子レベルでみるとその名の通り非常に長く分子が連なった長いひも状の物質であることが知られています。
一般的に、そのようなひも状の高分子は絡まりぐちゃぐちゃな状態になるように思えますが、種類や条件によっては結晶になるものもあるんです。
結晶というと雪の結晶や金属、半導体といった固いイメージを持つかと思いますが、結晶というのは物質が規則正しく並んだ状態を指します。
つまり、ひも状であってもきれいに並んでいれば結晶になるんです。
今回はそんな結晶の性質を持ち合わせる高分子である結晶性高分子について紹介したいと思います。
誰がそんなのに興味があるのか?なんて言わないでくださいね。完全に個人の興味で調べました。まあ、たまにはそういうのもいいですよね
結晶性高分子とは
結晶性高分子とは、下の図に示すようにひも状の高分子が規則正しく並んだ物質を指します。何か特定の物質名というわけではなくて、分類の一つと思えばいいでしょう。
(赤丸で囲ったところが結晶になってる部分)
例えば、ポリエチレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタラート(PET:ペットボトルの原料)などが、結晶性高分子であると知られています。
え!?ペットボトルって結晶なの?って思われるかもしれませんが、実際にはそうではありません。
というのも、結晶性高分子というのは100%結晶になることはないんです。とっても長いひも状の分子の内、一部が規則正しく並ぶことができるものを結晶性高分子と呼びます。さらにペットボトルは少し事情が異なります(後述)。
つまり、結晶性高分子は結晶成分と結晶ではない非晶質成分が混ざり合った状態の物質なんです。
また種類や製造条件によって、どれくらい結晶化するかも変わってきます。この全体の内どれくらい結晶の成分が含まれているかを結晶化度といい、X線を用いて調べることができます。
結晶性高分子の特徴
さてさて、結晶性高分子がどんな構造をもっているか分かったところで、その特徴についても見ていきましょう。
結晶性高分子は、結晶成分を持たない非結晶性高分子に比べて透明度が低い傾向にあります。これは結晶性高分子が、内部に持つ結晶成分と非晶質成分で光に対する性質(屈折率)が異なるため光が乱反射するため透明度が落ちるそうです。
詳しくはこちらの参考サイトをご覧ください。
そのためペットボトルに使用されるPETは結晶にならないように早めに冷やして作ります。一般的に原子や分子といった小さな塊はゆっくり冷やすことで規則的に並ぶんですね。
また結晶性高分子のほうが薬品に対する耐性が高いようです。これは結晶状態のほうが薬品との反応性が悪いからでしょう。
覚えている方がいたら驚きですが、以前紹介したでんぷんも結晶状態では体に吸収されにくいという特徴を持ちます。分子がぐちゃぐちゃに並んだ非晶質(アモルファス)状態になっているほうが反応しやすく、逆に分子がきれいに並んでいる結晶状態では反応しにくいという点はよく似ていると思います。
最後に
今回は高分子が結晶という少し不思議に思える、でも意外と身近で使われている結晶性高分子について簡単に紹介しました。
結晶性高分子の特徴から、ペットボトル一つとっても作り方を考えなければいけないというのは面白い話ですね。
世の中の物質は原子・分子レベルで見てみるといろいろと不思議な魅力がいっぱいあります。今後もそんなミクロな世界について紹介していければと思います。
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