私にしか歌えない歌を。
心におじさんを飼っているので辛口のお酒しか飲まない。
なのに、肌寒くなってくる今くらいから冬にかけては梅酒が恋しくなる。
ゼリーを作ろうと温めた梅酒がほわんと香る。
甘い香りは琥珀に閉じ込められた虫みたいに私を動けなくする。
全然タイプじゃないのになんであいつが気になるの!?と悩み悶えるマンガの主人公の気持ちがよく分かる。
やはり引力には逆らえない。いいものはどうしたっていいのだ。
昨日You Tubeで観たキョンキョンの「木枯らしに抱かれて」を思い出す。アイドル時代じゃなく割と最近ver。
絶対こっちの方がいいと思えるほど、歳を重ねたからこその漂う雰囲気や纏う空気、見た目は相変わらずかわいいのに少し低い声、照れ隠しみたいな真面目な顔。もう全部よかった。
彼女にしか歌えない、彼女の歌。
私にしか歌えない歌はあるだろうか。
琥珀色の液体にぽつりと浮かんだ梅の実に自分を重ね、「おいしいゼリーができますように」と祈りながら冷蔵庫の扉を閉めた。
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