薬の効き目も結晶が大事?薬のための結晶づくり
病気になったりケガをしたり、はたまた眠れなかったりしたとき、私たちは薬の助けを借りて解決します。
そんな私たちが生きるうえで必要不可欠な薬も結晶でできており、良い薬づくりには良い結晶が欠かせません。
今回は切っても切れないほど密接にかかわる薬と結晶の関係性について紹介したいと思います。
薬も結晶でできている
薬の一部は結晶性のものがあるという表現が正しいかと思いますが、錠剤や粉末状の固体の薬の多くは結晶できています。
https://www.bunseki.ac.jp/teacher_blog/2018/07/post-4611.htmlより引用
こちらアセチルサリチル酸(アスピリン)の結晶です。きれいですね~
そして結晶の性質が薬の効き目に影響を与えるため、薬の結晶の研究が今でも盛んにおこなわれています。
以前、チョコレートとマーガリンのおいしさは結晶構造で決まるという話を紹介しました。
実は薬の効き目も結晶構造が関係するんです!
ちょっと極端に言えば、チョコレートにまずい結晶とおいしい結晶があるように、同じ成分の薬でもよく効く薬と効かない薬があるといったイメージです。
ここでの薬の効き目というのは溶けやすさを表します。
良く溶ける薬は素早く効いてきますが、なかなか溶けない結晶は全然効き目が表れません。
医学や薬学の知識がないのでどっちがいいのかとは言えませんが、少なくともこの薬の溶けやすさが効き目に関係するのは確かです。
基本的に不安定な結晶の方が溶けやすいです。この不安定な結晶を準安定と呼びます。
じゃあ、すぐに効く溶けやすい薬が欲しければ、この不安定な結晶を作ればいいんだな!となるわけです。
しかし厄介なことに不安定な結晶は時間がたつと自然に安定な結晶に変わってしまいます。(準安定相→安定相への変化)
また固形(結晶)の薬は生ものではないので腐ったりはしません。
しかし、効き目が思っているのと違ってきます。用法用量を守ってといわれてる薬をを飲むうえでは大問題ですよね。だって中身が思ってるものと違うんですから
この問題が明らかになって回収された例などもあるようです。
まずくなってしまうぐらいならまだましですが、薬が効かないとなると大問題です。
薬を作る
それではどうやって薬の結晶を作ってるのでしょうか?
簡単には溶液中から結晶を析出させて作ります。これを晶析といいます。
Wikipediaで見てみてびっくり!晶析=crystallization(結晶化)なんですね。
晶析というのは日本語なんでしょうか?化学屋さんは結構よく使われてる気がするんですが、いわゆる結晶化のことなんですよね。
まあ細かい言葉の定義は置いておいて、この晶析というのは皆さん学校でやったことがあるはずです。
例えば、水に塩を投入していくと途中で溶けなくなるところがきますよね(飽和状態)
この塩の溶けやすさは温度に依存するので、温めると溶ける量が増えます。
これを冷やすと再び塩が出てきます(これが晶析です)
つまり温めたお湯の中に化学物質を投入して混ぜて反応させて、冷やしてやると薬の結晶が析出します。
こうやって書くととても簡単に思えますが、実際は困難がたくさんあります。
例えば、普通に晶析させると最も安定な結晶が出てきます。しかし飲むと溶けやすい薬を作るにはギリギリ保存できるけどちょっと不安定な結晶の方が良かったりします。
研究者たちは、こういう微妙な調整をクリアして私たちが使う薬を作ります。
当然、副作用がでないとか、体に安全だとかそういう薬理学的なところもクリアしないと製品にはなりません。
さらにコストを下げるために、作るときは工業的に作られています。
以前、とある企業の工場を見学したことがありますが、まるで化学工場のようなところで薬を作っていました。人が入れそうな巨大な釜みたいなところに原料を混ぜてドロドロしたものを作って、そのドロドロを乾燥させて、固体の薬を作っています。
https://www.lightchemical.co.jp/equipment/reaction.htmlより引用
イメージこんな感じ!
これは一般的な化学会社と近いのではないでしょうか。あまり詳しく知らないですが聞いた話では近いものを感じます。
化学工学的な知識を使って、効率よく品質の良い結晶を作っているのでしょう。
最後に
私たちが普段使っている薬も研究者たちの努力の結晶だと思うと、ありがたい気持ちになりますね。
次週、薬と結晶の第2弾をお送りします。
ぜひ見てくださいね!それでは
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