ウイルスは整列する:ウイルスの結晶成長
こんなご時世でウイルスというと悪い印象しか持たないと思います
そんなウイルスも水や金属と同じように結晶化します。
結晶というと固いイメージがあるかもしれませんが、世の中には柔らかい結晶も存在するんですね。
今回は、そんなウイルスの結晶化について紹介したいと思います。
そもそもウイルスとは
私はウイルス学の専門でないので、あまりテキトーなことは書けないのですが、遺伝子を持ったタンパク質の塊のようなものです。
遺伝子を持っていると聞くと生き物?って思ってしまいますが、今のところは生物と無生物の間、どちらかというと物質に近いと考えられています。
wikipedia(bacteropharge)より引用
こいつが生き物じゃないなら何なんだ?ロボットか?と思ってしまうような造形ですね
重要なことは、同じ種類のウイルスであればは全部同じ形をしています。(例外はあるかもしれませんが、結晶学的にはほぼ同じ形といっていいでしょう)
今回はそんなウイルスも結晶になるよというお話を紹介したいと思います。
ウイルスの結晶
ウイルスはきちんと制御してやれば規則正しく並びます。つまり結晶化します。
wikipedia(タバコモザイクウイルス)より引用
というか、ウイルスが結晶化したことで、実はウイルスは物質に近いのではないかと考えられるようになったともいわれています。
どういうことかというと、例えばブロックを規則正しく並べようとするとブロックのサイズや形が同じでないと規則正しくは並びません
そのため個体差のある細胞を並べようとするときれいには並びません。
一方、ウイルスは全部同じ形なので規則正しく整列します。
ということで、個体差のない物質のようなものととらえた方が良さそうです。
上で画像を引用したタバコモザイクウイルスの結晶というものがあります。これは見ての通り、長細い形をしたウイルスなんですが、これが結晶になって構造がわかるようになったところから上記の議論が始まったともいわれています。
wikipedia(タバコモザイクウイルス)より引用
ウイルスを並べて何が楽しいの?
多くはウイルスの構造を調べるために、結晶化します。
以前、原子を”見る”ためにはX線を使えばいいという話を紹介しましたが、X線で”見る”ためには結晶化しなければいけません。
現在は電子顕微鏡技術も発達しましたが、今でもX線を使った構造解析は普通に使われています。
簡単に言うと、
ウイルスを結晶にする(並べる)
→X線で”見る”(回折)
→形がわかる
→薬を作るヒントになる
という流れになります。
ウイルスの特効薬を作ろうと思うとより詳細なウイルスの形を知る必要があります。
より詳細にウイルスの形を知るためには、くっきりはっきり見える顕微鏡を使えばいいですよね。とはいえ、顕微鏡にも限界があるので、X線は重宝されます。
X線で”見る”ときは、きれいな結晶を作る必要があります。きれいな結晶を作るとX線を用いてくっきりはっきり形がわかるようになります。
こういうわけで、実はウイルスの結晶化は私たちの生活に直接的に関係するとっても重要な研究なんですね。
最後に
今回は、ウイルスが規則正しく並び結晶化するという話を紹介しました。
基本的には薬がつくりたい!という目的があって、そうするとウイルスをより詳細に調べる必要があり、結晶化が必要ということですね
しかし、あまりものづくり感がないですよね。
最近ではウイルスを用いたものづくりや、ウイルス自体を材料として使おうという試みがされています。
ということで、来週はウイルスを用いたものづくりについて紹介したいと思います。
画像引用元
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