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【光を蓄える石】暗闇で光る蛍光鉱物とは

現代人は蛍光灯やLEDによりいつでもどこでも光を手に入れることができる用意なりましたが、昔の人々にとって光というものは貴重なものでした。

そんな光がまだ貴重だった時代に注目を集めていたのが光る石です。

この光る石というのは自然界にあることから現代でも出会うことができます。実用的なものとしては使われていませんが、この光る石の研究によって築き上げられた科学は現代の半導体産業などで大変重宝されているんです。

今回は、そんな光る石である蛍光鉱物について紹介したいと思います。

蛍光鉱物とは

その名の通り蛍光を発する鉱物(石)のことですが、そもそも蛍光とは何でしょうか?

読んで字のごとく、蛍(ホタル)の光のようにボヤっとした光のことです。

それではいったいどうやって鉱物は蛍光を発するのでしょうか?タネも仕掛けもないなんてことはないですよね。

当然、何もしていない蛍光鉱物を見ていても蛍光を発することはありません。

まず蛍光を発するためには、蛍光鉱物に光を当てなければなりません。

光をあてることで、鉱物の中に光を蓄えて、それが暗闇でボヤっと光るわけですね。

多くの方は光を蓄えるなんてことができるんだ!となるかもしれません。一方で、物理を知っている方ならそんなことが容易にできるとも思えないでしょう。

たしかに光を蓄えるというのはある意味正しいんですが、比喩的な表現とも取ることができます。

というのも、実際に鉱物が蓄えているのは光そのものというよりも、光によって与えられたエネルギーを蓄えているというべきです。(もう少し正しく言うならば、光のエネルギーと相互作用して結晶内の電子状態が変わっているということです。)

ちょっと話が複雑になってきて、よくわからないという方も多いでしょう。

ここからはかみ砕いて蛍光の原理を紹介していくことにしますね。

蛍光の原理

まず大前提として光がなにものか?ということを知っておく必要があります。

光は電磁波と呼ばれる波であり、同時に光子と呼ばれる粒でもあるというよくわからないものなんです。ただ今はそんな難しいことを考える必要はなく、単純にエネルギーを持った波とイメージすればいいでしょう。

そして光が物質に当たるということはそのエネルギーと物質の間で相互作用が起きているということです。それは時に太陽を浴びてポカポカ暖かくなるということと大枠同じです。

つまり、暖かくなる現象というのは光のエネルギーを受け取って熱になっているとも言えますね。

さて、蛍光鉱物の話に戻ると、光により与えたられたエネルギーにより鉱物内の電子の状態が変化します。

中学か高校で習うかと思いますが、物質というのは基本的に原子核の周りを電子がまわっていると言われますね。電子の軌道は原子の種類や結晶構造などの周りの状態に応じて変わります。

そして、蛍光鉱物の場合は光が当たると、受け取ったエネルギー分だけこの電子の軌道が変化します。これを励起状態と呼びます。

この励起状態というのが光エネルギーを蓄えているとも表現している状態なんです。

当然、励起状態というのはその物質にとって不安定な状態です。そのため電子はもとの軌道に戻ろうとします。

電子が元の安定な軌道に戻る際、受け取ったエネルギーを放出しなければなりません。この時、結晶格子の振動(=熱)になったり、光になったりするわけです。

この放出される光こそが蛍光なんです。

蛍光の色は何で決まる?

ここまでで、蛍光鉱物とその原理について理解できたかと思いますが、蛍光の色は何で決まるのでしょうか?

そもそも赤い光を当てたら赤い発するみたいな都合よく制御できれば嬉しいですが実はそんなことはありません。

実際には、蛍光鉱物が受け取った光エネルギーの一部は熱などにより失われます。そして受け取ったエネルギーよりも小さなエネルギー蛍光として放出するんです。

例えば、太陽光を浴びた場合、私たちの目に見える可視光には虹色の成分の赤から紫の光が含まれていますね。ただ、ここで大事になってくるの人間の目には見えない紫外線なんです。

というのも、エネルギーの大きさという観点で考えると、赤い光は低エネルギーで紫になるにつれて高エネルギーになっていきます。そして紫よりも波長の短い紫外線は私たちには見えませんがより高いエネルギーを持っているんです。

つまり、太陽光の場合は紫外線が当たっていると考えればいいでしょう。目に見える可視光領域は紫外線よりもエネルギーが低いため、どの色が蛍光として放出されても不思議ではありません。

一方で、蛍光色は鉱物によっても変わります。ここで重要になってくるのはバンド構造です。バンド構造に関してはこちらの記事を参考にしてもらえればと思いますが、要は鉱物を構成する成分の種類だったり、その原子の配置である結晶構造により変わります。

また微量な不純物によってもバンド構造は変化します。成分元素(不純物)や結晶構造によって蛍光の色や強さ、持続時間なども変わるんですね。

具体的な話になるととても難しい話になってしまいますが、ざっくりとはこんな感じです。

最後に

蛍光鉱物なんて今の時代じゃ役には立たないだろうと思われるでしょう。たしかに実用性としてはなくなり、単純に面白い鉱物としてのマニア向けの石として売られています。

一方で、今回紹介したような蛍光鉱物の減少を理解する中で築き上げられた科学は、現代でもとても重宝されています。

その一つが結晶の欠陥を解析するためのフォトルミネッセンスという手法です。ということで、来週はこのフォトルミネッセンスについて簡単に紹介したいと思います。

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