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AIの力で心臓をきれいに撮影する技術

心疾患と呼ばれる心臓病は現在死亡率第2位となっており、がんに次いで非常に深刻な問題になっています。

将来的には心疾患が第1になるなんて話にもなるぐらい重要な医療の課題ですが、お医者さんが正しく診断を下すには心臓の様子をしっかりと観察する必要があります。

そこで大切な技術がX線CTです。今回はそんなCTをAIの力を使って 見やすくする手法について紹介したいと思います。

X線CTってなに?という方は以下の記事を読まれたからだとより理解が深まるはずです!

AIを使ってより高精細に

個人的になんでもかんでもひとくくりにAIというのは気が載らないのですが、今回の手法はニューラルネットワークと呼ばれるAIの一つです。わかりやすいように引き続きAIと書くことにします。

X線CTの観察ではさまざまな点に注意しなければなりません。それは装置の測定条件や患者さんの状態など本当にいろいろあるんですね。

その中でもスライス厚というものがあります。CTでは体を輪切りにして観察します。

輪切りにするというとちょっと怖いですが、X線は体を通過するので痛くも痒くもありません。そしてその時に輪切りにする間隔がスライス厚です。

スライスする幅が細かいとその分きれいに撮影でき、逆にスライスする幅が広いとCT画像はぼやっとした感じになってしまいます。

そうはいっても観察や測定において小さい・細かいというのは技術的にどんどん難しくなっていくのです。

すると、細かくスライスすることはできても、現実的に毎度毎度細かくスライスすることなんて医療の現場では不可能になってしまいます。

そこでAIを使うんですね。

AIは教師データというお手本になるデータを使って学習します。その際に同じ心臓を細かいスライスと広いスライスで観察した時のデータを使います。

そうすることで、高精細な画像(細かいスライス)とぼやけた画像(広いスライス)が見た目は違うけど、同じものを見ているんだ!とAIに学習させるわけです。

なんだかAIの頭良くなったのかなと思いますが、これは数学的に計算して高精細な画像とぼやけた画像の関係性を人間には理解が難しいレベルで変換する関数のようなものを作っているだけなんです。(ニューラルネットワーク)

要は摩訶不思議な力を使っているわけではなくて複雑な数学をしているとイメージすれば良いですね。

少し脱線しましたが、こうしてAIは広いスライスで撮影したすこしぼやけた画像を見ると、これを高精細な画像にするならこんな感じになるんじゃない、という提案ができるようになるわけです。

つまり、学習していない初めて見るデータを使っても、AIにデータを渡すときれいにするならこんな感じといって、ぼやけた画像をきれいな画像にしてくれます。

こちらキヤノンのホームページにPIQEで撮影したきれいなCT画像が紹介されています。

なんだがすごい技術ですが、この手法を使うことで、これまで見てきたぼやけた画像もある程度きれいにすることができますし、なんならあれこれ工夫して細かいスライスできれいな画像を取らなくても、これまで通りの方法で撮影した画像をAIに見せればきれいにしてくれるということになります。

最後に

今回はAIを使って心臓の画像を高精細にする

について紹介しました。

最近流行りのAI技術ですが、その進歩は本当に目覚ましいですね。

一方で、AIをの技術はそう簡単に利用することができません。というのも、こんな素晴らしいAIができたならみんな使おう! と言いたくても、撮影条件やCT装置の条件などが正しく設定できていないと正しい結果が得られません。

つまり、まだまだ万能からは程遠いということになります。ただ、このような素晴らしい技術はビジネスの波に乗れば、一気に普及していくと思いますので、近い将来私たちの身近なところに来ているかもしれませんね。


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