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ベイクルーズが追求する、コロナ禍に溢れる「触れない」の中でお客様の心に「触れる」大切さ

この文章は、CXやNPSについて初心者でもわかりやすいように、同じくCXやNPSに関して初心者であるライターに、エンゲージが依頼したレポートエッセイです。

「握手をしない」
「大勢での飲み会をしない」
「むやみやたらに素手で触らない」

2019年末から始まり、今もまだ猛威を振るう新型コロナウイルス感染症(COVID-19)――そんなコロナ禍で、こういった「触れ合わ”ない”」が当たり前になりつつある昨今、「触れる」ことの重要性を改めて感じた話をしようと思う。

2022年4月14日に行われた、弊社の株式会社エンゲージのオンラインセミナー『DX時代の店頭のあり方とは?』に参加した時のことだ。



オンラインセミナーに参加するのは初めてのことで、どういう感じなのか、ちゃんと理解できるか、少しドキドキしながら申込をしたのを覚えている。

いざ始まってみると、頭にすっと入ってくる聞き取りやすい声が耳に入り、ビジネス用語等に疎い私にも分かりやすい内容で、思わずパソコンの前でうんうん、なるほど!と大きく頷いてしまうほど聞き入ってしまったのだった。


こういった質の高いセミナーに、家の中で参加できる便利さに感謝しつつ。
この記事では、セミナーの内容を、「触れる」大切さを改めて感じた心境と共にレポートしていこうと思う。


株式会社エンゲージってどんな会社?

「 “エンゲージ” は、より良い関係性という意味を込めています」
セミナーに登壇した株式会社エンゲージの代表 藤谷拓氏はまず、株式会社エンゲージがどういう会社なのかを語った。

株式会社エンゲージ
代表取締役 藤谷拓
2019年2月1日設立
事業内容:CX(顧客体験)/EX(従業員体験)の向上、それらに関わる取り組みの定着支援を目的としたコンサルティング業務
https://en-gauge.jp/


企業(ブランド)が、たくさんの顧客と従業員から愛される橋渡しをすることをmissionとしている会社で、クライアントは主にファッション業界。なんと150ブランド・6500店舗をサポートした実績を持つという。


具体的にどういうことをするのかというと、NPS(お客様から企業・サービスへの愛着度を示す顧客ロイヤリティを計る指標)を集計する独自のソフトウェアを開発し、結果ではなくリアルタイムでお客様の声・従業員の声を可視化し、問題点を見つけ、改善方法をタイムリーに思案できるシステムを提供しているそうだ。

「私達をハブに、ファッション業界のCXを向上し、お客様から愛されるブランドをみんなで創り上げたい」

悩みや上手くいったことを共有するクライアント限定の交流会や勉強会を開いたり、新機能の紹介や海外事例を発表するNPS推進担当の交流会も定期的に開催しているという。


クライアントが情報を交換する場を設けることで、企業単体だけではなく、ファッション業界全体を盛り上げていこう、サポートしようという熱い想いを感じた。今は世情上控えているが、コロナが落ち着いたらまた開催する予定だそう。

店舗内で、企業内で、お客様の声を拾い運営に活かすことはどこでもやっていることだし重要なことだと思う。

ただ、社内でそれを行っていると段々マンネリになったり、限定的になったり、面倒くさいからと声が上に届かなかったりということが多々ある。実際私がいた会社でも、お客様の声を聞き改善提案を上げても、「そちらで上手くやっておいて」で終わってしまうことが何度かあった。

だがこうして、外部の会社がCX向上サポートとして入ってくれることで、マンネリや惰性を防ぎ、現場にとっても、企業にとっても、そしてお客様にとってもプラスになる改革を妥協せずスピーディに行っていけるんだな、と感心した。


しかも、一般的な企業アドバイスではなく、その店舗ごと、企業ごとのお客様の声を可視化することで、理にかなった改善が可能な点がとても良い。同じブランドでも、店舗によって毛色が違ったり、顧客層が違ったりするので、そういったことに対応しているのが株式会社エンゲージの強みなのだなと感じる。


ファッション業界だけでなく、色んな業界にもこういうサポートが広がれば社会全体がよりよくなるだろうと感じた。


小売業界の現状

聞いていて確かに、と思ったことが今の小売業界の現状だ。冒頭で記載した『コロナ禍』だけが問題ではないという。

まず、人口が減少しているという点。人口が減少しているということは、顧客の母数が減ってしまうということ。

そしてさらに大きな問題が、所謂「Amazon effect」。butterfly effectをもじったこの言葉は、多くのサービスを提供し急成長を遂げたAmazonにより、社会的混乱が起きる…簡単に言うと、「あれが欲しいな…あれも欲しいな…あ、全部まとめてAmazonで買おう!」と顧客がAmazonに集中してしまうこと。Amazon effectという言葉は恥ずかしながら初めて聞いたのだが、なるほど確かにと思ってしまった。翌日に届き、色んなものがまとめて購入できるという点はものすごい強みである。コロナ禍が過ぎ去っても、この問題点は解決しなければならないとのこと。

加えて、SDGsやESG投資等が浸透し始め、環境や社会をより強く意識することが必要になってきた。安く大量生産し、余分な在庫を抱え、売れなければ破棄するということに厳しい目が向けられる時代なのだ。
コロナ禍で、多くの企業・店舗が閉鎖に追い込まれたが、こうやって現状を改めて聞くと、ただコロナ禍だからという危機感だけではなく、様々な事柄と戦っていかなければならない業界なのだと痛感した。

ブランド力を育てるために必要なこと

「感動させなければ、何もなかったことと同じ」

藤谷氏は、業界としてこれからやっていかなければならないことを提唱した。

今までは、物を提供するということだけで顧客は満足していた。しかし、それだけでは通用しない時代がもうやってきている。ブランドの良好な体験を、いかに脳に記憶させられるか。そういう戦いを、既にトップブランドは行っているという。

アメリカでは、感情や情緒面で強くポジティブな印象を残すブランドしか生き残れない、とまで言われているらしい。

確かに、ただコーヒーを飲むという満足度だけではなく、スターバックスは「 ”スタバで” 飲んだ!」という強烈なブランド印象を与えることに成功している。私もスタバでフラペチーノを飲んだ際は、写真を撮ってSNSにあげたくなるものだ。

そういうブランド力を育てていく、発案するために、お客様の声、そして従業員の声はかなり重要になってくる。
マーケティングの父と言われるフィリップ・コトラー教授はこんな言葉を残している。

「とにかく今、目の前にいるお客様の声を聞くことだ」
フィードバックをたくさん得て、改善を実行することは何よりも大事なこと。それがゆくゆく、ファッション業界の”スタバ”であったり、”Apple”を生み出すことになるのかもしれない。

株式会社エンゲージのシステムを1カ月トライヤルしたFMD2名のインタビュー動画

※FMD(フィールドマーチャンダイザー):アパレル業界の商品開発から販売予測まで一貫して担当する役職名

セミナー中盤では、株式会社エンゲージのNPSをトライヤルとして1カ月間導入した2ブランド「IENA(イエナ)」「ドゥーズィエムクラス(Deuxieme Classe)」の2名に、活用方法や感じたことを生で聞いたインタビュー動画を拝見した。内容を簡単に紹介する。

―ドゥーズィエムクラス FMD 福原さん
―イエナ 横浜店 FMD伊藤さん

『VOC活用の前後の比較を教えてください』

―イエナ伊藤さん
お客様のマインド予測は戦略として元々やっていて、商品軸からの予測もしていた。けれど様々な変化(買い物に行かなくなった・旅行に行かなくなった等)に伴い、予測をしても一日ごとに状況が変わってハズれてしまったり、お客様数も少なく拾いにくかった。
VOC活用をした期間と後は、お客様の声をリアルにクイックに拾うことが出来たので、現場のモチベーションも上がり店頭に活気が出た。お客様の声を聞くことにより、見られているという少し緊張感のある接客をし、前向きな姿勢で取り組めるようになった。

―ドゥーズィエムクラス福原さん
目標について、予測を立てるための資料が結果の数値であったり、現場の体感を参考にして設定していた。それは今も継続してやっているし大事なことだけど、VOC活用をすることで今までになかった最前のお客様の声を拾うということができた。行っていることがお客様にどうつながっているか、お客様がどう感じているかをタイムリーに知ることができる。それによってどこに修正を加えればいいのか、分かりやすく修正行動をとりやすくなった。

『VOC活用で明確になったことは?』

―ドゥーズィエムクラス福原さん
アプローチの仕方が明確になった。「ECサイト等のネットを下見してから来店した」というお客様の声が多いことに気づいた。それにより、「何かでご覧いただいて来られました?」というきっかけのアプローチを増やすことができ、見てきた方にはその商品をすぐに用意する、何も見てきていない方にはゆっくり店内を見てもらうよう案内する等の対応が取れるようになった。すると一人当たりのヒット率を上げることができ、日々の接客に活かすことができるようになった。


―イエナ伊藤さん
力を入れる場所を明確にすることができた。今まではコロナ禍で入りやすい環境をと「出迎え・挨拶」を強化ポイントにしていたが、VOCでは既にその項目は満足度が高いことに気づいた。それよりも、店舗ごとの世界観であったり、その世界観を現場が考えることの大切さが課題であり、そういった中で唯一の一枚につなげる提案力、ヒアリング力をあげていかなければいかないと気づくことができた。

二人とも、お客様からの称賛の声や「ありがとう」の言葉で、現場のモチベーションがアップしたことも口をそろえて言った。
それと同時に、現場に落とし込みして取り組みに対する共感・納得を得ることの重要性であったり、店舗レベルではなく本社・会社全体で改善するべきテーマへのアプローチの必然性も今後の課題として気づくことができたという。

デジタルに力を借りて

藤谷氏は、インタビューを7つの重要なポイントにまとめて改めて紹介した。

①お客様マインドの予測
季節やイベント等過去の実績で予測を立てていくことが難しくなった。
コロナによる消費行動の変化や、ウクライナ含む世界情勢、加えて緊急事態宣言や館の休業等物理的変化。そうすると、予測ではなく直接お客様の声を聞くことが大事になってくる。

②数値目標と現実の違い
予測などをたてる上で使用する資料が、全て過去の数値に基づいている。すると①でも挙げた変化に適応できず、目標との差が生まれてしまう。
結果を見てからではもう遅いということを、お客様の声をリアルタイムで集めることによって防ぐことが出来る。

③スタッフモチベーション
小売業界は元々、モチベーションが低いと言われている。そんな中コロナの影響で客足が遠のき、店頭が暇になるという事態に。その上、それを鑑みた会社が「店頭で売れなければオンラインに力を入れよう」という選択肢を取ってしまうと、店頭スタッフは自身の存在意義などに不安を感じ、数字を追うというモチベーションも無くしてしまう。
お客様の声を聞くことによって、直接スタッフに感謝や労いの言葉が届き、さらにそれを確認した会社からも褒められるという認知称賛が、スタッフのモチベーションをアップさせる。

④顧客を理解することで変化するアクション
店頭において、お客様へのアプローチの仕方はとても重要である。お客様への理解を深めることで、居心地が良くなりヒット率アップにつながる。
上記でも記載した通り、ECサイトを見てきたというお客様が多いことに気づくとその後の初手アプローチを工夫するなどの行動が即座に実践できる。

⑤自己肯定感、自己効力感
ヒアリングと提案を行うことで、店頭、スタッフの価値を改めて実感することができる。実際スタッフとの会話や、着こなしの提案を楽しみに来店するお客様が多い。それを数値として確認できることにより、スタッフの価値をスタッフ自身も、会社としても理解できる。

⑥納得共感を得る重要さ
初期段階に陥りやすいことだが、まずお客様の声を聞くとなるとクレームなどのネガティブなイメージを持つスタッフもいる。加えてお客様に時間をとらせてしまうという申し訳なさや怖さを感じ、意志の統一ができないまま取り組んでしまう恐れも。
スタッフ全員の志を統一することは難しいが、理解をしてもらい「納得、共感」を得ることが結果を大いに変えることにつながる。

⑦ブランド全体の戦略レベルの改善
店頭だけでは改善できない、本社を巻き込んだテーマへのアプローチも重要。ECや店舗の在庫、商品のデザイン、オムニ含めた本社組織との連動、そして店舗の価値を創造すること。こういった一店舗では改善できないレベルの内容を、戦略レベルでおこなっていくことは、初期投資や時間はかかってもあとあと大きな成果となって返ってくるために必要なこと。

お客様の声を聞くということ

総じてこのセミナー内でよく聞いた言葉が、お客様の声を聞くということだ。

当たり前のようで、実際なかなかできないこと。

もっとこうしてほしいな、こんなものがあればいいな。私達はお店にいってそう思っても、わざわざスタッフを捕まえて意見を言うことなんてほぼないだろう。

そんな心の中に埋もれてしまっている声に、VOC活動NPSを通して「触れる」。それがいかに重要なことか。店と顧客、そしてスタッフ自身も良い方向へ向かっていける「触れ合い」となる。

「触れない」ことが当たり前になってしまった今、お客様の心に、スタッフの心に、そしてブランドの神髄に「触れる」大切さ。
それを改めて感じることが出来たセミナーであった。