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2023年11月の記事一覧

豊かさの代償

豊かさの代償

大塚ひかりさんはかつて源氏物語の現代訳をされたらしい。
この本、嫉妬と階級の「源氏物語」は源氏物語の理解を求めることからはじまった歴史研究を踏まえての集大成だと思う。源氏物語は豊かさと権力を求めた人たちがどう変化していくかを描いた物語だと思う。

大塚さんが書いている通り、源氏は、義理の母と密通することにより、息子を天皇にまでした皇子、光源氏が妻に密通される若菜の巻まではさほど面白くない。たぶん、

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駅前のベンチ

駅前のベンチ

私の町の駅前の商店街にはベンチがたくさんある。
コロナのとき、コンビニの前のベンチが撤去されて寂しかった。
でも、今では復活し、それどころか増えたと思う。

元々寂れた商店街に来る人は老人が多かった。
駅前のお掃除しているお年寄りたちが配慮したのだと思う。

しかしながら、今は車を持たない若い人も多い。
そうなのだ。田舎は仕事が少なく、支え仕事をしている人は収入が低い。
よその町に行ってしまう人が

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好きな小説5

好きな小説5

柴原友香の「その街の今は」は大阪での青春を描いた小説だ。
私はこの一作しか読んでない。たぶん、彼女のファンはもっとこれがいいというのがあると思う。
だから、語るにはちょっとおこがましい感じがするのだ。

しかし、寂れきった上町台地を歩いていると、この小説になかにある写真の失われた家族の写真が蘇るのだ。

私は若い頃、本町界隈でバイトしたことがあるので、ヒロインが働くあたりに既視感がある。彼女の働き

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心に残る映画と名作は違っていたりする

心に残る映画と名作は違っていたりする

ちょっと、休憩。
川上未映子の小説を読んでいて思い出したのは、脚本家の山田太一の最終作の小説である「空也上人がいた」である。同じく性的な経験が乏しい中年女性の話だった。テレビドラマでできない話。たぶん、恋愛とは性的なあこがれをふくむから描けない世界なのだ。彼はそういった人も描きたかったんだなあと思った。

彼の小説はドラマではできないものに挑戦したものが多い。
その中で一番知られているのはオカルト

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好きな小説4

好きな小説4

一応、ベストテンということなので、続けます。
川上未映子は評判が良かったので、まず、読んでみようと読んだのが、彼女の「すべての真夜中の恋人たち」でした。ほーっと思って大好きになった。

かの小説は性的な接触が苦手な女性の恋愛の話だ。性的接触が、一生なかったり、遠のいている人は私の観察では結構多いと思う。
昔、小学生のころ公園で性器を見せつけられて、性が怖くなった女性の話を読んだ。
その程度のことっ

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