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【フォトルミネッセンス】破壊せずに半導体の中身を見る技術

前回、光る石である蛍光鉱物について紹介しましたが、この結晶が発する蛍光現象は現代科学に様々なメリットを享受してくれました。

中でも、現代の半導体産業では結晶の中身を破壊せずに見るというのが大きな課題となっており、それを実現する方法の1つとして蛍光現象をベースにしたフォトルミネッセンスが挙げられます。

今回はそんな現代科学を支えるフォトルミネッセンスについて簡単に紹介していこうと思います。

なぜ非破壊でないといけないのか?

フォトルミネッセンスに限った話ではありませんが、材料工学と呼ばれる素材の分野では非破壊検査がとても重要になってきます。

特に半導体素子では、高品質な半導体結晶が求められます。つまりきれいな結晶ということですね。ここでの“きれい”というのはぱっと見の話ではなくて、原子の配列を意味します。ちょっとわかりにくくなってきましたね。

結晶というのは原子が規則正しく並んだ構造体です。しかし、自然はそう単純ではなくて、所々原子が余分に入っていたり、逆に原子が抜け落ちていたりする領域が存在します。この原子レベルのズレが結晶の性能に大きく影響を及ぼすことが知られています。

この原子レベルのズレを欠陥といいますが、この欠陥は結晶の内部の状態であって、表面を直接顕微鏡で観察しただけでは見えないことの方が多いんです。電子顕微鏡の技術を使えば見えるとは言え、その際にはとても細かくしないといけないため、破壊検査となってしまいます

ところが産業では作った製品をその都度バラバラに破壊していたら売り物になりませんよね。そこで破壊せずにしかも結晶の内部まで観察する手法というのが非常に重用になってくるわけです。

その方法の1つとして、フォトルミネッセンスがあります。

フォトルミネッセンスとは

基本的な原理は前回の蛍光鉱物の原理と同じです。

紫外線などの光により結晶内の電子が励起されてそれが元の状態に戻るときに放出する光、その現象や方法そのものをフォトルミネッセンスと呼びます。

半導体産業でも同様に作製したサンプルに光を照射し、それによって結晶が発する光を観察してやります。簡単にフォトルミネッセンスが見れたり、美しく光ったりということはないかもしれませんが、そのような微量な光でも超短時間で消えてしまう光でも今の技術を使えば検出することができます。

さらに検出した光を波長ごとに分解(分光)して、詳細に光の性質を調べるんです。

分光したデータは素人目にはなんだかよくわからないグラフが出てくるだけです。もちろん、そのグラフを調べることでわかることはたくさんあるんですが、正直そんなのわからないよ! となる人が多いでしょう 。

ただ嬉しいことにフォトルミネッセンスではマッピングと呼ばれる可視化手法が一般的になっています。各点において検出されたフォトルミネッセンスの結果から重要な情報を取り出して、色分けしてやることで見た目にもやさしい、わかりやすい画像として見ることができます。

参考元

例えば、マッピングしてやると欠陥のある場所は正常な部分と違って見えます。これを見れば一目瞭然ですよね。

この結果をもとに、欠陥のない場所を選択的に利用することも可能ですし、どのようなメカニズムで欠陥が生まれたのか考えることも可能です。このようにフォトルミネッセンスは半導体産業を陰で支えてくれている存在でもあるんですね。

今回は半導体内部の欠陥検出にフォーカスを当てて紹介をしましたが、フォトルミネッセンス自体はもっと幅広い領域で利用されています。身近なところでは蛍光灯もフォトルミネッセンスですし、蛍光塗料や、花火の色を作る炎色反応なんかもフォトルミネッセンスの一種です。

そう考えると非常に幅広い領域でこのフォトルミネッセンスが利用されていることがわかると思います。

最後に

今回は半導体産業には欠かせないフォトルミネッセンスを紹介しました。

蛍光鉱物というちょっと不思議な石ころの研究が長い時を経て、現代の半導体産業にまで受け継がれているというのはとても興味深いですよね。

全然関係がなさそうなことが実は科学の世界でつながっているということは多々あります。そういった気づきを得られると新しい学びにもつながるのではないでしょうか

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